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理系大学生の本棚紹介

1. はじめに

 
 こんにちは、伊藤です。今日は流行にのって、本棚紹介をしてみることにします。本棚を紹介するとともに、思い出の本なども紹介していくので、お気に召したらぜひ読んでみてください。
 お品書きは以下の通りになります。


 それでは、よろしくお願いします。

2. 小説など

 最初は、文庫本や新書(+全集)が入っている本棚を紹介します(一部小説じゃないものや、漫画本が入っているところは見逃してください)。

小説コーナーその1
小説コーナーその2
小説コーナーその3
小説コーナー4

2.1 トーマス・カリアー「ノーベル経済学賞の歴史 上・下」 筑摩選書


 最初から小説ではない本を紹介するのはどうなのかな、と思いますが、そこは見逃していただけると助かります。
 この本は、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者がどのような学生時代を過ごしていたのか、また、彼らが経済学の政界に及ぼした影響がどのようなものであったのか、といったようなことが詳細に語られています。著者トーマス・カリアーさんの知識量に驚かされるばかりです。特に私が彼の知識に驚かされたのは、トピックスが時系列順に組まれているわけではなく、学問分野で組まれているという点です。もちろん経済学にある程度精通した学者であれば、一定以上の知識をどの分野に関しても有していることでしょう。しかし、この著者はまるで経済学のすべての知識を有しているがごとく、非常に丁寧な解説がすべての分野で展開されています。この本を読むだけで、経済学に関して全くの門外漢であった私も、ある程度の知識を得ることができましたし、「経済学」という学問を俯瞰して眺めることができました。
 間違いなく、お勧めできる一冊です。経済学に興味があるけど、どんな本から読み進めたらいいのかわからない、などといった悩みを抱えている方は是非読んでみてください。

2.2 綿矢りさ「かわいそうだね?」 文芸春秋

 私が大好きな作家さんである、綿矢りささんの作品です。「生のみ生のまま」以外は読みました(現在上巻をbookoffで探索中です)。その中でも特に私が気に入っている作品が、この「かわいそうだね?」です。
 私が特に気に入っているのは、「亜美ちゃんは美人」という短編小説の方です。さかき、というキャラクターが主人公なのですが、私は彼女の性格?考え方がとても好きです。詳細は以前

こちらの記事の4番目で解説したので、ぜひ読んでみてください。
 ちなみに、題名の「かわいそうだね?」という作品もとても面白いので、それ込みでお勧めできる本です。

2.3 谷崎潤一郎「細雪 上・中・下(谷崎潤一郎全集 愛読愛蔵版 第十五巻)」 新潮文庫(中央公論社)

 
 名作で、私が最も好きな小説です。特に哲学的なメッセージがこめられているわけではない(と個人的に)思っていますが、なぜかとても気に入っている作品です。もうパブリッシュドメインになっているので、上のリンクを押すか、青空文庫で検索していただければ無料で読めます。
 初めて読んだのは、受験生の時でした。800ページくらいあってとても長い小説なので、読み終わるには5か月くらいかかった覚えがあります(受験生で勉強に時間を割いていたことも、読み終わるのに時間がかかった一因ではあると思います)。しかし、これぞ谷崎大先生の力なのでしょう、まったく退屈することなく、どの章も楽しんで読むことができました。私は、中だるみをするので長編小説があまり好きではないのですが、この本は別格でした。また、蒔岡家の船場言葉による会話がとても癖になります。二度目にこの小説を読んだとき、幸子や妙子の会話にとても安心感を覚えました。実家のような安心感というのは、このようなことを言うのだろうなと感じたのを覚えています(私は関東生まれ関東育ちですが(笑))。加えて、これは谷崎文学すべてに共通して言えることですが、情景描写が抜群にうまく、まるで四姉妹が目の前にいて生きているかのような錯覚に陥ります。これも、読み返したときに安心感を覚えた一つの理由だと私は考えています。
 無料で読める名作ですから、ぜひ読んでみてください。

2.4 川端康成「掌の小説」 新潮文庫

 日本で初のノーベル文学賞受賞者、川端康成先生の作品です。個人的には、川端先生は長編よりも短編の方がよいものを書くな、という風に感がています。
 この「掌の小説」は、そんな川端先生の短編集です。100編以上のお話が入っていて、とても読みごたえがあります。1年生前期の間は、この小説をいつもポケットに入れて登校中に読んでいた記憶があります。私が特にこの小説の中でお勧めしたい話が「五十銭銀貨」です。短い話であまり書くとネタバレになってしまうため、ここでは詳細な紹介を控えます。しかし、短いながらも非常に味わい深い作品であり、とてもア高い気持ちになる、何度も読みたくなる作品です。
 もちろん、この「五十銭銀貨」以外にも面白い作品はたくさんあり、その中にはセンター試験に出題されたようなものも含まれています。ぜひ、読んでみてください。

2.5 福永光司「荘子」 朝日文庫

 福永光司先生の「荘子」も非常にお勧めできる作品の一つです(朝日文庫の版はもうネットで新品が販売されて否ようなので、講談社学術文庫で復刻されていたURLを貼っておきます)。ただ、万人にお勧めできるかと言えば私は自信をもって「はい」とは言えません。
 なぜ私が岩波の「荘子」や中央公論の「荘子」挙げず、朝日の「荘子」をお勧めの本に挙げたのか、というのはちゃんとした理由があります。私が最初に漢文から和訳された荘子を読んだのは、中央公論社から出版されていたものです。この本は中立的な本で、それほど森先生の思想?のようなものが解説に入り込むことはなく、とてもオーソドックスな荘子を教えてくれる本です。オーソドックスな本にももちろん価値があります(自分の解釈を入れることができます)から、これはこれで明知です。では、福永先生の本がどのような観点から名著と評価できるのかと言えば、それは「テーマの斬新さ」です。通常、荘子の哲学と言うのは「諦の哲学」のように記載されます。とうのも、彼は相対主義的立場に立っており、この世で「言葉」などと言うものは意味をなさないと考えています(ここで、私が荘子のことを相対主義と断定しなかったのは、私が彼のことをそう見ていないからです)。しかし、福永先生はそんな荘子の哲学を、ドイツのニーチェの哲学と紐づけて考え「生の哲学」であるとしているのです。もちろん、それは逆張り的な論理を展開したいがための詭弁と言うわけではなく、むしろ荘子の哲学はそうなのじゃないかと思わせられるほど説得力のある解説が展開されています(私が読んだ福永先生の荘子は、原文とともに先生の解説が載せられている、という体裁をとっていましたが、講談社学術文庫の版がそのようなものになっているかどうかは読んだことないのでわかりません。すみません)。もし福永先生の解説だけ読みたい方は

の本を購入してみてください。彼の思考エッセンスが詰まっている本です。
 私が荘子のファンであるため、少し書きすぎてしまいました。基本的に荘子の書籍はおすすめできますので、もし見かけたら買ってみてください。

2.6 サン・テグジュペリ「星の王子様」 新潮

 言うまでもない名作ですね。子供からご老人まで、誰にでも読める作品ですが、この本が持っているメッセージはとても深いです。
 私が考えるこの本のテーマは「一番大切なものは目に見えない」です。大切なものって何でしょう、好きな人からもらったプレゼント?お気に入りの筆記用具?人によって答えはまちまちでしょう。しかし「一番大切なもの」は何でしょうか。そもそも、それは私たちが触れたり見たりすることができるものなのでしょうか。この小説は、そのような疑問に対する答えを提示してくれます。もちろん「目に見えないもの」はたくさんあります。ですから、その「目に見えないもの」の中から、あなたの一番大切なものを探し出すのです。私は荘子の哲学が好きだと先の節で紹介しましたが、これとそれはつながるところがあると思っています。五感を使って感じ取れるものなどと言うのは所詮相対的な解釈にゆがめられるものであって、さして大事なものではありません。本当に大切なものは、そんなものにも打ち勝つ、つまり、五感を使っても認識することのできないものであるはずです。いったい、作中ではその回答はどのようなものだとされていでしょうか。気になった方は是非読んでください。
 余談ですが、私の答えは「愛」です。それは恋人に対する愛でもいいし、友人に対する愛でもいいし、何か好きなものに対して抱いている愛でもいいです。

2.7 さくらももこ三部作 集英社

 これも、哲学とかはないけどとても面白い本です。ちなみに、面白いはinterestingの方ではなくfunnyの方です。
 私は、この本に受験期を支えられました。模試で結果が思うように出ないとき、共通テストでうまくいかなかったとき、二次試験が不安だっとき、かならずさくらももこ先生の本を開くようにしていました。どれだけ辛くても、さくらももこ先生の本を読むだけで自然と笑顔になれて、心から笑うことができるのです。彼女の作品がなかったら、今の私はいないかもしれない、それくらい私の人生に影響を及ぼしています。内容は、さくらももこ先生の昔の話や再起あった出来事などが書かれている、というただそれだけです。しかし、なぜかとてもおもしろいんですこれが。
 読んだことない人は、ぜひ一度読んでみてください。

2.8 数学関連

 数学関連の書籍は

この記事で紹介しています。興味があれば読んでみてください。

3. 漫画


漫画コーナーその1
漫画コーナーその2

3.1 手塚治虫「ブラックジャック」 講談社

 言うまでもない名作ですし、私が紹介する必要もない気がしますが、お気に入りの本なので一応説明しておくことにします。
 簡単に説明すれば、無免許医師のブラックジャックと呼ばれる男がたくさんの人間を救っていく、という話です。しかし、その話の中には手塚先生の哲学が描かれています。これが、ブラックジャックが名作で何世代にもわたって読み継がれている理由でしょう。私が特に気に入っている話は「命を生ける」という作品です。生きる、ということは何なのか、に対する手塚先生の回答が最もわかりやすく解説されています。アニメ化もされており、28話か29話だったと思います(時々ブラックジャック公式チャンネルで配信されているので、タイミングが合えば無料で見れます)。
 さすがに有名すぎる作品なので、あまり語ることがありませんでした。読んだことがない人は、ぜひご一読ください。老若男女、だれが読んでも得るものがある作品です。

3.2 荒木飛呂彦「STEEL BALL RUN」 集英社

 ジョジョの7部に位置する「STEEL BALL RUN」です。画像には全部映りきっていませんが、一応ジョジョは全巻持っていますが、その中でも私が好きなのがこの7部で、学校の長期休みには毎回読み返している気がします。
 この7部は、ジョニィという元天才騎士とジャイロという男がアメリカ大陸を馬で横断するレースに参加するという話です。私はジャイロが大好きで、特に

ジャイロの名言

このセリフは私の人生における指針になっています。あまりにも好きすぎて、他の記事でこのセリフについては詳しく書いてしまったので、よければそちらを読んでいただけると助かります。

 STEEL BALL RUNには人生が詰まっています。ぜひ、読んだことない方がいましたら読んでみてください。

4. 学術書

 ここでは、私が使用している参考書や教科書を紹介します(多分、需要が2, 3と比較してかなり少ないので最後の節に持ってきました)。読んでて特におもしろかった作品をいくつか紹介します。

学術書コーナー 読めてない本がいくつか…

4.1 松本幸夫「多様体の基礎」東京大学出版会

 最初に紹介するのは、松本幸夫先生の「多様体の基礎」です。とても人気な作品で、数学科の生徒であれば一度は読んだことがあるのではないでしょうか。
 多様体は現代幾何学の基礎知識であるのですが、n次元の位相空間扱うなど、感覚的に何をやっているのかがわかりづらいです。「多様体の基礎」は豊富な図を用いて、そのような状況に陥ることを阻止しており、また、多くの例を紹介することで、高度に一般化された定義や定理が私たちの知っている図形にどのように適用されるのか、などがすぐにわかります。「厳密さに欠ける」というような指摘があるかもしれませんが、別に証明にそのような直観的に理解しやすい図などを使用することはほとんどない(もしあったとしても、しっかりその状況を定式化してから使用する)ので、問題はありません。最近は、数学だけでなく、情報や機械学習といった分野でも多様体の知識を用いた研究がなされていますから、数学科の生徒だけでなく、情報科学や理工学部の生徒も多様体の知識をつけていることが望ましいでしょう。そんなときは、この松本先生の本を取ってみてください。かならず、多様体の基礎的な事項は理解できます(間違っても最初から松島先生の多様体の本を読んではいけません)。
 多様体の勉強で悩んでいる方は、ぜひ読んでみてください。また、幾何学に興味のある方にもおすすめです。


4.2 砂田利一「曲面の幾何」 岩波

 意外と知られていませんが、間違いなく名著です。それと、私が無学なだけですが、この本以外で「ガウスの驚愕の定理」の証明が記載されている和書を知りません。
 この本の素晴らしいところは、詳細な解説と図にあります。なぜガウスが曲面論を考えるとき、二回微分まで考える必要があったのか、また内在的幾何学とはなんなのか、などの微分幾何学における基礎の本質的な事柄が砂田先生の豊富な知識によって説明されています。また、1章の「曲面の微分幾何学」では多くの図が挿入されており、直感的に何をやっているのかが理解しやすくなっています(もちろんこれも松本先生の時と同様に、図があるから厳密性が落ちているということは全くありません)。小林昭七先生の「曲線と曲面の微分幾何」は、微分幾何学の入門書として挙げられがちですが、私はこちらの本の方がおすすめしたいです。あと、これは個人的な好みの話になってしまいますが、この岩波講座シリーズは文字のサイズが大きくて読みやすいです。
 微分幾何学・幾何学に興味がある方は、ぜひ読んでください。砂田先生の本質的な解説にハッとすること間違いなしです。
 また余談ですが、理系大学生は必ず線形代数を履修することになりますが、そんな時は砂田先生の「行列と行列式」を使って勉強してみてください。とても分かりやすい本です(間違っても、齋藤先生の「線形代数入門」に最初から手を出してはいけません)。


4.3 深谷賢治「双曲幾何」 岩波

 深谷賢治先生が双曲幾何学を解説した名作です。これも「曲面の幾何」同様、あまり知られていませんが、とても素晴らしい本です(そもそも、双曲幾何の知識が必要になることがあまりないために知られていない可能性はあります)。
 私がこの本に出会ったのは、幾何学の歴史について解説する講義のレポートを作成したときでした。授業の知識以外ほとんど双曲幾何を知らなかった私を、教授が賞賛してくれるレポートを書けるまで導いてくれたのは間違いなくこの本のおかげです。それくらい、この本には双曲幾何の本質がわかりやすく書かれています。双曲等長・等角変換群が上半平面(ディスク)に対してどのように作用するのか、そもそも「幾何学」とは何なのか、二つの幾何学が等しいとは何なのか、など、双曲幾何に固有の話題から幾何学の根底にある話題までがわかりやすく解説されています。
 少しでも双曲幾何に興味がある人は読むことをお勧めします。この本を読めば必ず、双曲幾何にハマります。
 また、まだ読み終えてないので解説できないのですが、深谷先生の「解析力学と微分形式」も名作です。

4.4 M.A.アームストロング「対称性からの群論入門」 丸善

 群論と言えば、雪江先生のシリーズが有名ですが、こちらも負けず劣らずの名作です。私はどちらかと言えば、こっちのアームストロングの著書の方が好きです。
 多様体ほどではありませんが、群論も最初は何をしているのかがわかりづらいです。そもそも、群の公理を見せられて最初から「群論は対称性を記述するもの」という意識を持ちながら学習を進められる人間がどれほどいるでしょうか。この本では、一貫してその精神が根底にあります。最初は正四面体群の対称性から話をはじめ、準同型定理やシローの定理など、群論で大切な定理を証明していきます。私はこの本で群論を勉強しましたが、最初の一冊としてこれを選んで心からよかったと思っています。
 群論初心者の方は、一度目を通すことをお勧めします。群論に対する新しい知見などが得られることは間違いないです。

5. おわりに

 書きたいことが多く、長くなってしまいました。拙い文章でしたが、ご覧いただきありがとうございました。

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