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小林秀雄を読む日々

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『小林秀雄全作品』全32巻を、あきれるほど丁寧に読んでいきます。まず「『私の人生観』にたゆたう」を完結。新連載を準備中です。
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記事一覧

はじめての小林秀雄

「批評の神様」とよばれる小林秀雄を読んでみたい。しかし、レトロな表紙の文庫本『モオツァル…

既視の海
1年前
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全集を手に入れる、全集を読む

幼い頃から読書が大好きだった。ただし乱読多読。小説、随筆、ミステリ、紀行文、ノンフィクシ…

既視の海
1年前
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「人」が「生」きるうえでの「観」方

ちょうど5か月かけて読み、およそ100回にわたって論じてきた小林秀雄の『私の人生観』。あら…

既視の海
1年前
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全体を読み返してこそ熟読玩味できる

およそ5か月にわたって読んできた小林秀雄『私の人生観』を、いま一度全体を読み返してみて気…

既視の海
1年前
3

描いたのは「俺流の肖像画」ではなく、小林秀雄の自画像

およそ5か月にわたって読んできた小林秀雄の講演文学である『私の人生観』を、あらためて通読…

既視の海
1年前
11

みずから考え、工夫し、つくり出す思想を持て

小林秀雄を私淑する哲学者の池田晶子によれば、哲学は「在る」ものではなく、哲学を「する」も…

既視の海
1年前
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ジャーナリズムは「とってつけた」他人の思想を語っているだけだ

先の戦争では、江戸時代に武士の心得として書かれた『葉隠』における「武士道と云は死ぬ事と見付たり」という部分を、志を果たすためなら死をも厭わないと解釈し、死を肯定・礼讃する根拠として用いた人々がいた。これを小林秀雄は「少壮軍人達の暴挙も、『葉隠』の翻訳ではない」と断ずる。若い兵士たちが死を肯定・礼讃したことは、『葉隠』が本来、「死を意識すれば、いまある生を輝かせることができる。いまを一所懸命に生きろ」という意味を読み解けなかったのだという。 そのような言説を蔓延らせた要素の一

『葉隠』、宮本武蔵、そしてスティーブ・ジョブズへたゆたう

戦争中に、従軍記者をしたり、兵士相手に講演をした小林秀雄は戦後、軍国主義プロパガンダに加…

既視の海
1年前
3

生きた人生そのものがロジックであり、思想である

宮本武蔵は兵法を極める方法論をもって自らの思想をつくり、「器用」を極めたものが国の指導者…

既視の海
1年前
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必要なのは、「器用」をきわめる名人であって、己を知らない指導者ではない。

宮本武蔵は、兵法を極める手法をもって諸芸をも極め、自分を鍛練することで、みずからの思想を…

既視の海
1年前
8

指導者こそ、人生観を持つ事に勝たねばならない

小林秀雄は、宮本武蔵が兵法の方法論をもって様々な芸事をも極めたことについて、「器用」を追…

既視の海
1年前
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その人そのものを生きることが批評だ

小林秀雄の批評における起点は、論壇に登場した1929(昭和4)年の『様々なる意匠』における「…

既視の海
1年前
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批評の手法で俺流の肖像画を描く

小林秀雄は、宮本武蔵が兵法だけでなく、その方法論をもって水墨画、茶の湯、連歌をも極めたこ…

既視の海
1年前
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「器用」を極めたから、師匠はいない

宮本武蔵が著わした『五輪書』の「地の巻」にある、兵法の道を学ぶ心がけ九箇条のなかで、小林秀雄がまず触れたのは、第三条と第四条だ。 兵法を極めたければ、逆に兵法のほかの道にも通じていなければならないし、また他の職業など、広く社会にも通じていなければならないという。ここを小林秀雄は「『道の器用』は剣術に限らない。諸職の道にそれぞれ独特の器用がある」と解釈する。 これは、『私の人生観』で滔々と述べてきた「心眼」のことである。小林秀雄は「器用という観念の拡りは目で見えるが、この観