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中華SFエンターテインメント「流浪地球」

<SF(36歩目)>
中華SFエンターテインメント作品を自然体で楽しむ。

流浪地球
劉 慈欣 (著), 大森 望 (翻訳), 古市 雅子 (翻訳)
角川書店

「36歩目」は、劉慈欣さんの中編集。かなりイケます。

劉慈欣さんは、素晴らしい筆力でトンデモ科学を駆使して、いきなり物語の前提をつくる能力のある作家。

日本では、小松左京さんの様に「無理やりトンデモな世界」に連れ出す名手です。
この作品では、大技を駆使して一気に読者を違う次元の世界に拉致してくれます。(笑)

好き好きは色々ですが、私は「中国太陽」「山」が素晴らしいと思いました。

「中国太陽」
ちょっと、パオロ・バチガルピさんの作品に似て、一般の人が科学の最先端の世界に携わる姿がとても描けている。農村から出てきた若者が、夢を掴み、「視点」が農村から北京、そして高層ビルから、宇宙へ。規模に満ちた未来が素晴らしい。

そして、何よりも亡くなられたスティーヴン・ホーキング博士が物語に含みを与えている。
この中編は、何度も読んでしまった。

「山」
まんま、「山」です。チョモランマを目指した若者が、地球最高峰を泳ぎ登る物語。

シンプルに山岳部関係者(これは私です)は、そのまま読んで欲しい。
「次はどんな山だろう。なんとしても生き延びなければ、その答えがわからない」という主人公の馮帆青年の気持ちは、山好きなら理解できると思う。

またエイリアンの話す「宇宙」は、以前に読んだ「ゴッド・ガン」の中の「地底潜艦」(バリントン・J・ベイリー)を思い出す。前提が異なる世界での進化により「真実」の捉え方が異なる。「真実」って、答えは一つなのかもしれない。でも、見える範囲が小さいとわからない。

人間としてわかっているつもりでも、蟻がわずかな周囲の情報だけで「世界」を知ろうとするのと同じで、まだまだ驚天動地の「真実」がこの世に沢山残っているとも思った。

「呑食者」も野尻抱介さんのSFに似ていいし、「呪い5.0」もドタバタでいい。酔っ払いの劉慈欣さんが登場するが、この手法は閻連科さんの「炸裂志」に似ている。(笑)

プロットよりも筆力で読ませてくれる。

リーダビリティも素晴らしく、SFの素晴らしい世界にトリップさせてくれる作品です。

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