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海外映画の考察

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2020年3月の記事一覧

『(r)adius ラディウス』 スーパー・スプレッダー(病原体をまき散らして感染を拡大させる人)のメタファー

〈核心や結末に関する記述があります〉

スーパー・スプレッダー(病原体をまき散らして感染を拡大させる人)、あるいは無症候性キャリア(症状が顕れないために本人が気付かないままに感染源として周囲に伝染させる人)のメタファーじゃないか?と考えてしまいますね。記憶喪失の女性はたまたま抗体を持っていた。主人公のスーパーナチュラルな力を相殺?中和?できる仕組みはともかくとして、離れたくても離れられない男女の逃

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『黒いドレスを着た女』 メキシコのモニカ・ベルッチことアナ・セラディリア出演

『黒いドレスを着た女』 メキシコのモニカ・ベルッチことアナ・セラディリア出演

カナダ出身シャンドラ・ウェスト、やはりカナダ出身ライリー・ヴォルケル、スウェーデン出身のエミリー・バルドーニ、スロヴァキア出身スカーレット・ホルヴァット、メキシコ女優のアレハンドラ・アンブロシ等々やたら美人女優が脇役で出てくる。

アメリカやメキシコでは一応劇場公開されたのだろうか?雰囲気的にはイタリアやスペインのTV映画みたいな感じだ。

いちおう恋愛ものだが、全然サスペンスではなく、ラテン系ヒ

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『ブロー・ザ・マン・ダウン~女たちの協定~』(2019)   良い意味で批評家ウケするであろう『ファーゴ』×『ゆれる人魚』

『ブロー・ザ・マン・ダウン~女たちの協定~』(2019)   良い意味で批評家ウケするであろう『ファーゴ』×『ゆれる人魚』

Blow the Man Down(そいつをぶっ倒せ、といった意味)は19世紀頃から歌われてきたイギリスの船乗りの労働歌。唄を歌っている漁師のおじさん役は俳優ではなく音楽家らしい。
アメリカでも劇場公開はされず、アマゾン・オリジナル作品として米日同時リリースとなった。二人組の女性監督のうち、ダニエル・クルディが撮影助監督出身のためか、カメラ・ワークも一々面白いし、本国アメリカの映画評論家も、まだ誰

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『ピータールーの虐殺』(2018)  玄人ウケする作品

後にウォータールー(ワーテルローの英語読み)の戦いから「ピータールー」と名付けられることになる、1819年にイギリス・マンチェスターのセント・ピーターズ・フィールドで起きた実際の事件を描いた歴史映画。

ナポレオン戦争終結後の不況と高失業率、地主貴族層のために穀物価格の高値維持を目的に1815年に施行された穀物法、1816年の世界的な冷夏による農作物の壊滅的な被害でイギリスの庶民は苦しめられていた

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『ブレイン・ゲーム』 サイキック(超能力者)とサイコ(精神病者/殺人鬼)の対決を描いたクローネンバーグのオマージュ作品

本作の脚本は『セブン』の続編として執筆されたものであったが、続編の企画が頓挫したために、独立した作品として製作されることになった。 当初はレラティヴィティ・メディアの配給で全米公開される予定だったが、同社が経営困難に陥ったために公開の目処が立たない状況となった。後にライオンズゲート・プレミアが本作の全米配給権を購入し、2016年12月16日に全米公開された。

以上、ウィキペディア情報です(笑)

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『シンクロナイズドモンスター』(2016)    元ネタは本多猪四郎の『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』

日本劇場公開時のパンフレットでは、主人公グロリアは実世界で完璧すぎるゆえ嫌われるアン・ハサウェイで、オスカーは優等生やセレブを僻み妬むネット上のアンチのメタファーといった解説がされたようだ。

この解説がかえって日本での本作品の評価を下げてしまったのではないだろうか。いやメタファーだからそういう解釈も否定はしないけれども、普通に観れば、怪獣は周囲の者達に迷惑をかけるアル中のメタファーで、大人になり

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『目撃者 彼女が見たもの』 リンディ・ブース主演カナダの2時間サスペンス劇場

『目撃者 彼女が見たもの』 リンディ・ブース主演カナダの2時間サスペンス劇場

2020年1月22日に日本でレビュー済み
形式: Prime Video Amazonで購入
リンディ・ブース主演という時点でB級映画だろうと思ったら、TV映画。劇場用映画以上のクオリティの最近の有料放送局のTV映画とは違い、昔ながらの王道の2時間サスペンス劇場的作品。
ブースは若いころからB級ホラー出演が多く、TVドラマ『ライブラリアンズ』シリーズでも知られる、カナダ人女優。唯一の大作のメインキ

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『ザ・アウトロー』(2018)   実は別エンディングも用意されていた

『ザ・アウトロー』(2018)   実は別エンディングも用意されていた

核心や結末に関する記述あり

なによりもいけないのがオチだ。さんざん使い古されてきたオチなのだが、演出が下手なのが幸いして(?)、1回観ただけでは分かりにくく、スゴイどんでん返しを見せ付けられた気がするかもしれないが、気がするだけである。

白人のゴミ回収車ドライヴァーは、序盤のバーのシーンでは顔の認識は不可能。もう一人のゴミ回収車ドライヴァーである痩せたサモア人のほうは、序盤のバーのシーンでも意

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『パージ:エクスペリメント』(2018)   TVシリーズのほうが面白い

TV版パージのシーズン1で、主人公の子供時代に行われたという地域限定のパージ実験の話がちょっと出てきましたが、その実験が本作品で描かれます。

パージ・シリーズは映画4作品(前3作と本作品)とTVドラマ2シーズンは、すべて同じ世界設定となっていて、同じ時間軸の一番初めを描いているのが本作品ということになります。そのわりにはスマホが出てきたりするので、TV版シーズン1は現代じゃなくて近未来ってことな

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『スカイライン-奪還-』  前作は妊娠のメタファーで、今度は出産と育児のメタファー

量子力学や相対性理論、重力量子論といった理論物理学の要素を見事にスルーし、そこに親子の愛を盛り込んだ感動作です。

メタファーという考察に対して、「深読みする余地は微塵もない!」と過剰反応する人がいますが、想像したものを映像化する努力の積み重ねが映画であり、想像を楽しむ能力はホモサピエンス固有なそうですよ。「人間が想像できることは 人間が必ず実現できる 」って鹿島建設も言ってますしね。

と、ここ

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『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)   アリスン・ジャネイとマッケナ・グレイスの演技だけでも観る価値あり

序盤で子供時代のトーニャを演じるマッケナ・グレイスと母親役アリスン・ジャネイの演技だけでも観る価値充分。

ジャネイは現代アメリカ女優ではトップ・クラスの演技派で、本作品でのアカデミー助演女優賞の受賞は当然だ。字幕はマイルドになっているが、原語ではかなりダーティーな言葉を使っている。

現代のシャーリー・テンプルと言われるマッケナ・グレイスだが、彼女はテイタム・オニールの再来じゃないかと私は思って

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『ハムレット』(1990) メル・ギブスン主演ハムレット

プライム・ヴィデオで視聴。間違いなくレストアされていると思われる。

メル・ギブスンがシェークスピア劇?と思うかもしれないが、彼はケイト・ブランシェットと同じNIDA(オーストラリア国立演劇学院)卒なのだ。しかしブランシェットと違い、メル・ギブスンの時代には倍率が低かったのかもしれない…。

RADA(王立演劇学校)出身のアラン・ベイツとイアン・ホルム、ローレンス・オリヴィエと並び称される大御所ポ

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『ある少年の告白』(2018)  実在するゲイ・コンヴァージョン・セラピー・プログラムをモデルにした作品

『ある少年の告白』(2018)  実在するゲイ・コンヴァージョン・セラピー・プログラムをモデルにした作品

ガラード・コンリーの自伝的小説を映画化。

アメリカで最大の教派バプテストだが、バプテストといっても保守、中道、リベラルと幅広い。主人公の父親は南部アーカンソーの保守派のキリスト教原理主義。反同性愛だけでなく、反中絶、反進化論である(避妊具を使った人為的な避妊にも反対だと思うが、そのわりには主人公は一人っ子である)。

彼らを「進化論さえ認めない非科学的で無知な田舎者たち」で納得してしまったり、「

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『ピザ!』(2014)   インドのデ・シーカ的な

『ピザ!』(2014)   インドのデ・シーカ的な

言語はヒンディーでなくタミルのようです。

南インドのチェンナイ(旧マドラス)が舞台なので、チャパティやパラタのような小麦粉で作ったパン的なものではなく、お米を食べてますね。

あらすじを見て、チャパティに適当な具材を乗せたらピザになるんじゃない?と思いましたが、やっぱり同じようなことをやってますね。ただしチャパティではなく、おばあちゃんは南インドで一般的な「ドーサ」という米と豆を生地にしたもので

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