詩11『冬の赤んぼう』

突然ごめんね、久しぶり。
散々迷ったんだけれど
やっぱりきみに、どうしてもきみに
聞いてほしいものがあったから。

今ぼくが暮らす街の秋は
まるで冬の一歩手前、そう冬の赤んぼうのようで
いったいいつまでいてくれるんだい、と
毎日夕方には、風に問うてしまいます。

そんなある日、雑貨屋で見たものは
コスモス模様のハンカチ、のお隣。
それは、売れ残りセール の印がついた
一袋のひまわりの飴でした。

どこまでも潔白でさっぱりとした秋の
足下に横たわった夏の搾りかす。
人は目をそらすでしょうか
ならば彼はいつまでここに残りましょうか

秋晴れ空に胸を張るコスモスではなく
横で埃を被るひまわりが
何かを叫ぶ声に
半時間は耳を澄ませていました。

散ることのできぬ苦しみを
日の元を去れぬ歯痒さを
秋のひまわりはぼくに叫んでいました。
「生き長らえてしまったよ」と。

秋だというのに夏の花を、愛でてばかりいる者は
まともな人 と呼ばれないでしょう。
それでもぼくは、やっぱりぼくは
自己を剥がせぬままであります。

小さく丸いオレンジ色を
舌で溶かして供養して
ぼくの成分がまた一つ増えました。
そんなオレンジ色の十月でした。

だからどうした、なんて言わないで
たったこれだけを、きみに知って、知ってほしかったのです。
相変わらずのぼくでごめんね。
許してくれなくていいんだよ。


[今日のおはなし]

学問に必要な、『うん』『どん』『こん』。最後になりました、『こん』とは、根気の『こん』だそうです。根性というほど極端でもないが、答えを急がずに根気強く付き合えつづける覚悟が、必要だそうで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?