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一括計上と費用按分〜経理現場あるある#3〜

こんにちは。公認会計士の大塚です。
今日も会計監査や経理現場であった事例をお話ししたいと思います。

一括計上じゃだめなんですか?

以前経理の現場でこんなやりとりがありました。
(月次決算をしている3月決算会社が前提です)

とあるシステム部の経理担当者(以下、シス担)
「大塚さん、ちょっと相談したいんですが今お時間いいですか?」

大塚「お疲れ様です!どうしました?」

シス坦「先日システム部の◯◯さんから、Aシステムのライセンスフィー(年間使用料、永久使用権ではない)120万円の会計処理をしておいてくれって頼まれたんです。
1月1日から12月31日までの1年間のライセンスフィーを1月末に支払う契約なんですが、◯◯さんは一括で1月に120万円全額を費用計上しといてくれと言っていました。
でも、払ったら全額費用計上ってちょっとおかしいですよね?
そういう会計処理をしちゃっていいのですか?」

大塚「よく気づいて相談してくれましたね。ありがとうございます。
おっしゃるとおりその会計処理はおかしいです。
今回のケースは1年間のライセンスフィーですから、正しくはライセンスの使用期間にわたって按分する必要があります。

具体的には月割り計算して、120万円÷12カ月=10万円/月となりますから、毎月10万円を費用計上してください。

ちなみに、4月から12月までの9ヶ月分は翌期の費用になりますから、3月決算の時には120万円÷12ヶ月×9ヶ月=90万円は前払費用に振り替えるという処理が必要になります。
経理部で決算手続きを案内をしますからくわしくは案内資料を見て、わからなければまた相談してくださいね。」

シス坦「やっぱりそうですよね。ありがとうございます!
決算の処理も必要なのですね、資料確認しまーす」

按分処理されない主な理由

私は経理実務や会計監査の現場で、上記のような事例に幾度となく出会いました。

費用を一括で支払い、按分処理が行われない主な理由としては、処理をする担当者が按分処理をする必要があることを知らない、理解していないからということが多いです。

今回のケースでは、ライセンス料は1年間そのシステムを使う権利を得ることの対価です。
そのため通常考えられる一般的な会計処理としては、費用を1年間にわたり期間按分します。

しかし、会計を知らない方からすれば
費用は按分しなければならない場合がある
という発想なんてないことが通常です。
「会計人の常識は他の方の非常識」であることを意識して経理実務を行うことが必要ですね。

悪意的なケースも・・・

一方で、こんなケースもあります。
たとえば、予算を使い切りたいからダメだとわかって費用按分をしないケースや、予算が足りないから全額翌期の費用にしてしまおうとするケースです。
これらは恣意的であり利益操作と言われかねませんからNGですね。経理パーソンはきちんと修正させなければいけません。

単純ミスや勘弁的にそのままとする場合もある

・本来按分処理すべき費用なのに、その内容を経理処理する担当者に正しく伝達されなかった結果、按分処理が漏れてしまった。

・経理担当者が決算時にまとめて必要な費用の按分処理をする予定でいたところ、なんらかの理由で失念し按分処理が漏れてしまった。

などなど、単純(複雑?)な事務処理漏れの結果、按分処理されないケースもあります。

また金額的重要性の観点から、少額の費用については按分処理をしないケースがあるのも事実です。
ただし明らかに少額であるケースを除き、ご担当の監査法人や顧問税理士さんと相談することをおすすめします。

費用の按分処理は手間がかかる

費用の按分処理は計上期間にわたって費用の繰延、戻入れ処理をするなど、継続的に管理する必要があります。そのため経理担当者の手間は一括処理する場合と比べて2倍にも3倍にもなる可能性があります

しかし決算時期などは伝票の処理期限は決まっているのが通常で、按分処理が増えても期限が延びることはないのが一般的でしょう。

一方で経理の仕事は正確性が求められますのでミスは許されません。

そこで、処理に利用するツール(エクセルファイルなど)を工夫する、会計処理の頻度を減らす、会計処理の時期を前倒しする等、可能であれば決算前に時間を使って考えてみてはいかがでしょうか
工夫次第で正確性とスピードを兼ね備えた作業の実現は可能だと思います。

まとめ

今回は費用按分をテーマに内容を少し掘り下げてみました。

経理パーソンの方は、費用の期間按分について、普段から社内の教育啓蒙活動を行うとともに、実際の会計処理では按分漏れがないかを意識的にチェックすることが必要ですね。
普段の継続的なチェックが決算業務の正確性、スピード維持にも貢献しますよ。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。


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