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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2017年11月の記事一覧

短歌 風邪 十首

短歌 風邪 十首

熱を出し寝込む私のことよりもお粥の塩味を気にする君

こころにも時計がかけてあるらしく寂しくなるとハトが飛び出す

いつだって一緒にいたいという君の願いを引き裂く特急列車

眼に映る世界は美しいほど恐ろしくあるのだろうか 信じたくない

君が爪を噛むから冬がきてしまう問答無用で悲しくなれる

BGMならマンボかボッサでお願い さよならくらいリズムに乗って

日々のことを綴っ

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短歌 冬のはじまり十首

短歌 冬のはじまり十首

寒いより寂しいが勝っているとまだ貴方には伝えられない

強がりは積もれど雪にならなくて遠くで白が手を振っている

背中から羽が生えても安心だ 君が残らず毟ってくれる

いま君が隣で風邪をひいていることが実は嬉しいなんて内緒だ

クリスマスソングまみれの街に落つ天使はマッチに希望を灯す

錆びついた路傍の鍵に冬を見る 君は確かにここにいたのに

冷え切ったトーストにのせたママ

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短歌 六本木 十首

短歌 六本木 十首

ビル群に埋もれて泳ぐ僕たちの明日は西陽に溶けて消える

この街に拒絶されても大丈夫 帰る家なら西にあるから

君を待つ日々にかじかむつま先のペディキュアはまだ夏を見ている

検体の呼吸を聞いたことがあり私の一部だったと叫ぶ

六本木ヒルズを歩くだけなのに自分に嘘をついてるみたい

知りません 知りませんったら知りません ホントに何も知らないんです

ハンバーガーってワンコイ

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短歌 ココア 十首

短歌 ココア 十首

繰り返しお伝えします この僕は君の前では嘘がつけない

寂しいと呟くことが寂しいとホットココアに溶けてく言葉

ため息も白くなってく霜月のドアの向こうに君が待ってる

いつのまに育った気持ちだったのかわからないのは寒さのせいだ

宝くじなんて買わないそれよりも300円でスタバに行こう

もう一度お願いします 肝心なところがうまく聞こえなかった

これからはおやすみなさいの挨

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短歌 未来 十首

短歌 未来 十首

さかさまの夕焼けを見た帰り道 たぶん僕らは無敵だったね

小さな手 握り返したぬくもりを忘れてしまう仕組みが憎い

手放した記憶たちがまた居座って青春のやり直しをさせる

退屈な質問をしてすみません 私のどこが好きなのですか

いっせーのせって言ったら笑ってね 練習がいるなら教えてね

透明な仮面を幾重にも重ねドーランを落とせなくなりました

魂が宿るところをご教示を そこ

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短歌 ほっと 十首

短歌 ほっと 十首

いい加減私の気持ちに気付いて そして隣で天気を当てて

未来ならフリーハンドに描くから軌道に貴方を必ずのせて

暗闇の中にいるからこそ光る君の絶望は宝物だ

目を閉じてひとりっきりのフリしてもまぶたの裏であなたは笑う

雨が降る予報が雪になったから今から逢いに行っていいかい

ヒロインになれなくたって大丈夫 一人ひとりにステージがある

遺言が織り重なって本となり君の本棚に

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短歌 ゆるす 十首

短歌 ゆるす 十首

簡単に愚か者は牙を剥くけど君は微笑み全てを許す

この先は静かにしてて二番線で特急列車が泣いているから

赦しとは傷を手放しあやすこと 痛覚さえも我が物にして

結ばれる糸の色がなんで血と同じなのか考えてみよ

嗤うより嗤われることを選ぶ人が誰より何よりも愛しい

傍観者という名の共犯者は意味がないから早めの帰宅を

屈辱を糧にできれば儲けもの さあさ笑えよそれだけラッキー

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短歌 秋の残滓 十首

短歌 秋の残滓 十首

かけっこは今も苦手だ欲しいものに手が届きそうで届かない

友達と一緒にされて立つ腹も恋の一部とわきまえなさい

夢なんてもう見れないと泣く君の手を温めることを夢見る

アイルビーバックと残して去る人にアイドンウェイトの走り書きを

明日を待つ日々を重ねて降る星の瞬きよりも懐かしい君

オリオン座 脅かさないでわかってる 君がナイフを隠し持つこと

叶わない願いは火曜 燃えるごみ

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短歌 晩秋の傘 十首

短歌 晩秋の傘 十首

のど飴の優しさを知る晩秋にほんのりと死に近づいてみる

思い出よ 積もれ積もれよ落ち葉より軽いからなお悲しさも増す

嘘つきも人が恋しくなるらしくぬくもりのためまた嘘をつく

雨やどりしていいですか今日きっとあなたのために私泣くから

せせらぎを眼下に走る箱根路の渋滞すらももはや嬉しい

風船を手放した日に少年が耳にしたのは「じゃあねバイバイ」

夕映えにインスタ映えを重ね

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短歌 寒い日 十首

短歌 寒い日 十首

雨降りを知らぬあなたのあどけなさ 守り抜けると信じた過日

心ない言葉には耳を貸さないでどうぞ私の歌に浸って

街路樹が見届ける秋 美しさは寒さのことと知っていたのか

青になり誰も渡らぬ交差点 もう歩けない 歩きたくない

救急車のサイレンにすら怯えてはやがてくる日を待ちわびている

穿たれた紅茶のシミに気を取られ君が泣くのに気づかなかった

「誰も皆」から外れた外された

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短歌 熱 十首

短歌 熱 十首

柔らかい熱持つ肌に触れるのが罪になること伝えておくね

好きな色の花を探しているけれど手に入ったらば枯らしてしまう

憂鬱はお湯をかけると白くなる 冬の吐息がそうあるように

身勝手をちゃんと叱ってほしいのに微笑むだけのあなたはずるい

あの人は素数を数えるのが趣味で最近真理の近くに越した

群れ骨も風邪をひくのは本当だ だから誰もが寂しい魚

「ありがとう」を伝えられずに冬が

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