後悔で自分をごまかさないと決心してみろ
「僕は無智だから反省なぞしない。利巧な奴はたんと反省してみるがいいじゃないか」(『コメディ・リテレール 小林秀雄を囲んで(座談)』)という放言が思わぬ舌禍となり、太平洋戦争後における一億総懺悔の空気のなかで、小林秀雄は「戦犯文学者」のレッテルを貼られてしまった。
そんな舌禍の元となった座談会から約3年、『私の人生観』において、小林秀雄は剣豪・宮本武蔵が死を迎える1週間前に述べたといわれている『独行道』のなかの一つ、「我事に於て後悔せず」という言葉を引いて、その解釈を述べる。