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書評

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#恋

宇山佳佑(2018)『この恋は世界でいちばん美しい雨』集英社



人は変わりやすい、良くも悪くも。環境が変わるたび、心の中に新しい感情がふつふつと湧いてきて、これまで絶対だと思っていた気持ちも色合いを変えてしまう。それでも、失ってはいけない気持ちが、僕たちにはあるのだろうか。

バイクの免許欲しいなと思っていましたが、やっぱり怖いなと思っちゃいました。冗談です。生きるなら、誰かを傷つけないように生きたい。人間が、そこまで生きたいと願う生き物であるのなら。

蒼井ブルー(2016)『君を読む』河出書房新社



例えば誰かを想って切なくなる気持ちとか、誰かと一緒にいて幸せだなと思う気持ちとか、そういう心の働きっていったい何のためにあるのだろうかって考えてみようとはならなくてもいいと思う。

もしかするととても無機質な答えに辿り着いてしまうかもしれないから、時には考えるのをやめて、ただ、心のままに行動してみるのもいいのかもしれない。白いまばゆいその気持ちを掌で包み込むようにして。

畑野智美(2015)『海の見える街』講談社文庫



真っすぐに生きようとする人が、真っすぐに生きているようには見做されない世界が広がっていて、それでも誰にでも運命の人はいるんだなって勇気をもらえるような作品。この暖かさは母なる海の温もりかな。

一人ひとりが抱える「過去」というものが、自然と付き合い方の濃淡を決めているのだろうけど、それが私たちには見えなくて、なんでこんな目隠しゲームなのと思わずにはいられない、けれど何も悪くはないんですよね。

住野よる(2018)『青くて痛くて脆い』角川書店



人に関心を向けられるということが、如何にその人の心に大きな力を加えるのかが痛いくらい良く描かれた一冊。うれしんだよ、人間って。あなたという私とおんなじ人間が、私に語り掛けてくれるその事実だけで。

寡黙な男の子に、元気な女の子が近づいていくお決まりの構図。この世界、男だったら不機嫌そうにしてればモテんのだろうか。羨ましい。。。あとはあれかな、あっという間に時間って経っていくけれど自分の心の周り

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トルストイ著=木村浩訳(2012)『アンナ・カレーニナ(上)』新潮文庫



愛と人間生活の物語である。仕事と家庭と、夢と現実と、そして希望と絶望の美しいまでものコントラストに胸が苦しくなる。頭では分かっていても、心が動くのは止められない。世界と人間とはそんなものであるし、そんなものではないとも思わせてくれる。

生活はまだ連綿と続いていく。これから先どのようなことが起きるのであろうか。分からないけれども、少し楽しみにしておこう。(中巻に続く)