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小説

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2020年12月の記事一覧

SS『大阪駅の連絡橋口で。』

SS『大阪駅の連絡橋口で。』

三時を大きく回った駅は相変わらず騒がしかった。ひとが右から左へ、前から後ろへ、私の視界の中で十秒も存在しない。そんな中、私はずっと止まっている。通知のないスマホを気にしながら、通行者を眺めていた。
隣に座ったおばあちゃんが私に話しかけた。雑踏の中では聞こえないほど小さい声で、私に何かを言う。マスクの向こうにある口に耳を近づけて、やっと聞き取れた内容は、反対隣に座る女の子のことだった。
「寝てるん

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短編『カミヲモヤス』

短編『カミヲモヤス』

【大学の課題】
キリスト教にまつわるレポートか短編小説を書けと言う課題。
▶️中編ぐらいに内容を濃くして再度書き直したらいいのでは?と兄に言われたので、今後書きたい。

 世界が滅んでもなお、地球は残っていた。すべての文明は途絶え、消え果て、その後長い時間をかけて自然が生き返った。人類なんてちゃちなものは存在しなくなっても問題なかったのだ。キーストーン種だとかで人間がいなくなったら生態系

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SS『記憶の前』

SS『記憶の前』

【大学の課題】
以下の6枚の写真から選んで創作。

 白い机の上に三枚の写真が並べられた。それらを置く指はすらりと長く、美しい所作を繰り出すには理想的なものであった。
 一枚目は、メンズスーツの半額セールの広告を見る高校生たち。白い雪が地面を覆っている。ガラスに映る空は曇天のように見えるが、彼らはマフラーや手袋などの防寒具をつけていない。
二枚目は、沈む手前の夕暮れと青く光る観覧

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