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よき師よき友の夏

ゴールド金賞。

わああっと
歓喜の声が響く。



この季節がやってきた。
吹奏楽の夏だ。



中学の3年間
私は吹奏楽一筋だった。

悔しいことも
悲しいこともあったけど
私が学校に行く理由は
部活だけ。

音楽の世界と
仲間がいる音楽室は
私の大切な居場所だった。



そんな思い出の中心にいた
顧問の先生から先日連絡が来た。

今年のコンクールが
最後の指揮です。
よかったら観に来てください。
最後の自由曲は
あなたたちとの思い出の曲。
メリーウィドウです。



喜歌劇「メリーウィドウ」セレクションは
私たちが中学3年生のとき
最後のコンクールで選んだ自由曲だ。

明るく弾むようなオープニング。
滑らかに歌うような中盤のメロディー。
踊るような華やかなエンディング。

私はこの曲を推したのは
パーカッションのアンサンブルを
存分に生かしたかったからだ。

そして
この曲で私たちの代は
歴代最高の成績を収めたのだった。



先生の指揮とメリーウィドウ。
絶対に観に行こう。

というわけで昨日
仲間と一緒にコンクールへ
行ってきた。



懐かしい先生の指揮。
想いと愛に溢れたお姿は
中学の頃と変わらない。



メリーウィドウ。
緊張感に包まれながら
演奏する中学生たち。

この舞台に立つまでに
いろんなことを乗り越えてきたよね。

先生に厳しく指導されることも
仲間同士でぶつかることも。

こだわってこだわって
何度も何度も練習して。

みんなで金賞取りたい。
みんなで次の大会に行きたい。

ただそれだけを純粋に
目指していたよね。



メリーウィドウの音色とともに
私も仲間も
吹奏楽の青春に浸っていた。



コンクールの結果発表は
歓喜と悲しみが入り乱れる。



先生たちの願いは
叶わなかった。



厳しかったな…
先生がポツリと言う。

中学生たちは
泣いて泣いて真っ赤な顔。



それだけ
一生懸命だったということ。
それだけ
本気だったということ。



私や仲間にとっては
幸せなメリーウィドウだった。



順位よりも結果よりも
ずっとずっと大切で価値があるものを
私たちの心に届けてくれた。

メリーウィドウを選んでくれて
メリーウィドウを愛してくれて
本当にありがとう。



最高の演奏だったよ。