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読書ノート

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読んでいる本、読んだ本、読みたい本についてつれづれ書いている日記のようなもの
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#読書日記

出会った本は逃がさないほうがよい

仕事の合間に駅構内に設置されている本屋さんに立ち寄った。いくつか気になる本があったけれど、急に予定時間が気になってしまって、買わずに出た。

だけれど、帰宅してから「気になる本」が気になりだす。前にも似たようなことがあって、結局買わずにいたら「気になる本」が何だったのか、忘れてしまったのです。今回もまた忘れてしまうのでは。そして、二度と出会うことがないのでは。

そう思って後日、同じ本屋にわざわざ

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積読は未来への置き手紙

宇多田ヒカルさんの『Letters』という曲に「言葉交わすのが苦手な君は いつも置き手紙」という歌詞がある。置き手紙。積読をしていると、これは置き手紙だと思うことがしばしばあります。正確には「あの頃の自分が残した置き手紙だ」と、しばらく経ってから思うことがある。

2024年1月、逢坂冬馬さん『歌われなかった海賊へ』と、小川哲さん『君が手にするはずだった黄金について』の2作を読み終えました。hon

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平積みじゃない本を買う

本屋さんでは、つい平積みの本に手が伸びてしまう。「今はこれが話題なのか」と。「面陳(面陳列)」とも呼ばれる並べ方。表紙や帯の惹句も目に入って、魅力がはっきり伝わってきます。

でも、当然ながら、本屋さんの本の大半は棚に挿してある「棚挿し」の本。新刊の波に押されて、平積みの本もすぐに棚に眠っていく。これまた当然ながら、魅力的な多くの本が棚の中に眠っているわけです。そこから一冊を引っ張り出すのも、これ

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記録できる言葉の総量

子どもの療育の記録を紙のノートに執っている。週平日の何日か、寝る前の日課としている。療育に付き添ってくれている妻から聞いたその日の様子をまとめ、夏休みのように自分自身で同行できる時は、自分が感じたことを書き留める。

記録を終えると、自分の中の言葉の蓄えが減るような感覚になる。以前は、夜に読書の記録をこのnoteに書いていた。でも、療育の記録をした後は、書くよりも、小説などを「読みたい」と思う気持

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「絶対に面白い」と安心できる作家

アンソニー・ホロヴィッツさんの『ヨルガオ殺人事件』上巻(山田蘭さん訳、創元推理文庫、2021年9月10日初版)を読んでいます。面白い。相変わらず、かつ圧倒的に面白い。前作の『カササギ殺人事件』も面白かったし、別シリーズである「ホーソーンシリーズ」の『メインテーマは殺人』『その裁きは死』『殺しへのライン』全てが面白かった。だから今回も面白いと確信していました。

こういう、「この人の作品は絶対に面白

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開かれた本屋

仕事の合間に、改装後の紀伊国屋書店新宿店に初めて立ち寄りました。率直に感動しました。

改装後の店舗は、1、2階が通路に対してシームレスになっていて、文字通り「開かれた」お店になっていた。ドアをくぐることなく、戸を押すことなく、ふらりと立ち寄った先に、たくさんの本が広がる。

もとより書店は、ひとびとに対して開かれた場所であると思います。食品店や映画館とは異なり、無目的に立ち寄る人に寛容である。「

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メタ小説が面白い

今読んでいる『HHhH』(ローラン・ビネさん著、創元文芸文庫)が面白いです。まだ読み終えていない本が「面白い」というのは早計かもしれないけれど、面白い。なぜかというと本書が「ある人物について小説を書いている作家の小説」という「メタ小説」だからかと思う。

物語はある種の洗脳であり、押し付けであると思います。「作家である私の語り」に、読者が翻弄されることで成立される。ある種のルール付けされたゲームで

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人口の1%のための本

人口の1%程度に当事者が限られる事象に関する本に関心を持っています。

愛用している読書記録SNSでは、その本の人気が感想などの登録数で可視化されている。村上春樹さんの作品などはどれも5000〜数万レベルの投稿がある。それほど有名ではないノンフィクションなどの場合は数十件。

これが、人口1%に関する話題の書籍では1〜10件になる。差があって当然とは思いつつも、慄然とする気持ちもある。

反面、出

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本当に苦しい時に本は読めない

本当に苦しい時、本は読めない。悩み、困難、逆境、それらに押しつぶされそうな時、いつもは好きなはずの、気晴らしになるはずの本の文字列が全く目に入らない時があります。ページを開くのさえ億劫になることさえある。

でも、その困難が何らかの形で少しほぐれると、再び本を読めるようになる。「ここに書いてあることはヒントになりそうだ」とか、「ああ、この登場人物の言っていることは今の自分に分かるな」と納得できる。

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本の背表紙問題

「セックスロボットと人工肉」(ジェニー・クリーマンさん著、双葉社)という本が気になっているのですが、まだ買えずにいます。理由は単純で、どストレートに性的なワードを含むタイトル。家の本棚に陳列した時に、家族がどう見るかが気になる。

中身は、テクノロジーで人間の欲求を解決していくことの最前線を取材したもののようで、かなり気になる。面白いのは確実そうです。

とはいえ、背表紙問題は重たいとも考えていて

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読書ノート2022/05/05

加藤典洋さん「村上春樹の世界」(講談社文芸文庫)が面白かった。感想エントリーを書きたいのだけれど「自分は加藤さんの村上春樹論が好きだ」以上のことが書けそうにない。大切な一冊だけれど、なかなか誰にでも分かるようなおすすめの仕方が分からない。そういうことがあってもいいよな、とは思う。

加藤さんは、作品が読者に与えるものと、作家が作品を通じて直面している問題は何か?ということと、両方を考えることを批評

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読書ノート2022/02/12

原田ひ香さん「三千円の使いかた」(中公文庫)は良かった。しみじみとラストを噛み締める。「三人屋」で人生の悲哀をうまく描く作家さんだなと感じていたけれど、今回も実に滋味深い。良かった。

お次はホリー・ジャクソンさん「自由研究には向かない殺人」(創元推理文庫)を読んでいて、これまた面白い。少女が自分の街で起きた女子生徒失踪事件の真相を知るため、関係者に「自由研究」のていでインタビューしていく。ミステ

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