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ことのはいけばな’22

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文藻の琳派たれ!7年を経てこの言葉に出会った。花立てるように歌も立てたい。 花と歌を同時に活ける。ローカル72候マラソン。 *歌つくり人の皮脱ぎほう法華虚
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花の座 伝芭

花の座 伝芭

 「伝芭」とは、『楚辞』「九歌」のうち“礼魂“の詩にみられる言葉。“礼魂“は、祭りが終って神を送る送神曲。願いが届き、その音信が届いたことを祝い、太鼓に合わせて巫女たちは手から手へと花を手渡し、受け取った花を持ってかわるがわるに舞う。美しい巫女たちは歌いながらゆったりとやわらかく舞う。それを「伝芭」という。巫女が伝芭する花は春には春蘭、秋には菊、それぞれ香り高く、人を清浄に清めてくれる花だった。

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ことのはいけばな’22 芒種 27候『梅子黄』

ことのはいけばな’22 芒種 27候『梅子黄』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

梅子黄/夏至

*短夜の雨に色づく梅の子のとろける餡のもろき皮裂け
*しとしとと梅の子に降るさみだれに頬つたふ子の涙おもほゆ
*生温き夜半の雨にもち重り堕ちた梅の子草に囚われ
*温かく傷もち熟す生命のもとのかたちの梅の子空に

2018夏至をリトアニアで過ごす

*夏至近き日永の

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ことのはいけばな‘22 芒種 第25候『蟷螂生』

ことのはいけばな‘22 芒種 第25候『蟷螂生』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

蟷螂生ず

*蟷螂の子らあわあわあわと溢れ落つスポンジ卵ちぢむことなく
*幼な子の首をつまみし蟷螂の鎌振り上げて捩らす腹見つ
*産みつけし断熱卵の雪予報切られた枝のかまきりかなし

七竈と枇杷を活ける

*七竈冬には赤い房の実も刺繍の玉の花つくさつき
*ななかまどひよどり啄む赤い

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ことのはいけばな’22 芒種 第26候『腐草為蛍』

ことのはいけばな’22 芒種 第26候『腐草為蛍』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

今日は言葉を束ねるという歌の作り方をしてみたい。活ける、立てるとはちょっと違う
赤坂氷川神社「はなのみち」にて夏至祭やジューンブライドの話をした。

*夏至祭へ明るさのままかがやいてジューンブライド花吉女咲う
*白百合もしもつけ花も五月晴れ未彩のみどり白に滲ませ
*芍薬の白無垢に

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ことのはいけばな’22 小満 第24候『麦秋至』

ことのはいけばな’22 小満 第24候『麦秋至』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

五月のおわり、東信濃のとある風景。雲のことづてをきく。

*浮雲のことづてのそら見上げてはおおきお山のなお空みちる

五月雨 夜の雨
*五月雨や夜降り込めておちこちにあをくみだせりしらべにならず
*渾々と泉湧きいでよみがえる黄泉平坂息も切らさず
*そのみづを長雨ているよりすべもな

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ことのはいけばな’22小満 第23候『紅花栄』

ことのはいけばな’22小満 第23候『紅花栄』


花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

「花の座 伝芭」を主宰している。
sansa座の第二回目は5月29日。主題は「あぢさゐ、芍薬、しもつけ」。
暦や襲の色目、歳時記に記される季語としての紫陽花、芍薬の歌についてゆっくり味わっていく。紫陽花にちなんで「青」について、ジューンブライドにちなんで「緑」の話も伝える。その

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ことのはいけばな’22小満 22候『蚕起食桑』

ことのはいけばな’22小満 22候『蚕起食桑』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

*鼓膜触れ起きたばかりのお蚕の眠れぬ夜は天井透かし
*ぬばたまの夜の帷のばりばりと桑の喰み音は底なしの沼
*射干玉の夜の帷をばりばりと桑はむ音の終わることなき
*昼となく夜となく食むお蚕のつぶつぶとして眠りへ堕ちる
*お蚕のましろき肌を砕かれし若き桑葉のいくらか染めて
*お蚕のま

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ことのはいけばな’22 立夏 21候『竹笋生(ちくかんしょうず)』

ことのはいけばな’22 立夏 21候『竹笋生(ちくかんしょうず)』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

そもそも「旬」という文字は「筍(竹の子)」の10日ほどの旬を言うらしい。また「旬」は『字統』によると雲から龍の尾が垂れている形とされる。瑞兆というものがそれほど尊く稀で、しかも瞬く間だということか。そのタイミングを見つけ、そして掴めるのかどうか、とてつもなく大事なことだったのだろ

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ことのはいけばな’22 立夏 第20侯『蚯蚓出』

ことのはいけばな’22 立夏 第20侯『蚯蚓出』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

*五月晴れ美々須出づるも土の中
*伸び縮み蚯蚓は濡れて土を喰む
*蚯蚓の緑雨の滲みた土を喰み
*おお蚯蚓虹色に塗る土の壁
*吸引のホースも蚯蚓のびちぢみ

*睡蓮もお玉杓子も発射台
*睡蓮のお玉杓子と待つその日
*蝌蚪はなれ睡蓮の花空をみつ
*睡蓮の眠りをキック蛙の子
*蛙の子つ

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ことのはいけばな’22 穀雨 第18侯『牡丹華』

ことのはいけばな’22 穀雨 第18侯『牡丹華』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

*ふらここや春を慰め酔いもせず
*ふらここの春の慰め少年忌

*ふらここの酔いどれ舟の牡丹花
*ふらここのほろよい舟や牡丹咲く

*ぼうたんのほろほろ酔ふて散りぬるを
*ぼうたんのほろ酔ひ濃きに夕まぐれ
*春宵やぼうたん融けて月昇る
*月の出にぼうたんはらり舞いあがる

*ぼうた

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ことのはいけばな’22 穀雨 第17侯『霜止苗出』

ことのはいけばな’22 穀雨 第17侯『霜止苗出』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

そうだ、もう霜が降りることも無くなって、緑はうるうるふくらんで肺活量を最大にし、花は一斉に歌うのだ。人も肺葉をふくらませ、彼らの精と混ざってしまおう。目を花に、皮膚を葉に、胴体を幹に、足は動く根に、一挙手一投足が五感そのものの木になろう。
 風と共にみどりなすからだが生まれる「あ

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ことのはいけばな’22  立夏 第19侯『蛙始鳴』

ことのはいけばな’22 立夏 第19侯『蛙始鳴』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

》へそ岩で 見下ろす棚田に 間も無く水が引かれるという

*水口のあたりでふたり雨蛙

*水を待つ草に並びて青蛙

*水音に頃合いかなとあまがえる

*雨がえるぴょんぴょん田んぼ待ちきれず

*青蛙卯の花影で深みどり

*あまがえる隠れ身の術破れ笠

*あまがえる遠い目をして食べ

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ことのはいけばな ‘22 穀雨 第16侯『葭始生』

ことのはいけばな ‘22 穀雨 第16侯『葭始生』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

百穀を潤す雨の降る季節。美し葦牙のくに。

*そこここでつのぐむくにや春惜しむ

*葦牙のももいろに降る穀雨かな
*「穀雨」とふ中華そば屋に抗えず
*葦の牙遠き岸辺につのぐみて

*ユーラシア春はめぐるも憂く暗く
*ウクライナ卯の花腐し黒い雨
*卯の花をかざしてみどりの邦おもう

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ことのはいけばな’22 晴明 第15侯『虹始見』

ことのはいけばな’22 晴明 第15侯『虹始見』

花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。

赤坂氷川神社さんの花手水。暖かくなって花もちが悪くなったけど、この速さはかなさこそ春の爆発、spring的だ。その飛沫ははるか先まで飛んでいき、虹となる。とか言っているうちに夏がそこまできている。

*虹空にはじめて見ゆる花万朶

*いくつもの虹おもいだす春土用

*行く春や千変

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