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言葉の表現力を豊かにするには? エッセイ#45

小説を読むことは、私にとって言葉の表現力を豊かにする方法の一つです。

読み終わったあとの、余韻に浸るひと時は、特に好き。

小説で描かれている世界に遊びに行って、

ふっと自分の人生に戻ってきたみたいな感覚。

そして、その余韻に浸りながら、

「活字のみ」で、

その小説の世界に引き込んで没頭させてしまう、

小説家の言葉の表現力に、ひしひしと感銘を受けるのです。

小説は、読んでいて純粋に楽しいのと同時に、

情景や、音、匂い、心の揺れ動きまで、

瞬時に想像させてしまう、小説家の言葉の表現力に触れられるから、

さまざまな美しく鮮やかな表現をインプットできて、

自分の言葉のパレットの中に、新しい色が追加されて、色彩豊かになっていく。


最近読んで大好きになったのは、

森沢明夫さんの「おいしくて泣く時」という小説。

たった今、パッと開いたページに、こんな一節がありました。

夕立だ。
幾千万の銀色の糸で、窓の外の風景がぼんやりと霞む。
わたしは子どもの頃から、雨が嫌いじゃない。
雨音も、水の匂いも、やわらかくにじむ世界の彩りも、毛羽立った心を落ち着かせてくれるから。

「おいしくて泣く時」より引用 P.93

私も雨の日が好きだから、なおさら、心に残った一節。

降りしきる雨粒を、

「幾千万の銀色の糸」って表現するのかぁ…

とか、

窓越しに雨でぼやけた景色を、

「やわらかくにじむ世界の彩り」と、描写するのかぁ…

とか、その言葉選びの美しさと、

瞬時に、読者の目に情景を映してしまう、表現力に感動が止まらないわけです。

「毛羽立った心を落ち着かせてくれる」

なんと秀逸な表現なんだろう。

そんな風に、この小説は、

言葉で彩り豊かに表現される世界観や、

中学3年生の主人公の繊細な心の機微、

主人公を取り巻く大人たちの懐深い温かなキャラクター、

思わぬ展開のストーリーに、引き込まれてしまうわけなのですが、

森沢さんの小説にはその先がある。

だから、私は森沢さんの小説が好きなんだろうなと思うのです。

それは何かっていうと、

森沢さんの小説は「あったかい」のです。

今回読んだ「おいしくて泣く時」も、

読み終わったとたん、あとからともなく涙がこぼれ落ちてきて、

衝撃的で感動的な結末だったのは、もちろんなんだけど、

これほどまでに涙が溢れてくる理由は、言葉にならないんですよね。

この小説を通じて、

じんわりと伝わってくる「あったかさ」が、胸に沁みて沁みて、たまらないのです。

言葉から伝わる、

言葉を超えた「あったかさ」。

森沢さんの作品に触れると感じる「あったかさ」が、

私の心の琴線に触れて、こんなに涙が溢れてくるのだと思いました。

「作品」って、触れると感じるエネルギーがあると思う。

小説もそうだし、エッセイも、絵画も、音楽も、ダンスもetc… さまざまな形の作品があると思うけれど、 

その作品を創った人の、人となりや、込められた想いや、愛情、

つまり、エネルギーは、伝わると思うのです。

noteは、文章で作品をつくっている人が多いけど、

そこに並んだ活字からも、書いている人の人となりとか、魅力とか、文章の温度感とか、

なんか文字を越えて伝わってくるものってあると思いませんか?

だから、

私の文章を読んでくれた人、

私の言葉に触れてくれた人に、

言葉を通して、

でも、

言葉を超えた「あったかさ」を感じてもらえるような、

エッセイストになりたいなぁと。

そんな風に思いました。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました😊

最後まで読んでいただき、ありがとうございます♡