フィ
端から、暮れていく。
そのかわり、手を止めて、窓の外をみて、目の奥に焔がうまれてから、暮れていく。それがわたしのからだを揺さぶって、いつしか眠りについたりつけなかったりする。
musicの香りがして、枕をもってみる。埃が白く積もっている。普段使っていない上半分に積もっている。それが雨だったなら、ひたひたとしたたってわたしを濡らしたかもしれなかった。そうして、それすら美しいとされる抒情を示したのかもしれなかった。薄曇りのほどに積もったそれを指でぬぐうと、生地はBlueに暮れていく。
朝ははやくて、夜は脱ぎづらい。
焼きたてのチーズケーキみたいな地面に両手をついて、もちろん両足もついて、それからお尻もつけて、わたしがひとつ、存在してしまう。
空は端から暮れていく。
窓が内側を光らせていく。
透けた扉の開け方を、くるっと回すそのやり方を、わたしはいつ習ったんだっけ。つま先が地面にからまる。分厚い心で覆ってあげて、それから差し出すように明け渡すように自身を持ち上げる。玄関ポストから音がする。何かの落ちる音が。地面がやわくて、窓が広がる。
マンションの一室。全身をめぐる水より泡が噴き出すように痛む、もうつめたい月をみている。まっすぐに見ている。見られている。距離が揺らいで罪になる。からだが、浮いている。時間から、浮いている。
水の中へ潜るくらいフラットで。
落ちる。
23.0906
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