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2020年11月の記事一覧

メルヘン

些細な事を許せず
罵倒して笑っていたね
気が狂っているなんて
分かる筈も無く
夢や幻さえも越えて
今は微睡みの中へ
消えそうな真実すら
嘘に変わってく
柔らかなこの物語が
閉じてしまっても
貴方は気付かずに
死んでしまうだろう

割れそうな世界

蛎殻のナイフを
隠し持つ殺し屋Q
生きる限り訪れる
絶望と言う名の明日
割れそうな世界で
僕は怯え震え続ける
死は救いではないと
知ってしまったから

サイレン

魅惑の夜に聞こえる
けたたましいサイレン
約束が千切れる前に
貴方と口付けをしよう
柔らかな猛毒の様
何もかも包み込んで

ラヴ・ロカビリー

ウッドベースを鳴らす
ラヴ・ロカビリーの夜
SR500に付けた
CRキャブが吸い込む
悲しみはマフラーから
とめどなく零れて
消えて逝ったよ
跡形も残さずにさ

アリス改

鏡に映るその姿は
人として作られた
亡くした自分の子供を
モチーフにして
心までは組み込めず
老人は息絶えた
同じ人を作る事など
叶わないと知りながら
彼女は家の扉を開け
初めて外へ歩いていく
生まれたての心を
隠す事すら出来ずに
美しく撓むこの世界へ

劣情

拳銃を持つ男
花束を待つ女
どうしようもない
劣情の中
機動隊に囲まれ
撃たれて笑った

TVショー

楽屋で煙草を吸いながら
虚ろな瞳をして
出番を待つタレント達
TVショーが始まるぜ
自分を演じてさえいれば
其れなりには安泰だ
首が飛ぶその日まで
少しでも稼ぎを貯めて
殺戮と喧噪に見えた
凄惨な現場を演じれば
話題には為るだろう
直ぐに忘れられるけど
世間は今も飢えている
知らない誰かの不幸にさ

或る引き籠り

上物のドラッグの様な
日常は過ぎて逝き
皆何かを生贄にして
残りの日々を食い繋ぐ
終わらないワルツなど
探せなかった引き籠りは
老いた父母さえ去り
独りの夜に膝を抱える
死すら平等ではない世界で

アメリヤの魔女

アップルサイダーを
6ダース届けたなら
大体の願いは
叶えてくれると聞いた
都会の切れ端に潜む
アメリヤの魔女
造られた話の中で
生き続ける彼女の事を
皆が忘れた時
真の姿を現すのだろう
誰も何も知らない
偶像だったとしても

リィズ

螺旋階段の途中から
覗く月明かりを頼りに
口付けをしたね
何もかも遠ざかり
貴方を忘れ逝く中で
如何かその声だけは
最期まで覚えて居たい
僕の願いは叶わずに
全てを忘れ去っても
許してくれないかリィズ
人は儚い者だから

コロンバイン

ドラァグクイーンの
瞼に止まる蝶
その美しい羽が
瞬いて砕けたなら
この退屈な街も
鮮やかに輝くだろう
だからこの夜は
胸にしまって置く
貴方が傷付かない様
そして羽ばたける世に

ダイヤ・ブロードウェイ

コーラの瓶に差した
花が枯れたなら
それが悲しみだと
僕は知ってしまった
ポケットから出した
キャラメルを頬張って
ブロードウェイを歩けば
キラキラと光るのさ
ダイヤモンドみたいに

やさぐれ者

デスクの上から放たれる
浮付いた言葉が許せずに
抑え切れず殴り倒した
そんな事ばかり繰り返す
俺は何処にも行けやしない
安い酒をあおりながら
明日に怯えるのは御免だ
短くなった命を灯せば
三途の川が透けて見える
やさぐれ者と言われても
何にも変わりやしねえのさ
辿り着く先が地獄でも
この世の果てでも構わない
最期は派手にいこうじゃないか
生まれ落ちてしまったのだから

J・ジョーカー

寒い国から訪れて
帳の向こうへと消えた
名前の無いスパイ
夜明けのスキャットを
口遊むJ・ジョーカー
窓の雪が空へ還ったなら
さあ全てを決めようか
終わりは始まりなのだから