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まなかい ローカル72候マラソン

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まなかい… 行きかいの風景を24節気72候を手すりに 放してしるべとします。                                        万葉集        …
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#四季

まなかい;立冬 56候 『地始氷(ちはじめてこおる)』

まなかい;立冬 56候 『地始氷(ちはじめてこおる)』

温泉が恋しい季節に。

「凍る」は、「こる」で「凝る」とも語根が一緒。液状のものが寄り集まって固まるという意味であるという(『古典基礎語辞典』大野晋編)。趣味に凝るとか肩が凝るのも同じ。固まっているのだから、温めて解凍して、ほぐして気を通わさないと、ということで心も身体も凝固してしまったら、温泉に限る。

まあるい湯船のお湯にたっぷり何回も浸かる。お湯に浸っていると、古代の何か懐かしい感覚が目覚め

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まなかい;立冬55候 『山茶始開(つばきはじめてひらく)』

まなかい;立冬55候 『山茶始開(つばきはじめてひらく)』

「山茶」は中国では概ね「ツバキ科」を指すようです。同じツバキ科のお茶も古くから栽培されていたようですから、それに対する名前でしょうか。日本では山茶花(サザンカ)にこの字を使うことが多いですし、立冬前後から開花が見られ、紅葉と合わせて見ることができます。はじめの写真は箱根の庭園で撮ったものです。右側の明るい緑が山茶花です。歌い継がれていく命の歌は、前の命の残響のうちに溢れてきます。

国語の「つばき

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大暑;第36候・大雨時行(たいうときどきにふる)

大暑;第36候・大雨時行(たいうときどきにふる)

アニメ『サマーウォーズ』の舞台である上田小県(うえだちいさがた)の一隅で育った。夕立は夏の風物詩。雲が湧き、風が吹き、みるみる暗くなって激しく降る雨は今思い出すとドキドキする。そのあと虹が見えることがよくあった。ぽたぽたからぽつんぽつんへと、落ちる雨垂れにも虹が宿った。緑が光った。

ひとときの休息で地元の高原に急いだ。花の好きな母と高原の花畑を見るためだ。

高原は霧に包まれていた。しとしと雨が

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大暑;第35候・土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)

大暑;第35候・土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)

大暑 土用

土はますます黒くなる 

しかし 東京のど真ん中だと 土の上に立つことは ほとんどない

蝉の幼虫も アズマヒキガエルも アスファルトで轢死体になって よく見つかる

恵まれたことに 氏神様の境内にある小さな畑で藍を育てる機会をここ数年いただいている。

藍染に使う蓼藍だ。

今年は土も入れ替えて 被さって日陰を作っていた椎なども剪定してもらって明るくなった 肥料も概ねひと月ごとに与

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大暑;第34候・桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)

大暑;第34候・桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)

氏神さまの赤坂氷川神社には、徳川吉宗公が一ッ木にあったとされる氷川神社をこの地に遷座(1730年)して以来の拝殿が残っています。総欅造り、朱漆塗りの拝殿は、関東大震災や東京大空襲を奇跡的に免れて創建時のまま残っています。

正面の壁間には桐と鳳凰が描かれています(写真は赤坂氷川神社のサイトより拝借)。古来中国では、聖天子(徳のある優れた王)が即位すると、瑞兆である鳳凰が現れると伝えられてきたといい

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立夏;第20候・蚯蚓出(みみずいづる)

立夏;第20候・蚯蚓出(みみずいづる)

分解者の代表 蚯蚓。特にこの時期、彼らの役割を改めて思い出す。

場所は世田谷ものづくり学校。

ぽくぽくと土を耕してくれて、年々土は豊かになっていく。

人の手は最小限にしている都市では珍しい場所。足元に広がっている見えない営みが命を支えている。

蚯蚓もまた死んだら次の命の場所になる。

立夏;第19候・蛙始鳴(かわずはじめてなく)

立夏;第19候・蛙始鳴(かわずはじめてなく)

(写真は鹿島神宮の御手洗池横の菖蒲園。匂い菖蒲が植えられている。そこでザリガニ釣りに興ずる家族がいた。)

立夏。思い立って銚子まで車を走らせ、twitterを見て敬愛する能楽師の住まいだったところをなぜか見に行く。そこから鹿島神宮を廻って帰宅するというショートトリップ。コロナで高速道路も街もスカスカ。海を見たかった、、、のかも知れない。

着いたのは海鹿島と呼ばれる 南に犬吠埼灯台を臨む場所。か

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穀雨 第16候・葭始生(あしはじめてしょうず)

穀雨 第16候・葭始生(あしはじめてしょうず)

「豊葦原の瑞穂の国」

「美し葦牙」と謳われた風土を持つ列島。人が住み始めた頃は湿地がとても多かったのだろう。

葦 芦 蘆 葭、、、たくさんの漢字を当てられ、「悪し」に通じるというのを忌み嫌われてヨシ 蘆 葦、、、となる。ややこしいが吉原は葦原だったのだ。

茅(かや)とも呼ばれるから 地方によって芒やオギなど陸生のものも使われるが、一般に茅葺き屋根も多くは葦が使われた。

武蔵野といえば雑木林

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