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小山陽子
2023年10月18日 01:37
美味しいご飯の出てくる小説が好きだ。田辺聖子さんの小説「鏡をみてはいけません」は、主人公・中川野百合(のゆり)が朝食を作っているシーンから始まる。野百合は、小鳥の啼(な)き声の入ったテープをキッチンに流しながら、口笛を吹きつつトマトをむいてる。テレビのニュースはつけているけど、音声をほとんど絞っている。そこへ十歳の男の子・宵太(しょうた)が降りてきて、まだよく知らない同士の二人は、礼儀正し
2023年10月8日 09:31
夢やあこがれは青春時代に培われる。その源は、永遠に尽きることのない泉のように、こんこんと湧き出て心を潤してくれるものだ。夢を燃やし続ける人は強くやさしく、自分の心に正直で、また周囲への思い遣りにも溢れている。そんな人と人が出会い与え合い、作り出してきた時代の流れは、連綿と私達の住む「今」までつながっている。私は先人の財産を知らないうちに譲り受け、享受している。長々とすみません。この本を
2023年10月1日 16:13
紙の本が好きだ。年季が入り、少しくたびれて茶色くなった裸の文庫本が手に馴染む。ページを捲り、整列した文字に目を落とすと、たちまち本の中に引き込まれる。読むことはおもしろい。少しずつ、確実に文字を追ってゆく。「生きている」と感じる言葉に触れると心が踊る。小さな頃から何度も開いた本は、読むたび私に「生きている言葉」を教えてくれる。それは自分の大切な柱となっていく。「赤毛の