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エガオが笑う時

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#大鉈

エガオが笑う時 第10話 一緒に帰ろう(5)

エガオが笑う時 第10話 一緒に帰ろう(5)

 次の瞬間、私の足は旋律を刻む。

 武舞踏連弾

 タッタッタッタッタッタッタッタッタァ!

 私は、柄の振るい、石畳の上に散らばる大鉈と鎧の残骸を空中に打ち上げる。
 異変に気づいたマナが猟獣の如く私を睨み、熱線を放出する。
 しかし、私はもうそこにはいない。
 大鉈と鎧の残骸と共に私も空中へと舞い上がる。
 熱線が石畳を砕き、炭化させる。
 戦乙女のプレートに爪先を当て、思い切り蹴り上げて落

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エガオが笑う時 第10話 一緒に帰ろう(4)

エガオが笑う時 第10話 一緒に帰ろう(4)

 カゲロウの手から離れると私は大鉈を握り立ち上がる。
 もう2度と立てないのではないかと思っていた身体に力が入る。
 心の奥の奥から湧き上がってくる。
 私は、スーちゃんと戦っているマナを見る。
 マナの中を這いずり回る醜いヌエの顔をした無数の魔印を睨みつけながら戦略を組み立てる。
 私は、半月に抉れた大鉈をじっと見る。
 そして青白い炎に囲まれた空間を見回す。
 これじゃあ・・・ダメだ。
 私は

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エガオが笑う時 第9話 ハニートラップ(4)

エガオが笑う時 第9話 ハニートラップ(4)

「あいつらがいなければ戦えまい」
 ヌエは、喉を鳴らして笑う。
 私の心に一瞬、焦りが湧く。
 しかし、それは本当に一瞬のこと。
 4人組のいる屋根に大きな黒い影が見えた瞬間、鬼の姿が消える。
 空を切り裂くような嘶きと共に鬼達は屋根の上から吹き飛び、地面へと落下する。その際に周りにいた鬼達も巻き込まれて地面に伏す。
 赤い鬣が靡き、赤い双眸が炎のように沸る。
 伝説の軍馬スレイプニルことスーちゃ

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エガオが笑う時 第6話 絶叫(4)

エガオが笑う時 第6話 絶叫(4)

鬼と化した人間達はさっきまで仲間であったメドレーの戦士や救護班を襲う。
 突然の仲間の変貌に誰もが心も身体も付いていくことが出来ず、武器を抜くことも抵抗することも出来ないまま鬼の攻撃を受ける。
 鬼の1匹が叫びながら私達の方に襲いくる。
 私は、大鉈を構えようとするが、イーグルが「邪魔です」私の前に立ち、手に持った長剣で鬼を袈裟斬りし、膨れ上がった筋肉を裂く。
 一分のブレもない見事な剣技。
 鬼

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エガオが笑う時 第6話 絶叫(3)

エガオが笑う時 第6話 絶叫(3)

「くだらない」
 聞き覚えのある声が耳に入る。
 空気を劈く音と同時に獣達の悲鳴が飛ぶ。
 魔法騎士と騎士崩れ達の表情に驚愕が走る。
 私を襲おうとした獣達の身体に銀色の矢が突き刺さっている。
 矢の先端は、矢尻ではなく針になっており、その後ろにはガラスの管のようなものが付いており、中に液体が入っている。
 矢が刺さった瞬間、獣達は叫び、のたうち回る。
「たかが獣相手に何をしているのです隊長?」

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エガオが笑う時 第6話 絶叫(2)

エガオが笑う時 第6話 絶叫(2)

「凶獣病っていうのは常在菌の突然変異なんですよ」
 魔法騎士は、淡々と語り出す。
 ヒグマは、巨大な右腕を振り下ろし、その爪で私を裂こうとするが、大鉈の柄でその攻撃を受け止める。
 強い。
 恐らく獣人の姿であった頃よりも何倍も力がある。
 このままでは潰されると即座に判断した私は大鉈を傾けて力を逃し、相手の体勢を崩させ、その腹に蹴りを入れる。
 ヒグマの身体はくの字に折れ曲がり、唾液を吐いて膝を

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エガオが笑う時 第2話 感謝とお礼(2)

エガオが笑う時 第2話 感謝とお礼(2)

 日差しの中での朝食を終え、私とスーちゃんは森の奥に進むと空気を叩きつけるような騒がしい音が響いてきた。
 これは・・・羽音。
 スーちゃんは、歩みを遅くする。
 音が近づくに連れて見えてきたのは大きな木が並ぶ森の中でも一際大きな、プラムの木であった。
 美味しそうで赤々としたプラム、見てるだけで口の中に甘酸っぱい味が広がる。
 しかし、目的の食材はそれではない。
 プラムの木の中央にそれはぶら下

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