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小説

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#創作小説

SS『大阪駅の連絡橋口で。』

SS『大阪駅の連絡橋口で。』

三時を大きく回った駅は相変わらず騒がしかった。ひとが右から左へ、前から後ろへ、私の視界の中で十秒も存在しない。そんな中、私はずっと止まっている。通知のないスマホを気にしながら、通行者を眺めていた。
隣に座ったおばあちゃんが私に話しかけた。雑踏の中では聞こえないほど小さい声で、私に何かを言う。マスクの向こうにある口に耳を近づけて、やっと聞き取れた内容は、反対隣に座る女の子のことだった。
「寝てるん

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短編『消えた足跡』

【お題メーカーさんのお題】
 タイトル:『消えた足跡』
 僕らには普通のことだった。左足から家の外に出てはいけないし、山を歩くときは左耳を塞がなければならない。小さな集落だから学校は一つしかないけれど、クラスは一学年二クラス。でも、一組に生徒はいない。二組が村の子供たちだ。左利きの子はすべからく右利きへと矯正すべし。
 そんなルールをめんどくさいなんて思うことはなかった。当たり前で、ご飯を食べるよ

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短編『電車にて』

短編『電車にて』

【大学の事前学習の課題】
 原稿用紙10枚程度(本来は20枚。短編二作という選択)
 駄文になったので、提出せず。

 嫌な臭いがした、気がした。
そう思った瞬間に感じなくなった。今の臭いはいったい何だったのだろう。
人は向かいの席の両端にいるだけだ。ああ、そういえば、いつもの楽器を背負った女子高生はどうしたのだろう。いつもに増して少ない乗客と嫌な臭いは何か関係があるのだろうか。酔っ払いがいる

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SS『なおす人』

SS『なおす人』

【大学の課題】
 絵を見て描写。(著作者さんがわからないので勝手な使用申し訳ないです)

 僕らの仕事は人間の子供の遊び相手と言う仕事から逃げ出してきたおもちゃたちの修理、保護である。世界中の子供から逃げ出してきたおもちゃたちは彷徨ううちにこの森のYellowPeopleのもとにやってくる。その量は、年々増えてゆき、我々も二十四時間業務になっていった。
 おもちゃ一つ一つを丁寧に縫ったり、綿を詰め

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