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2020年10月の記事一覧

詩18『離してくれよ』

ぼくの願いが
あんたの願いを踏みつぶすと言うのなら

ぼくの願いが
あんたの願いを無視すると言うのなら

それは、誰の願いでもないんだよ

ぼくが幸せになったって、誰も不幸せにはならないんだ

願っちゃいけないだなんて、誰が言ったの

なんで石ころを食べちゃいけないの
なんで早く寝なきゃいけないの
なんで雨の日には必ず傘をささなきゃいけないの
なんで虫を潰してはいけないの
なんで静かにしなきゃいけ

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詩17『きみが寝てしまうまえに』

↑前回のおはなし

蛍光灯のひかりを落としてしまった瞬間

キラッとぼくの目を刺したのは

ストーブのコンセント
の先端の金属

荒く、鋭く、二つの四角が輝いたの。

あの、ねえ、今さらそんな目でぼくを見ないでほしいんだけれど。

だってきみ、昼間のあの静かさはどこへ行ったって言うのさ
しんとして、まるで存在しないみたいに。
一度だって、そんな乱暴に光ったりしなかったじゃあないの。

そう
眠れな

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詩16『泣いてほしい』

↑前回のおはなし。

ひとりになりたいよ、たったひとりに
かけがえのない、唯一に

たったひとりになりたいよ、だからお願いそばにいて

ひとりぼっちに、なりたいわけじゃ、ないのよ

ぼくを、きみにとっての、たったひとりにさせて

鏡に映ったってひとり
星を見上げてもひとり

きみに、泣いてほしい

[今日のおはなし]

 好きな言葉は、ありがとうとどうしてです。座右の銘は、柔を以て剛を制す。

詩15『小さいもの』

この蟻は、小さいのだろうか
ほんとにぼくより、小さいのだろうか

腹が減って、眠れぬ夜は何度ありましたか
背中について剥がれない塵芥に、押しつぶされそうになった夜は

そんなとき、あなたは一体どうやって
どんな息をして、朝を待ちましたか

夜色の体、白昼の土を駆けていく

その小さな肉体に
太陽はジリジリ、子供らはドスンドスン

「ああ、やはり、ぼくの方が」と言うこの痩せこけた巨人を
御蟻様は、「

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詩14『叫んで、光って、』

痛いときに痛いと言える勇気があれば
ぼくは、空を飛べるだろうか

立ち止まって、自分のこころに
拍手を送れたら。

花は、ぼくを咎めるように
ぼくに問うように、揺れている。
川は、ぼくを赦すように
ぼくを誘うように、流れている。

こんなに美しいものに囲まれて
それなのにぼくは、一度たりとも叫べない。

「きみは美しい」

叫べたら、ぼくは、空を飛べるかな

本当に美しいものを見て、美しいと言いた

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詩13『そのあと、わたしを消してください』

あなたの声が「幸せ」と動くたび、景色が一マスずつズレていく。

わたしがあと少しいい子だったら、もう少しあなたのことを好きだったら
二人の幸せはぴったり重なったのかな。
あなたは嘘つき、それは知っていた、けれど気づかなかった
こんなわたしを、それでもまだ「いい子」だと言うものね。

煙なんか大嫌い、ごまかされるのは大好き

あなたよ、このままいなくならないで
このまま消えていかないで
ただ、何事も

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詩12『おなかがすいた』

欲しい物なんかないのよ
オモチャ箱みたいなお店、ひっくり返したって
そんなの誰だってくれるもの
わたしにだって買えてしまうもの

同じもの、欲しくない
そこにあなたはいない。
他でもない、あなたの胸に、
また帰って来たいと思わせて。

ただわたしはあなたの、
あなたの言葉を食べたい、あなたの時間も
あなたの気持ちの動き回るのを
この口に注いで欲しいのよ

だから、ラブレターを頂戴な
小さなお花がた

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詩11『冬の赤んぼう』

突然ごめんね、久しぶり。
散々迷ったんだけれど
やっぱりきみに、どうしてもきみに
聞いてほしいものがあったから。

今ぼくが暮らす街の秋は
まるで冬の一歩手前、そう冬の赤んぼうのようで
いったいいつまでいてくれるんだい、と
毎日夕方には、風に問うてしまいます。

そんなある日、雑貨屋で見たものは
コスモス模様のハンカチ、のお隣。
それは、売れ残りセール の印がついた
一袋のひまわりの飴でした。

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詩09『秋の虚芯』

ぼくの皮膚の透明の膜はどうしたって剥がせなくて、
ぼくらがどんなに抱きしめ合ったって
ぼくはきみに触れられない。
かなしいことじゃないんだよ。

ぼくらは近づき続けるんだ
そして、ぼくはきみの中に入れないまま
きみの心をすり抜けるだろう
そして、すれ違って過ぎるだろう

きみは、もう何も言わなくていい
ぼくとの日々を忘れるくらい、幸せになってほしい
「好きだ」も「愛している」も
そんな台詞を欲しが

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