詩13『そのあと、わたしを消してください』

あなたの声が「幸せ」と動くたび、景色が一マスずつズレていく。

わたしがあと少しいい子だったら、もう少しあなたのことを好きだったら
二人の幸せはぴったり重なったのかな。
あなたは嘘つき、それは知っていた、けれど気づかなかった
こんなわたしを、それでもまだ「いい子」だと言うものね。

煙なんか大嫌い、ごまかされるのは大好き

あなたよ、このままいなくならないで
このまま消えていかないで
ただ、何事もなかったかのようにここにいて
そして、わたしを消してちょうだい

ねえ、わたし、
ピーターパンに今からなるから、見ていてね。

あなたよ、ずっとここにいて
そして、わたしだけ消してください

かなしみは、声にならない
しあわせは、形にならない
見えないから、数えられない

あなたの得意なその煙で、わたしのことも苦く白く溶かして行ってよ

最後くらい、悪い男をしてよ


[今日のおはなし]

 宇多田ヒカルさんの『first love』を聴いていると、なんだか新しい詩が浮かんできました。気に入った。


↓前回の詩



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