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10年、20年、30年、売り継がれる書籍をつくるには/編集者の言葉#16

みすず書房といえば『夜と霧』(V.E.フランクル)、『生きがいについて』(神谷美恵子)、『野性の思考』(クロード・レヴィ=ストロース)はじめ、数々の名著を出版している出版社です。その創業者・小尾俊人さんの言葉をヒントに、ロングセラーを編集するためのコツを書いてみました。

流行現象を追っていると足をすくわれます。それでは所詮、二番煎じしかできません。

『本は生まれる。そして、それから』

私たちはつい流行を追って本をつくろうとしてしまいがちですが、みすず書房の創業者たる小尾さんは、それでは二番煎じしかできないと言うのです。何十年と売り伸ばすロングセラーを輩出している出版社を束ねているだけあって、その言葉には重みがあります。

では、どのように本をつくっていくのでしょう。小尾さんは述べます。

はじめの原点、あるいは思いつきが1つの書物にまで成長するためには、編集者の心のなかでの対話―――これでよいか、否々、こうではどうか、否々、そうした否定作用、大いなる肯定を目差す緊張をもった否定作用をつうじて、モチーフはだんだんとかたまってゆくわけです。

『本は生まれる。そして、それから』

そしてモチーフがだんだんとかたまっていけば、錬金術師が金を精錬するがごとく、原稿を何度もブラッシュアップしていきます。そうやってついに、一冊の書籍がこの世界のなかに誕生します。

そうして生まれた本により「世界は、この事物が加わることによって変貌し、かつ拡大するのであります」と述べておられます。なんだかすごいですね。

こうしてうまれてきたのが先に述べた名著たちです。

本のなかには内容が薄っぺらで記憶の端にも残らない本から、読み応えがあって何度も読み返したくなる本があります。何度も読み返したくなる後者の本は、小尾さんのおっしゃるように、編集者の心の中での対話がしっかりなされたうえで、著者の方に執筆をお願いしているのではないでしょうか。

そのうえで何度もブラッシュアップがなされて生み出される。だからこそ、みすず書房の書籍は、10年、20年と売れ続けるロングセラーになるのではないか。小尾さんの言葉を読んで、そんなことを考えました。

最後まで読んでくださりありがとうございました。
よい一日を!


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