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部下が上司をマネジメントする会社

アメリカの、とある外資系企業に務める知人は悩んでいた。

彼は、その会社が提供するひとつのサービスのマーケティングの責任者(カントリーマネージャー)。

会社の意向を汲んで、彼が戦略を練り、営業やその他の部署のメンバーと連携して売上の達成を目指していく。そういう立場だった。

しかし、最近営業のトップに入社して来たメンバーとあまり反りが合っていないという。

「具体的に、どういう風に反りが合わないの?」

と聞いてみた。

彼曰く、

◉自分が考えたマーケティングプランを提示しても、いいのか悪いのかリアクションが返ってこない
◉営業トップが開く戦略会議に呼んでもらえない
◉営業トップなりの戦略がある、と言う割に、その具体的な内容が出てこない
◉営業トップが顧客にプレゼンする用の資料を作成していても、意見がコロコロ変わるし、具体的に何を作ればいいのか説明を聞いても理解できない

と言う。

その営業トップは、経営の経験もあるらしく、自分の判断に基づいて周りが動いて欲しい。全て自分からのトップダウンで進めたい。

という傾向があるらしい。

しかし、悩んでいる彼は、営業の部下ではない(違うライン)。しかも、マーケティングの責任者なので、営業トップとは同列の立場である。しかし会社の役職的には下のため、下手に出るようにはしているが、違うことがあれば違うとはっきり指摘するので、営業トップ的にもやりづらさを感じているのだろう、と彼なりに分析していた。

であれば、彼と営業トップとの関係性の問題だろうか、とも思ったけれど、実は彼のいないところで営業トップは彼のことを褒めていると言う。

謎は深まるばかり。

ただ彼としては、『戦略がなかなか固まらない』『彼以外にも、営業トップの言っていることが理解できない人がいる』などから自分の力がうまく発揮できず、悩んでいるといった具合だった。

アメリカの企業の評価はとても厳しい。

一例に過ぎないけれど、この会社では、毎年部署ごとに、評価低い社員(下位3%)を再教育し、それでも改善されない場合はクビにしているという。

とにかく結果に対してシビア。終身雇用ではないので、常にみんな崖っぷちにいる気持ちで仕事に取り組んでいる。ここは圧倒的に日本と違う。

そんな厳しい環境でもあるので、彼は『営業トップと反りが合っていないこと』、『自分の価値をきちんと発揮できていないこと』を彼のマネージャーに相談した。

彼のマネージャーは、彼を今のポジションに引っ張って来てくれた人だ。

「きちんと自分のバリューを発揮できていない気がしている。せっかく引っ張ってくれたのに、マネージャーには申し訳ない…必ず改善するのでもう少し時間が欲しい」

と伝えた彼。するとマネージャーは、

「私はあなたの上司だけれど、マネージャーではない。私があなたをマネージメントするのではなく、あなたが私をマネージメントするんだ

と答えた。

「・・・どういうことですか?」

「私は今までのあなたの実績を知っているし、周囲の人間のあなたに対する評価も把握している。その上であなたの能力が必要だから、今のポジションに呼んだ。

もし、その能力をうまく発揮できない環境があるなら、私は上司として働きかけるし、どうしても変えられない環境なら、もっと輝ける部署やポジションを紹介する。それが私の役割だから。」

彼はその言葉に救われた。

「部下が上司をマネジメントしなさい」

その言葉には、「上司をうまく使いなさい」の意味が込められていたという。

本来のマネジメントという言葉の使い方とは違ったかもしれないけれど、その外資系企業では、上司が部下のキャリアをサポートすることも求められている。

本人のスキルに課題があれば別だけれど、そうじゃない場合は、最高の環境を用意することも上司の務めであるという意識が徹底されていた。

それ以来、彼は「身近に応援してくれている人がいる」ということ、「いざとなれば別の部署という選択肢もある」という安心感から、まずは今の場所でもやれることを全てやりきる姿勢で頑張り直している。

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※マーケティングの彼目線での話しか聞いていないので、営業トップに問題があるような印象が強いですが、実際はわかりません。そこよりも、この会社の「上司としての姿勢」がステキだな、と思ったので、それを伝えるためのnoteでした。

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