橋元デジタル

現代川柳で遊んでいます。喫茶店に通い、書店と映画館を渡り歩く生活を楽しんでいます。好き…

橋元デジタル

現代川柳で遊んでいます。喫茶店に通い、書店と映画館を渡り歩く生活を楽しんでいます。好きなものは立体造形物と動物。ちまちま書いていく予定です。

最近の記事

8月の生存報告

「2024年ももう半分以上終わってしまった」という実感を少しも得られないまま、迷える三十路女の生活も8月に突入した。SNSから離れたことで幾分心の余裕を取り戻した私は、余暇という余暇を読書と外出と音楽鑑賞、そして創作に思う存分注ぎ込むのだった。 現在進行中の同人誌は編集フェーズに入ったので10月に控える造形イベントの準備にも着手し始めた。久しぶりにニューファンドを触っていると時間を忘れて作業にのめり込んでしまう。 造形を始めて学んだのは、事を完遂させるにおいて、毎日少しず

    • スピードスターブックフェスに行ってきたよ

      去る8月4日。私は東池袋に向かっていた。池袋には昔も今も足繫く通っているというのに、東池袋に足を運ぶのはこれが初めてだった。 この日、私は1日限りのフェスに参加しようとしていた。フェスはフェスでも音楽フェスではない。本を、本屋を、そして文学を愛する人すべてに向けられた『スピードスターブックフェス』だ。 イベントの主催者は機械書房店主の岸波龍さん。機械書房には職場から徒歩圏内だというのに近頃はさほど伺えていないのもあって、このフェスには絶対に行くと開催決定告知を拝見した時か

      • 生存報告と2024年後半に関する告知

        お久しぶりです。橋元です。 このところどうにも体調がすぐれず、仕事を休んでしまったり、寝込んだまま週末を終えてしまったりと、どうにもパッとしない日々を過ごしていました。 私の場合、体が思うように動かないことで気持ちも落ち込むことが多いので、外界から余計な刺激を受けないよう、しばらくの間インターネットから離れて生活していた次第です。 体調不良の原因ははっきりしませんが、今年6月から体調管理のために低用量ピルの服用を再開した影響で、ホルモンバランスが多少変化したせいなのかも

        • 行き詰まった私と、ナリユキと。

          【長い長い前置き】 いよいよ梅雨を迎え、にわかに空が重たくなってきた六月尽。私は休日だというのに珍しく身なりを整えて電車に乗った。向かった先は早稲田駅。これまでの、そしておそらくはこの先の人生においても、まったく縁のない場所だ。 日頃から特別親しくしているような人もいないため、休日はもっぱら家事か一人遊びに費やす私が、珍しく顔に大袈裟な化粧を施した上で土地勘のない場所へと繰り出したのには理由があった。 このところ、私はインスピレーションの弱まりを感じていた。たといアマチュ

        8月の生存報告

          現代川柳句集『プニヨンマ』 感想

          あなたは『プニヨンマ』をご存じだろうか。 この可愛らしい音の連なりは確かにこの世に存在するが、明確な定義はないに等しい。 私はかつて、この語を考案した張本人である森砂季氏へ、直接『プニヨンマ』なるものの意味を尋ねたことがある。 すると森氏はあっけらかんと「検索をかけても何もヒットしない言葉なんですよ」と答えるのみであった。 『プニヨンマ』とは音のみで構成された、一方ではっきりとした意味を持たないものである。ならば架空の造語と片付けてしまうべきなのか。いやいや、そうでは

          現代川柳句集『プニヨンマ』 感想

          『Stray Dogs』について

          先日noteに投稿いたしました同人誌立ち上げに関する募集記事について、多くの方にご覧いただけましたことをありがたく感じております。 拡散にご協力くださった皆様、励ましのお言葉をかけてくださった皆様、本当にありがとうございます。 そして何より参加を表明してくださった方々、本当にありがとうございます。とても嬉しいです。私にとって初めての試みではありますが、素晴らしいものにしていきましょう。 さて、先日私が投稿した募集内容について、文章が些か「尖って」いたこともあり、誤解を招

          『Stray Dogs』について

          来たれ、はみ出しもの

          突然の思いつきにより同人誌をつくることにしました。今年8月の発行を目指しています。 グループとしての名称は『短詩パーティー Stray Dogs』です。 私を含めた5〜10名程度のメンバーによる短詩型文学作品を掲載する「遊び場」または「実験場」としたいと思います。 発行の費用は私が全額出資する考えでいますが、その分メンバーには何かしらの協力を要請します。 募集する予定のものは下記の通りです。 (1)川柳・短歌・俳句の連作(自由テーマで20句・首構成) (2)川柳ノワ

          来たれ、はみ出しもの

          X(Twitter)現代川柳アンソロを読む④

          ベスト・オブ・水のトラブルマグネット まつりぺきん 自宅のポストに、時には職場のそれにも投函されている、例のペラペラのマグネット。チラシを留め置くことすら能わないほど磁力が心もとないため、適当に冷蔵庫に貼り付けてみて、それっきりのまことにつまらないものである。あの代物に「水のトラブルマグネット」と誰にでも伝わるキャッチーな名称を与えたことがまず斬新である。さらにそれに「ベスト・オブ」がつくとは。まるで役に立たないあのマグネットも、デザインや素材、キラキラしているか否かなどで

          X(Twitter)現代川柳アンソロを読む④

          X(Twitter)現代川柳アンソロを読む③

          花屋ごと棺桶とする火事かしら 太代祐一 掲載されている句の中でも一際不穏な句である。葬送には花が欠かせないが、故人を送り出すための花を手配する花屋までも巻き込む火事。それをさらりとした言葉で火葬に例えているところが本当に恐ろしい。死の象徴でもある「棺桶」におよそ罪のないであろう「花屋」を強引に内包しようという強引な筋書きを「花屋ごと棺桶とする」という表現しているところが巧みである。 豚バラの花が咲いたら帰りましょ 舘野まひろ 童歌のような響きの句であるが、これもまた何や

          X(Twitter)現代川柳アンソロを読む③

          X(Twitter)現代川柳アンソロを読む②

          いつまでもちくわ感覚では困る 栫伸太郎 「いつまでも学生気分じゃ困るよ」といったような大人の言い分をたまに聞く。年ばかり食ってしまった今、そういった愚痴をこぼす人々の気持ちがわからないでもない身になってしまったが、一方で「説教臭い大人にだけはなりたくないよなあ」と強く思う自分がいる。この句は典型的なお説教文脈を面白おかしく作り変えている。「ちくわ感覚」とはいったい何なのか。それの何が社会において困るというのか。さっぱりわからないが、わからないがゆえにお説教やお小言の主成分た

          X(Twitter)現代川柳アンソロを読む②

          X(Twitter)現代川柳アンソロを読む①

          このままずっと続くのかと思わされるほどしぶとかった暑さもとうとう退場し、気がつけば夜はぐっと冷えるようになった。ようやく実感のこもった秋の句を作ることが出来そうで嬉しく思う。 このところ日常生活を優先してしまい、川柳EXPOの感想文が滞ってしまっている。楽しみにしてくださっていた方がもしもいらしたら、心より謝罪する。いずれ再開するつもりではあるので何卒ご容赦願いたい。 さて、前置きが長たらしくなったが、今回は成瀬悠氏による現代川柳アンソロへの投句作品について感想文を書かせ

          X(Twitter)現代川柳アンソロを読む①

          今後の計画について

          「忙しい」という言葉が嫌いだ。他人に使われる分には特段怒りもしないが、自分から使うことには強い抵抗感がある。 生きているとどんどん欲が出てくる。他人はどうだか知らないが、少なくとも私はそうだ。食べたいもの、行きたいところ、会ってみたい人、そしてやりたいことが日ごとに増えてくる。 今年の夏、私は時間も金もとにかく創作活動に費やした。句会を含め、行きたいイベントには参加募集記事を読んだ次の瞬間には申込を完了させた。読みたいと思った本は迷う間も作らずに買った。スケジュールを詰め

          今後の計画について

          まいにち川柳EXPO(1) 徳道かづみ「あたし的進化論」

          例えるならばペーストだと思う。 響きはなめらかで、とげとげした攻撃性は含まれていない。温度はどちらかといえば冷たく、力強い生命感の歯応えも感じない。  しかし、ひとたび意識の口の中に運べば、組み合わされた言葉の持つ様々な要素が、均等に潰され、濾され、反発することなくひとつに混ざり合っていることを味わうことが出来る。漢字とひらがなの比率にもバランスのよさを感じる。 敵陣に攻めこむ時のビブラート この世には「いい声」というものがある。 何をもって「よい」とするかは人それ

          まいにち川柳EXPO(1) 徳道かづみ「あたし的進化論」

          まいにち川柳EXPO 〜全投稿作品の感想文書いてみる〜 序章

          『川柳EXPO』をご存じであろうか。 2023年、まつりぺきん氏により企画・発表された、現代川柳連作アンソロジー誌である。 Twitter(現・X)上での呼びかけにより集まった連作・群作は51作品にのぼった。投稿者は川柳人のみならず、俳人等他分野で活動する人々も含まれている。そのため経験も作風もバラバラ、実にバラエティに富んだ作品集となっている。 さらに『川柳スパイラル』発行人の小池正博氏による選評も掲載されている。これは投稿者からすれば光栄の一言に尽きるし、読者として

          まいにち川柳EXPO 〜全投稿作品の感想文書いてみる〜 序章