詩09『秋の虚芯』

ぼくの皮膚の透明の膜はどうしたって剥がせなくて、
ぼくらがどんなに抱きしめ合ったって
ぼくはきみに触れられない。
かなしいことじゃないんだよ。

ぼくらは近づき続けるんだ
そして、ぼくはきみの中に入れないまま
きみの心をすり抜けるだろう
そして、すれ違って過ぎるだろう

きみは、もう何も言わなくていい
ぼくとの日々を忘れるくらい、幸せになってほしい
「好きだ」も「愛している」も
そんな台詞を欲しがる人に、言っておあげ

ただ、これから先、きみの肌が吸う全ての水を
足が踏む全ての草花を、口に入る全ての命を、
ぼくだと思ってほしい。
それだけでぼくは十分だ。

そのとき、きみのこころに生まれる震えが
ぼくにとって本当の言葉だから。
いつかきみが大人をやめた後、振り返ったとき
遠くで揺れる花たちの一つに、なりたいから。

[今日のおはなし]

虚芯(キョシン)。今日つくった言葉です。
無芯というより、虚芯。心の芯はなくなってしまったんだけれども、虚しさだけは、消えずに『ある』のです。もはや、虚しさが芯なのでしょうか。

学問に必要な『うん』『どん』『こん』。ひとつめの『うん』は、運。またの名を、運命です。ある発明や発見に出会えるかどうかは、やはり運命の引き合わせも必要だそうで。

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