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ひとり 杏
2020年10月31日 23:02
ぼくの願いがあんたの願いを踏みつぶすと言うのならぼくの願いがあんたの願いを無視すると言うのならそれは、誰の願いでもないんだよぼくが幸せになったって、誰も不幸せにはならないんだ願っちゃいけないだなんて、誰が言ったのなんで石ころを食べちゃいけないのなんで早く寝なきゃいけないのなんで雨の日には必ず傘をささなきゃいけないのなんで虫を潰してはいけないのなんで静かにしなきゃいけ
2020年10月28日 00:41
↑前回のおはなし蛍光灯のひかりを落としてしまった瞬間キラッとぼくの目を刺したのはストーブのコンセントの先端の金属荒く、鋭く、二つの四角が輝いたの。あの、ねえ、今さらそんな目でぼくを見ないでほしいんだけれど。だってきみ、昼間のあの静かさはどこへ行ったって言うのさしんとして、まるで存在しないみたいに。一度だって、そんな乱暴に光ったりしなかったじゃあないの。そう眠れな
2020年10月24日 23:37
↑前回のおはなし。ひとりになりたいよ、たったひとりにかけがえのない、唯一にたったひとりになりたいよ、だからお願いそばにいてひとりぼっちに、なりたいわけじゃ、ないのよぼくを、きみにとっての、たったひとりにさせて鏡に映ったってひとり星を見上げてもひとりきみに、泣いてほしい[今日のおはなし] 好きな言葉は、ありがとうとどうしてです。座右の銘は、柔を以て剛を制す。
2020年10月20日 22:11
この蟻は、小さいのだろうかほんとにぼくより、小さいのだろうか腹が減って、眠れぬ夜は何度ありましたか背中について剥がれない塵芥に、押しつぶされそうになった夜はそんなとき、あなたは一体どうやってどんな息をして、朝を待ちましたか夜色の体、白昼の土を駆けていくその小さな肉体に太陽はジリジリ、子供らはドスンドスン「ああ、やはり、ぼくの方が」と言うこの痩せこけた巨人を御蟻様は、「
2020年10月17日 22:53
痛いときに痛いと言える勇気があればぼくは、空を飛べるだろうか立ち止まって、自分のこころに拍手を送れたら。花は、ぼくを咎めるようにぼくに問うように、揺れている。川は、ぼくを赦すようにぼくを誘うように、流れている。こんなに美しいものに囲まれてそれなのにぼくは、一度たりとも叫べない。「きみは美しい」叫べたら、ぼくは、空を飛べるかな本当に美しいものを見て、美しいと言いた
2020年10月13日 23:36
あなたの声が「幸せ」と動くたび、景色が一マスずつズレていく。わたしがあと少しいい子だったら、もう少しあなたのことを好きだったら二人の幸せはぴったり重なったのかな。あなたは嘘つき、それは知っていた、けれど気づかなかったこんなわたしを、それでもまだ「いい子」だと言うものね。煙なんか大嫌い、ごまかされるのは大好きあなたよ、このままいなくならないでこのまま消えていかないでただ、何事も
2020年10月10日 21:51
欲しい物なんかないのよオモチャ箱みたいなお店、ひっくり返したってそんなの誰だってくれるものわたしにだって買えてしまうもの同じもの、欲しくないそこにあなたはいない。他でもない、あなたの胸に、また帰って来たいと思わせて。ただわたしはあなたの、あなたの言葉を食べたい、あなたの時間もあなたの気持ちの動き回るのをこの口に注いで欲しいのよだから、ラブレターを頂戴な小さなお花がた
2020年10月6日 22:58
突然ごめんね、久しぶり。散々迷ったんだけれどやっぱりきみに、どうしてもきみに聞いてほしいものがあったから。今ぼくが暮らす街の秋はまるで冬の一歩手前、そう冬の赤んぼうのようでいったいいつまでいてくれるんだい、と毎日夕方には、風に問うてしまいます。そんなある日、雑貨屋で見たものは コスモス模様のハンカチ、のお隣。それは、売れ残りセール の印がついた一袋のひまわりの飴でした。
2020年10月3日 21:54
ぼくの皮膚の透明の膜はどうしたって剥がせなくて、ぼくらがどんなに抱きしめ合ったってぼくはきみに触れられない。かなしいことじゃないんだよ。ぼくらは近づき続けるんだそして、ぼくはきみの中に入れないままきみの心をすり抜けるだろうそして、すれ違って過ぎるだろうきみは、もう何も言わなくていいぼくとの日々を忘れるくらい、幸せになってほしい「好きだ」も「愛している」もそんな台詞を欲しが