まいにち川柳EXPO 〜全投稿作品の感想文書いてみる〜 序章

『川柳EXPO』をご存じであろうか。

2023年、まつりぺきん氏により企画・発表された、現代川柳連作アンソロジー誌である。

Twitter(現・X)上での呼びかけにより集まった連作・群作は51作品にのぼった。投稿者は川柳人のみならず、俳人等他分野で活動する人々も含まれている。そのため経験も作風もバラバラ、実にバラエティに富んだ作品集となっている。

さらに『川柳スパイラル』発行人の小池正博氏による選評も掲載されている。これは投稿者からすれば光栄の一言に尽きるし、読者としても読みごたえが増す、素晴らしい要素であると感じた。

これほど豪華な企画でありながら、企画の発表および投稿作品募集の呼びかけから編集・発行までのスピードには非常に驚かされた。投稿者の一人として、一切の参加費も要求されなかったことを申し訳なく感じるほどである。

私が『川柳EXPO』という企画を知ったのは、作品の投稿締め切りまで残り1週間を切った、2023年6月下旬のことであった。

当時、私は現代川柳なるものをまるで知らなかった。「何もわからないのでは一句も作れまい。まずは現代川柳の作品を読んでみなければ」と思い、取り急ぎ『はじめまして現代川柳』を購入し、読み始めた。

現代川柳との出会い。それは私に凄まじい衝撃を与えた。

「掌の上に宇宙がある!」
一冊の本を手にしながら、私は一人感動に打ち震えた。独り住まいの部屋の中に、無限の可能性が広がっていくような感覚を、あの日私は確かに覚えたのであった。

それから見様見真似で作句し、締め切り時刻間近にようやく投稿を完了した。『川柳EXPO』という企画が発表されなければ、私が現代川柳に触れることはなかったであろう。

無論、ろくに作品を鑑賞せずに現代川柳の世界へ足を踏み入れたことに対して、反省や後悔がないと言えば嘘になる。先人が積み重ねてきたからこそ今日まで続いている現代川柳という文化に対して、自分はあまりにも敬意を欠いていたと思うし、自分の投稿作品を読み返す度に工夫の足りなさを自覚させられ、恥ずかしい思いに駆られる。そういうわけで私は今、現代川柳の句集や関連書籍を何とかして入手しては、片っ端から読む日々を送っている。

話を戻そう。

かくして『川柳EXPO』は世に送り出された。私の作品も多くの人の目に触れる機会を得たのである。

だが、これで「めでたし、めでたし」ではない。『川柳EXPO』という企画は、今まさに始まったばかりなのである。「投稿したものが載ったからもういいや」と満足している場合ではない。

作品は鑑賞されることで命を宿すものであると私は考えている。たとえ何百万部売れようと、語られなくなった作品は死んだも同然である。参加した以上は『川柳EXPO』を現代川柳の歴史に名を残す存在にしたいというのが私の思いだ。これから『川柳EXPO』がいかに語られる存在になるか、あるいは語られる存在にするかを、考えていかなければならない。

2023年8月現在、『川柳EXPO』の投稿作品について言及するXのポスト、noteの記事が複数確認されている。早くも反響を呼んでいるようだ。それらを可能な限り拝読したが、掲載作品数の多さ故か、ごく一部の作品・作者に限定しての感想が多数を占めていた。

当然のことではあるが『川柳EXPO』は作品の完成度を競ったり優劣を決める場ではない。しかしながら力量のある作品は存在するし、掲載順によっても作品の印象は多少左右される。これほどのボリュームともなると掲載作品について均等に触れた感想というものは書きにくいであろう。

そこで私は『川柳EXPO』に掲載されたすべての作品を対象に、感想文を書くことを決めた。掲載順に、毎日記録していくつもりである。

これは決してこれまでに感想を公開された方々を否定する意図を有した企画ではなく、また「まだ誰にも感想を書いてもらえない作品がかわいそうだから私一人だけでも書いてあげよう」という傲慢な考えのもとに書くものでもない。

これには先に述べた理由以外に、さらに二つの目的がある。

一つは『川柳EXPO』関係者全員に敬意を表し、作品を自分なりに丁寧に鑑賞し、その記録をもって参加のお礼とさせていただきたいため。

もう一つは、全投稿作品を読み込み、感想を文章化するという行程を通して、作品に対する「評」の力をつけるためである。この点に関しては完全に利己的な理由なので申し訳なく思う。

今の私には残念ながら現代川柳に関する知識も批評力も不足しており、万人が満足する批評文をしたためることは冷静に考えてまず不可能である。そのため、あくまでも「感想文」であると明記させていただく。開始前から逃げを打つようではあるが、どうかお許しいただきたい。

感想文と銘打ってはいるが、私個人の好き嫌いによる褒め殺しやこき下ろしはもちろんしない。また、文中では作者への敬称は省略させていただく。可能であればすべての句に感想を述べていきたいところではあるが、やはり私の力量を考えるに無理があるため、原則連作単位の鑑賞となることもご了承願いたい。

私は一切の影響力を持たない一般人であるため、現代川柳ならびに『川柳EXPO』の知名度アップには少しも役に立たない可能性が高い。が、そうであったとしても記録は残す。

私の感想文をうっかり目にしてしまったどなたかが興味本位で『川柳EXPO』を購入してくださったらこれに勝る喜びはないし、関係者が「へえ、そんな鑑賞もあるんだな」と感じてくださったらそれは大変な光栄である。


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