メタ小説が面白い

今読んでいる『HHhH』(ローラン・ビネさん著、創元文芸文庫)が面白いです。まだ読み終えていない本が「面白い」というのは早計かもしれないけれど、面白い。なぜかというと本書が「ある人物について小説を書いている作家の小説」という「メタ小説」だからかと思う。

物語はある種の洗脳であり、押し付けであると思います。「作家である私の語り」に、読者が翻弄されることで成立される。ある種のルール付けされたゲームであるわけです。

しかし本書は、ナチスドイツでユダヤ人迫害を首謀したハイドリヒという男について書く作家自身が、1人の主人公になっている。本来読者を巻き込み、のめり込ませるはずの作家が、語り手として現れる。急に物語が覚める。それが新鮮であるのです。

私は、ナチスドイツについて語り得るのか?小説を書く作家の、本来知るべきもない思いが言語化されるのは面白い。それは、読者に対して「あなたは何を語り得るのか」を問いかけるから。メタは混乱と混沌と、発見を生む手法だと実感します。

読み終えた時の感想はまた、違うのかもしれない。

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