Masumi Chiba

カラーリスト・色彩講師。好きなものは 本、映画、旅、ぬり絵、アート など。身の回りの素…

Masumi Chiba

カラーリスト・色彩講師。好きなものは 本、映画、旅、ぬり絵、アート など。身の回りの素敵な色を綴っていきます。これらの記事がみなさまの色に関する気づきやヒントになれば幸いです。 ブログ「色のトリセツ」https://color-masumic.blogspot.com も更新中。

最近の記事

大人の塗り絵/⑧ 私の中の神殿 自分を愛しむ塗り絵~2 音の神殿

全ページ塗りに挑戦中の「私の中の神殿 自分を愛しむ塗り絵」から3枚目の「2 音の神殿」を塗りました。 色選びの方法 私は、色塗りに取り掛かる前に大体の配色を決めておきます。頭の中で決めることもあれば、他の紙に色を並べてみて決めることもあります。 描かれているのが実在する物や風景の場合は、実際の色が大きなヒントになります。例えばゾウなら、リアルに仕上げたい時はグレーを選びます。そのグレーが一つの基準となり、ピンクの像、黄色の像と、全体のイメージに合わせて色を変化・発展させる

    • 大人の塗り絵/⑦私の中の神殿 自分を愛しむ塗り絵~1 光の神殿

      大野舞(デナリ)さんによる塗り絵本「私の中の神殿 自分を愛しむ塗り絵」の全ページ塗りに挑戦しています。前回の「0 源の神殿」に引き続き、今回は「1 光の神殿」です。線画には大きな太陽からの光を浴びてほほ笑む女性が描かれ、太陽や女性の衣服に描かれた模様がとても可愛い! 頭に浮かんだ2つのアイディア 「光の神殿」ということで「光」をイメージした時、2つのアイディアが頭に浮かびました。 1つは虹です。光をプリズムなどで分光した時に表れるスペクトル ― 虹色の色相グラデーション。

      • 大人の塗り絵/⑥私の中の神殿 自分を愛しむ塗り絵~0 源の神殿

        「せかいのお守り塗り絵」で大野舞(デナリ)さんワールドに魅了され、「私の中の神殿 自分を愛しむ塗り絵」も購入しました。こちらは人間の意識の底に建っている光、音、地、水などのエレメントを祀る神殿をイメージして作られた塗り絵で、神秘的かつ可愛らしい20の作品が収められています。 この塗り絵本を1ページ目から順番に最後の作品まで全ページ塗ることにしました。これまでは塗り絵本の中から気に入った作品だけを塗っていたので、私にとって1冊全部塗りは初めての挑戦で、少々修業的な感覚もあります

        • 大人の塗り絵/⑤ヴィクトリアン幻想図鑑~廃墟ワンダーランド

          黒イ森さんのぬり絵ブック「ヴィクトリアン幻想図鑑」から「廃墟ワンダーランド」を塗りました。 黒イ森さんのレトロフューチャーな世界 印象的なお名前の黒イ森さんは人気イラストレーターで、今風の可愛い少女とノスタルジックな雰囲気が魅力の作品を多数発表されています。このぬり絵ブックも、帯に「レトロフューチャーな世界へ誘うカラーリングブック」とある通り、黒イ森さんの世界が繊細な線画で展開されています。 その中から今回選んだ「廃墟ワンダーランド」には、草原の廃墟をバックに美少女戦士

        大人の塗り絵/⑧ 私の中の神殿 自分を愛しむ塗り絵~2 音の神殿

          大人の塗り絵/④せかいのお守り塗り絵~エウロパの魔女

          今回もお気に入りの塗り絵本「幸せを呼ぶ せかいのお守り塗り絵/ 大野 舞(デナリ)」からの1枚です。 「エウロパ」って、どこ? 以前に記した通り、この塗り絵本は世界中のお守りや魔除け、幸運を呼ぶシンボルなどを、おおまかな地域ごとにまとめた作品で構成されています。 「エウロパ」がどこか分からずネット検索してみると、出てくるのは木星の衛星であるエウロパの情報ばかり。検索を続けると、エウロパとはポルトガル語でヨーロッパを意味することが判明。さらに、絵に描かれた「ガロ(雄鶏)」は

          大人の塗り絵/④せかいのお守り塗り絵~エウロパの魔女

          大人の塗り絵/③せかいのお守り塗り絵~ケルティック・ラビリンス

          前回の「息づくオセアニア」に引き続き「幸せを呼ぶ せかいのお守り塗り絵/ 大野 舞(デナリ)」から2枚目の塗り絵です。 ケルト、ラビリンスと言えば… 作品タイトル「ケルティック・ラビリンス」通り、線画には迷路のようなケルト文様が描かれ、その中に少女、ドラゴン、ユニコーン、妖精、蹄鉄、などが配置されています。 「ケルト」と聞いて私が一番に連想するのはやはりケルト文様です。それも石(石板)に刻まれ風化した、少し寂しげな情景が頭に浮かびます。また、「ラビリンス」で思い出される

          大人の塗り絵/③せかいのお守り塗り絵~ケルティック・ラビリンス

          大人の塗り絵/②せかいのお守り塗り絵~息づくオセアニア

          イラストレーター 大野 舞(デナリ)さんの「幸せを呼ぶ せかいのお守り塗り絵」の中から1枚を塗ってみました。 大野さんワールド 大野さんの作品で真っ先に思い浮かぶのは、クラフトビール 水曜日のネコの缶のイラストです。(思わずパケ買いしました。)星野リゾートの広告等も素敵です。また、スピ系のお母様との生活を描いたコミック「スピリチュアルかあさん」の著者でもあり、最近は大野さんのイラストによるタロットカードも発売されています。 「せかいのお守り塗り絵」は、大野さんがライフワ

          大人の塗り絵/②せかいのお守り塗り絵~息づくオセアニア

          小説の中の色 #9 永谷園のお茶漬け袋の色

          学生時代、学校で一番可愛い女の子にそう言われた主人公の恋愛遍歴を描いた小説「死にたい夜にかぎって」。ユーモア満載で、笑いながら読みましたが、面白いだけでなく、主人公の愛と優しさがじんわりと伝わってくる暖かい作品です。 個性的な彼女のダイナミックな色使い主人公がネットで知り合い、リアルで一目惚れし、一週間後に一緒に暮らし始めたアスカは、変態に唾を売って生計を立てていたちょっと変わった女の子です。 ヘビースモーカーのアスカが愛用している自作のプラスチック製たばこケースもかなり

          小説の中の色 #9 永谷園のお茶漬け袋の色

          小説の中の色 #8 野暮ったいセーターのような灰色/「ザリガニの鳴くところ」

          2021年本屋大賞・翻訳小説部門で第1位となった 「ザリガニの鳴くところ」は、家族に見捨てられた少女カイアが、たった一人湿地帯で生き、やがて殺人事件に巻き込まれるミステリー小説です。ストーリーだけでなく、彼女を取り巻く自然の風景や動物たちが非常に繊細に美しく描写されている点が大きな魅力です。例えば…。 大アオサギの羽の色合いだけでなく、湿地帯の風景ごと目に浮かび、静けさまで伝わってくるようです。このような描写がいくつも見られる中、印象に残ったのがこちらの表現です。 二つの

          小説の中の色 #8 野暮ったいセーターのような灰色/「ザリガニの鳴くところ」

          大人の塗り絵/①リカちゃんぬりえ

          日本ではこれまで2度の塗り絵ブームがありましたが、まだまだ認知度の低い「大人の塗り絵」。リラクゼーションやヒーリング、そして脳トレ効果もある「大人の塗り絵」をもっと知っていただきたく、私の作品で恐縮ですが、ご紹介していきたいと思います。 「大人の塗り絵」と言いつつ、1作目は子供向けの「リカちゃんぬりえ」です。デパートの文具売り場で見つけ、思わず購入してしまいました。お値段は税込275円。小学校低学年の頃ぬり絵が大好きで、こういう図柄のぬりえをよく塗ってました。懐かしさ満点で

          大人の塗り絵/①リカちゃんぬりえ

          小説の中の色 #7 「灰色」と「鼠いろ」/「命売ります」②

          前回の記事の「にんじん色」に引き続き、三島由紀夫さんの「命売ります」から印象的な色の表現をご紹介します。 「灰色」と「鼠いろ」、色名の通り灰色は灰の色、鼠色はネズミの体毛の色ですが、多くの人がザックリとした感覚で「 灰色=鼠色=グレー」と捉えていると思います。そこを書き分けているのが面白いところです。 灰色と鼠色はどう違う?JISの規格では、どちらも中くらいの明るさのグレー(ミディアムグレー)で、灰色の方が鼠色よりも若干暗い色です。二色並べて比べれば違いが分かりますが、一

          小説の中の色 #7 「灰色」と「鼠いろ」/「命売ります」②

          小説の中の色 #6 にんじん色/「命売ります」①

          「命売ります」は三島由紀夫作品の中では異色と言えるエンタメ作品で、色の捉え方もなかなかユニークです。この作品で思わずメモした2つの色の表現のうち、今回はにんじんの色について取り上げます。 だいだい色は田舎臭い?色にはそれぞれポジティブなイメージとネガティブなイメージがあります。「田舎くさい」というのは、もちろん後者ですね。本文では大きらいなにんじんの色をネガティブ・イメージで修飾しながら、「黄いろっぽい赤」と表現しています。 「黄いろっぽい赤」は、言い換えれば「だいだい色

          小説の中の色 #6 にんじん色/「命売ります」①

          小説の中の色 #5  祖母の布巾色/「猫を抱いて象と泳ぐ」

          両隣の建物に押しつぶされそうな小さく古びた家で、祖父母に育てられた主人公が語る、祖母が片時も手放さなかった布巾の描写が印象的です。その布巾は、元はどこにでもある白地に小花模様が描かれたコットンの布巾でしたが、祖母の涙も、汗も、鼻水も吸い込んで、身体の一部のようになっていて、洗濯されることもありませんでした。 どんな絵の具でも出せない色合いお年寄りの肌の色を思い浮かべてみました。 個人差や身体の部位による違いはありますが、ベースはグレーを含んだベージュ系の色で、部分的に薄い茶

          小説の中の色 #5  祖母の布巾色/「猫を抱いて象と泳ぐ」

          小説の中の色 #4  かた焼き煎餅色/「日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」

          お茶を25年間習い続けた中で感じたことや、気づき、学びを綴ったエッセイ「日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」の中から、著者が近所に住むお茶の先生の武田さん宅を初めて訪れた時の描写です。 「かた焼き煎餅」と聞いて連想するのは、何と言っても醤油煎餅。 醤油に浸し、火で炙ることから生まれる深い赤みの橙色、表面の凹凸によりできた濃淡、そして豊かな艶が目に浮かびます。 また、煎餅に例えることで、和風の印象を受けます。同様の色でも「カラメル色」と表現すると、一気に洋風な雰

          小説の中の色 #4  かた焼き煎餅色/「日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」

          小説の中の色#3 コーヒー牛乳色とミルクティー色/「ふがいない僕は空を見た」「羊と鋼の森」

          濁った川の水を見て、コーヒー牛乳を連想する。 ミルクティーを見て、濁った川を連想する。 コーヒー牛乳の色とミルクティーの色は、ベージュ系の暖かみのある優しい色で、牛乳を含んだ濃密な質感も濁った川の水とよく似ています。この二色を比較するならば、物にもよりますが、コーヒー牛乳色の方がわずかに黄み寄りで、ミルクティー色は赤み寄りでしょう。 最初の引用の「ふがいない僕は空を見た」では、大雨により水かさと速度を増した川の流れに、コーヒー牛乳という日常的かつ平凡な物を思い浮かべる点

          小説の中の色#3 コーヒー牛乳色とミルクティー色/「ふがいない僕は空を見た」「羊と鋼の森」

          小説の中の色#2 暖色と寒色/「漁港の肉子ちゃん」

          今回は、西加奈子さんの作品の中で私が2番目に好きな作品「漁港の肉子ちゃん」から色について取り上げます。 肉子ちゃんがいない部屋は、寒色になる。肉子ちゃんが置いている、ださくて派手なものは変わらずあるのに、オレンジや赤や黄色がなりをひそめて、代わりに、青や紫や黒が、幅を利かせ始めるのだ。(西加奈子「漁港の肉子ちゃん」より) たった一人の家族である母親の肉子ちゃんが出かけた後、小学5年生の喜久子ちゃん(通称「キクりん」)は一人で過ごす室内の色をこう表現します。 暖色と寒色暖

          小説の中の色#2 暖色と寒色/「漁港の肉子ちゃん」