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本当の意味での放浪者「雨に打たれて」

<文学(116歩目)>
すべてに自由であり続けることが難しい中で、自由であろうとした女性の作品。

雨に打たれて
アンネマリー・シュヴァルツェンバッハ (著), 酒寄進一 (翻訳)
書肆侃侃房

「116歩目」は、アンネマリー・シュヴァルツェンバッハさんの短篇集。

この作品は、いろいろと著者の背景から読み方がたくさん出てくるのですが、率直に「カッコイイ、紀行文」、透き通った名文として読みました。

翻訳者が酒寄進一さんなので、「イケる」と思って衝動的に購入したのですが、最後まで「カッコイイ」「中近東へ放浪した気分」を味わえました。

表紙のアンネマリー・シュヴァルツェンバッハさんもカッコイイ。
「約束の地」「移民」「輝かしきヨーロッパ」「雨に打たれて」「別れ」「ベニ・ザイナブ」「帰郷を目前にして」「耐えに耐え…」「伝道」「三日連続の徹夜酒」「悩みは五十歩百歩」「ヴァンの婚約」「告知」「女ひとり」とありますが、実は「恋人」の影が見えてこないのが不思議。

「別れ」
アルジェリア人に対してのヨーロッパ人(フランス人)側からの視点が当時の大多数の考えていたステレオタイプと異なることが深みを与えた作品。

「ベニ・ザイナブ」
「これまであの人は多少の幸運に恵まれてきました。しかしいつの日かそううまくいかないときが来ます。いつの日か、本当に消息がわからなくなるでしょう。道端で凍死しているのが見つかるかもしれません。そうなっても、私は驚きません・・・」という文章にこの作品集でのアンネマリー・シュヴァルツェンバッハさんの透徹した視線を感じる。

彼女と恋人(女性)との関係が見えてきそうで見えないもどかしさが透明な文体の中でお洒落にまとまっている。

カバーの写真のイメージはヨーロッパ。でも、この作品集に陰影をつけているのはオリエントです。とてもスタイリッシュな作品です。

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