『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)   アリスン・ジャネイとマッケナ・グレイスの演技だけでも観る価値あり

序盤で子供時代のトーニャを演じるマッケナ・グレイスと母親役アリスン・ジャネイの演技だけでも観る価値充分。

ジャネイは現代アメリカ女優ではトップ・クラスの演技派で、本作品でのアカデミー助演女優賞の受賞は当然だ。字幕はマイルドになっているが、原語ではかなりダーティーな言葉を使っている。

現代のシャーリー・テンプルと言われるマッケナ・グレイスだが、彼女はテイタム・オニールの再来じゃないかと私は思っている。

さて、本作品の日本語版ウィキペディアには「アメリカのベテラン記者たちの間では、ハーディング本人を知らない第三者が創り上げた虚像だという批判的な声が圧倒的である」と書かれているが、日本語版よりはるかに詳細な英語版wikipediaのページには、ハーディングに同情的すぎるとかファンタジー作品であるといった批判もある、といった程度のことしか書かれていない。どうやら「アメリカのベテラン記者たちの間では圧倒的である」と言っているのは、アメリカ人ではなく日本人のスポーツライターらしいのだが、この人物がフィギュアスケートのファン達からどう評価されているかは、ちょっと検索するとお分かり頂けると思う。

そもそも本作品はBBCのTVドラマ『ジ・オフィス』や映画『容疑者、ホアキン・フェニックス』のようなモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)スタイルのダーク・コメディであり、実名で描かれている当事者たちはともかく、批評家や視聴者が「事実と違う」批評することはナンセンスである。映画の冒頭の  "Based on irony free, wildly contradictory, totally true interviews with Tonya Harding and Jeff Gilloly."は「非常に矛盾した」「まったくの真実のインタビュー」に基づいている、といった意味で、皮肉抜きと言いながら、信じるか信じないかは貴方次第、といった感じの大いなる皮肉なのである。

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