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探究学習プログラム #番外編 -MONO-COTO CAMP 2022-

紹介動画

概要

デザイン思考を活用した探究学習プログラム「MONO-COTO CAMP 2022(モノコトキャンプ 2022)」を2022年3月26日と27日の2日間実施しました。

弊社CURIO SCHOOLの探究プログラムを受講した生徒限定で参加者募集を行い、9名の方に参加いただきました。

「非日常空間での発想爆発」「学校外の人たちとの共創経験」この2点を目的に、私立田園調布学園の講堂をキャンプ場風にセッティングしてワークショップを行いました。

キャンプを意識したワークショップ道具
キャンプ会場風のワーク会場
アイデアを形にするためのプロトタイプ資材

プログラムの流れ

⑴アイスブレイク
所属校の異なる生徒同士が集まったため、まずは共通点探し、絵しりとりなどの簡単にできて動きもあるアイスブレイクを行い、安全安心な空間づくりをしました。

アイスブレイクの様子

⑵手を使わずに野菜を運べる道具のデザイン
メインワークの1つ目です。「キャンプのお昼につくるカレーの具材を川の対岸にいる仲間に渡してほしい」というストーリーのもと、手を使わずに一定距離先の鍋に野菜を入れることができる道具をペアでデザインしました。アイデアを単に頭で考えるだけではなく、会場にあるプロトタイプ資材を自由に使いながら形にして試し、改善点を見つけながら改良していきました。

道具をデザインする様子⑴
道具をデザインする様子⑵

⑶初対面同士が仲良くなれる遊びのデザイン
メインワークの2つ目は、今回のMONO-COTO CAMPのように初対面同士が集まる場において、自然と仲良くなれる遊びをチームでデザインしました。広い講堂と外のスペースを活用しながら、実際に考えたアイデアを他チームも巻き込みながらテストし、より楽しくより仲良くなれる遊びをつくっていきました。

遊びのデザインをする様子⑴
遊びをデザインする様子⑵

⑷リフレクション
2日間のワーク最終盤では、これまでのワークをふりかえってリフレクションを行いました。照明が落とされた講堂のランプの周りにチームで車座になって座り、それぞれが2日間のワークショップで体感したことや学んだこと、チームメンバーへのLike・Wishなどを静かにゆっくりと語り合いました。

ランプの周りでのリフレクション

参加者インタビュー

MONO-COTO CAMP 参加者の2名に、プログラムへ参加した動機やここで学んだこと、今後の展望などを語ってもらいました。(参加者の所属と学年は2021年度末時点)

品川女子学院高等部1年 河尻綾音さん

ペアワークをする河尻さん(右側)

自分たちのコミュニティを越えようとしている人たちが来ている
河尻さんは参加したきっかけとして、昨年参加したMCI2021(※弊社主催のデザイン思考コンテスト「MONO-COTO INNOVATION2021」のこと)で探究プロジェクトに興味をもったことをあげていました。

河尻さん:昨年MCI2021に参加して、そこでデザイン思考を用いて探究することの楽しさに気づけたことが参加のきっかけです。MCI2021は完全オンライン開催でしたが、他の学校の人と1ヶ月間考えた時間がとても楽しかったです。

また河尻さんはMONO-COTO CAMP に対して、自分たちが既にもつ学校コミュニティを越えようとしている人たちが集う場だと感じたそうです。 

河尻さん:MONO-COTO CAMP は、自分たちのコミュニティを越えようとしている人たちが来ているっていうのかな。例えば、逗子開成高校の参加者は3人で来ていて、同じ学校で固まってしまうのかなと思いきや、いざワークが始まると他の人たちとも仲良く話をしていました。でも3人でも仲良いんですよね。そんな感じで、一つの場に学校の仲間がいるけどそれを超えて輪が広がっていく感じにワクワクしました。

全員アイスブレイクに参加する河尻さん(正面)

自分とは真逆の視点に出会ったのは、面白かった
一方で河尻さんは、ペア相手から真逆の視点を学んだことを面白さとあげていました。

河尻さん:野菜渡しワークで特に感じたことなんですけど、私は慎重に確実に遠くの鍋に入れる方法を考えようとしていた一方で、ペアの子は引っ張ったゴムが戻る力を利用して、半ば強引に野菜を鍋まで飛ばす方法をとても押していました。私とはアプローチが真逆だけど、すっごくその方法の楽しさを追求したいんだなあ、というのが伝わってきました。2人の案とも試せた上で、自分とは違う案を一緒に深めていけてよかったです。飛ばすことにはリスクがあるけど、楽しさを追求することができました。

ペア相手の意見を受け止めつつも、自身の意見をうまく伝えながら相手と共創する体験ができたと語る河尻さん。男子校生徒という日常では話す機会の少ない相手とのやりとりであったことが、多様な他者とのコミュニケーション力を伸ばす経験になったと話します。

視界に入るものがいつもとは全く違うことが、アイデア発想につながる
河尻さんは、キャンプという非日常空間がアイデア発想につながったと語ります。焚き火台やテントといったキャンプ道具、カードゲームやモルックというキャンプに持っていくような遊び道具など、会場に散りばめられているキャンプグッズ類を見ることとキャンプ風会場で過ごすことに刺激を受け、アイデア発想が進んだと話していました。

河尻さん:学校だったら教室で机に座って考えるんですけど、今回はキャンプ用の椅子に座わりながら考えました。すごくラフな感じだったので、いつもは思い付かないようなアイデアがたくさん出ました。日常生活だと目に入るものに慣れすぎていて、特に教室は置いてあるものが少ないので発想が飛ばないんですよね。でもMONO-COTO CAMPの会場には道具やテントなど非日常の物がたくさんあり、それら視界に入るものが教室より圧倒的にカラフルでバリエーションがあるおかげで、アイデアがたくさん湧きました。

また河尻さんは、それらアイデアを即テストできる空間だった良さも語っていました。

河尻さん:課題ごとにいろんなアイデアをいくつか思いついたのですが、それを全部試すことができました。短期間でもいくつも試すことができたのがよかったです。テストをしてうまくいかなかった場合は、また違う案でやってみることができました。

アイデアをすぐ形にしてテストすることができる空間だからこそ、探究プロジェクトで重要なつくって試すサイクルを素早く回すことができたと話していました。

河尻さん:何度もテストを繰り返すことで「これはいいと思ったのにダメだったのか〜」という楽しさがありました。各お題に制限時間はあるので、1個ダメなら「はい、次」とポンポン進めることを意識して、トライしていました。

非日常的なアイデア発想が進む空間、つくってためすことが簡単にできる空間、その2つが成立していたMONO-COTO CAMPの環境だからこそ、楽しみながらそれでも集中してプロジェクトを進めることが、河尻さんはできたのかと思います。

ホワイトボードで議論をまとめる河尻さん

とりあえずチャレンジしよう、と思うことが増えたと思う

MONO-COTO CAMPに参加したことによって、河尻さんは自身の考え方に変化があったそうです。

河尻さん:MONO-COTO CAMP に参加したからこそ、自身が「やってみよう」と考えたことを、すぐにやるようになったかもしれません。日常の細かなことでも、一旦考えてみたことをテストして、そこからわかったことを活かし、さらに別の方法でテストすることをしています。結果としては、できなかった時もあるんですけど。ただ、ひとまずチャレンジしようと思うことは、前より増えたかなと思います。

河尻さんは、MONO-COTO CAMPで得られた探究プロジェクトを進める力を、日々の学校生活でも活用できていると話していました。現在、河尻さんは文化祭に向けた企画を練る際に、ここで学んだ経験を活かしていると語っていました。

田園調布学園高等部2年 倉田真衣さん

チームでアイスブレイクをする倉田さん(右側の青い服)

「デザイン思考ってなんなんだろう?」と気になった

倉田さんは、参加したきっかけを「デザイン思考という言葉に引っかかった」と話していました。

倉田さん:学校にあったMONO-COTO CAMP のチラシを見つけたことが参加のきっかけです。いろんな学校が集まってプログラムをやるのは面白そうだなと思って参加しました。また「デザイン思考ってなんなんだろう?」と気になったのもあります。

高等部2年(2022年度は高等部3年)の倉田さんは、自分のやりたいことについて考えを巡らせる進路選択の時期であり、その悩みを晴らせる可能性も感じてMONO-COTO CAMPへ参加したと話します。

倉田さん:私は元々発展途上国の子供の支援に興味をもっていましたが、「それは本当に自分がやりたいことなのか?」と考えてしまい、、自分のやりたいことがわからずに迷走していました。そんな時に見たMONO-COTO CAMPのチラシには、模造紙に付箋をいっぱい貼って参加者が話し合っている写真があったんです。私の興味のあることとは全く離れているど、「MONO-COTO CAMP に参加することで、やりたいことを見つめ直せるかな」と直感しました。

遊びの中に学びがあった

MONO-COTO CAMPに参加しながら、倉田さんは学校の授業との違いを考えたと話していました。特に、学校にはない「ぶっ飛んだことを言える自由」を感じたそうです。

倉田さん:学校の授業では「真面目なこと言わなきゃ」という意識があったことに気づきました。グループワークであっても正解がある問いを投げかけられることが多いので、何かしら科目との関連性を考えてしまうんです。なのでぶっ飛んだ回答はできなくて…。でも、MONO-COTO CAMP は、自由なワークだったので「ちょっと厳しくない?」「ぶっ飛びすぎかも?」というような意見でも、気にせずに言うことができました。正解・不正解ではなく「こういう風にやったら叶いそうかもしれない」と考えることができました。正解が決まっていないからこそ、自由に考えられたと思います。

また、倉田さんは初めて会った人たちだからこそ協働できたこと、遊びの中に学びがあったことについて話してくれました。

倉田さん:初めて会った方たちだからこそ、あえて本音で話すことができました。学校の友達だと恥ずかしくて意見を言えないこともあるんです。真面目な話や自分の興味のある話をするのは照れくさくて…。この人めっちゃ真面目に考えてんじゃんと思われるのは恥ずかしくて…。でも知らない人たちだからこそ、恥ずかしがらずに本音で話せました。キャンプのゆったりしている雰囲気も良かったです。学習目的ワークというよりもアイデア発想キャンプだと思って参加したからこそ、みんなと壁を作らずに仲良くなれたのかと。学びというよりかは遊びの中に学びがあったのが良かったんだと思います。

資材を巻き付けて遊ぶ倉田さん

自分が固定概念に引っ張られていたことに気づけた

MONO-COTO CAMPの良さを語っている倉田さんですが、不安や緊張もあったと話しています。

倉田さん:MONO-COTO CAMP は1人での参加したことと、私1人だけ新高3年生だったので不安でした。上級生としてみんなのことちゃんと引っ張っていけるかな、輪の中に入っていけるのかな、と。それに6年間男子と接することがない学校環境なので、男子がいることに「どうしよう」と戸惑いました。でも一緒にワークをしていくことで、少しずつ緊張が解れていきました。またチームで競い合うワークもあったので、学校や性別関係なく協力して一緒に頑張りたいという気持ちが、不安を無くしていったのかなとも思います。

 MONO-COTO CAMPでは、ペアとの得意不得意を考えながらワークを進めたそうです。

倉田さん:デザイン思考プロジェクトの一側面として、いろんな人と関わりながら自分の持ってないものを補いつつ、形にしていくことだということだと学びました。逗子開成高校の男子とペアワークをした時は、彼がどんどんアイデアを出してくれたんです。私は何も考えられていなかったんですけど…。そういうところが、私にはないところだなと思いました。逆に私は道筋を立てることが得意なので、ペアワークではメリットデメリットをまとめたり、方向性を示したりしました。

さらに、他校や他学年と協働することを通して「年上は年下に教えてあげなきゃいけない」という自身の固定観念に気づけたと倉田さんは話していました。

倉田さん:私自身は女子校の田園調布学園の生徒なので、男子校である逗子開成高校の生徒との考え方の違いは最初から感じました。でもそれだけではなく、同じ女子校である品川女子学院であっても、学校が異なると考えていることが違うことに気づきました。また、同じ学校でも学年が違うだけで考えていることや流行っていることが違うことも新鮮でしたね。なので、年下の子から教えてもらうこともありました。意識してなかったんですけど、今まで「年下の子には教えてあげなきゃいけない」という考えがあったんだなと気がつきました。だけど、学びは年齢関係なくいろんな人から得られるものなんですよね。違う背景がある相手だからこそ、得られることを知り、同時に意識していなくても自分が固定概念に引っ張られてしまっているってことに気づけたんです。

チームで新しい遊びをデザインする倉田さん


互いに学び合える関係っていいな

倉田さんは、今まで先輩らしく引っ張っていこうとしていましたが、年下の子から教わることもあることにワークの中で気づき、肩の荷が降りたと語ります。先輩後輩という上下関係ではなく共に協働する仲になることを通して、現在でも連絡を取り合う関係になったといいます。

倉田さん:MONO-COTO CAMP で年下からの学びもあるんだと思ったことがきっかけで「アクティブラーニング」という言葉に興味をもつようになりました。先生って教えてあげなきゃいけないという責任があると思うんですけど、アクティブラーニングとして子供たちから先生が学んでもいいんじゃないのかなってと考えるようになりました。先生も肩肘張らずに授業してお互いに学び合える関係っていいなと。それに学んだことをアウトプットすることが大事だと思っています。

MONO-COTO CAMPで得られたアクティブラーニングというキーワードを軸に、倉田さんは幼児教育や女性の社会進出なども含め、広い視野で学びを深めていくそうです。

まとめ

MONO-COTO CAMP 2022に参加した2名に対して、参加動機やそこでの学びや日常生活で活かせていることなどをインタビューしました。2人が語った詳細は異なりますが、2人ともプログラムに参加することで自身の立ち位置を見つめ直し、今後の進路に結びつけていることが印象的でした。

弊社探究プログラムを受講された方向けのデザイン思考ワークショップ「MONO-COTO CAMP」は今後も開催予定です。

終了後の集合写真

(インタビュー・記述:大門・笠原)

探究プログラムやインタビューの詳細は、弊社担当までお問い合わせください。
・プログラム:https://mono-coto-program.com/
・イベント:https://mono-coto-innovation.com/
・Facebook:https://www.facebook.com/curioschool
・担当: s-daimon@curioschool.com(大門)

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