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おすすめの数学本


1. はじめに

 この記事では、誰でも読める・楽しめる数学の本を紹介します。分野で本を分類してありますので、興味のある所を上の目次からタップしてみていただければと思います。
 それでは、よろしくお願いします。

2. 総合

 ここでは、数学の様々な分野の知識や歴史画総合的に紹介されている本をいくつか紹介します。たぶん、ここで紹介されている本が一番読みやすいです。

2.1 サイモン・シン 「フェルマーの最終定理」 新潮文庫

 ここで紹介するのは、サイモン・シンさんの「フェルマーの最終定理」です。非常に有名な本ですから、一度は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。また多分誰にも伝わらない事ですけど、山本美月さんが主演を務めていた「ランチ合コン探偵」というドラマの6話か7話あたりで、この本の話題が出てきていたと記憶しています。
 この本の素晴らしいところは、数学に関して全くのド素人でも挫折することなく読んでいけるというところです。ところどころに数式は出てくるものの、それを読み飛ばしてもないようにさほど影響はなく、数学史の面白さを知ることができます。また、数学の知識がある程度ある人は巻末の補足を読むことによっても楽しむことができ、数学初心者の頃に一度・数学にある程度詳しくなってきたもう一度、の計二度違った角度から楽しむことができる本になっています。
 数学を学び始めたころに一度・大学受験が終わったときに一度私もこの本を読みましたが、全く違う観点からこの本を楽しむことができました。ぜひ、読んでみてください。

2.2 丹羽敏雄 「数学は世界を解明できるか」 中公新書

 次に紹介するのは、丹羽敏雄さんの「数学は世界を解明できるか」です。これは「フェルマーの最終定理」の知名度と比較するとやや劣ると思いますが、とても面白い本です。
 少し難しいのですが、この本もやはり二度楽しめる本で、最初は数学の歴史書として読むことができると思います。古代ギリシアの数学を使用した天体運動の解析などの話から始まり、最終的には現代数学でも研究されている「カオス」という分野まで話が及びます。また、二度目は数学の限界を指摘したものとして読むことができます。数学は万能な学問ではないということを指摘している一般向けの本は、これくらいしか読んだ覚えがないです。ちなみに

この動画で佐々田慎子さんがそのような発言をしていたので、お時間あるかたはこちらもチェックしてみてください。
 少し難しい本ですが、自信をもって楽しめる本だと言えますので、ぜひ読んでみてください(佐々田慎子さんの動画もぜひチェックしてみてください)。

2.3 シルヴィア・ナサ― 「ビューティフル・マインド」 新潮文庫

 3冊目は、シルヴィア・ナサ―さんの「ビューティフル・マインド」です。映画化されているので有名だと思います。
 この本は、ノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュという数学者の人生にスポットライトが当てられている作品です。彼の「ナッシュ均衡」の存在を明らかにした博士論文や、「リーマン・ナッシュの等長埋め込み定理」を証明した論文は非常に素晴らしいものであり、彼がどれだけ研究者として素晴らしかったのかというのがその論文を読むだけでわかります。しかしその反面彼の人生には非常に暗い部分があります。この本を読むことで、そんなジョン・ナッシュの人生を知ることができます。
 こういう数学者の本を読むことで、数学に対するモチベーションだったり興味だったりを上げることができます。この本は特にその効果があると思うので、ぜひ読んでみてください。 

3. 代数

 ここでは、代数学の本を紹介します。総合の本と比較してあまり種類がないですけど、面白さは全く劣らないです。

3.1 結城 浩「数学ガール ガロア理論」SBクリエイティブ

 この本は、代数学の非常に有名な「ガロア理論」を解説している本です。ちょっと難しいですけど、とても面白いです。
 数学の本ではありつつ、この本はあくまで「小説」なんです。そのため、教科書のように淡々と 定義→定理→証明→定義→・・・ のような流れが繰り返されているわけではなく、対話形式で話が進んでいきます。これが非常に読みやすいです。また、章の最後まとめがあり、その章で論じたことを簡潔にではありますがまとめてくれます。このおかげで、自分の頭を整理して次の章を読むことができ、理解がしやすくなっています。
 私もガロア理論に興味があり、その系列の本をいくつか読みましたが、これが一番わかりやすかったような気がします(一般書のなかでは)。ぜひ、読んでみてください。

代数分野はあまりいい一般書を見たことがないので、一冊しか紹介できませんでした。代わりに、とても面白いYouTubeの動画を貼っておきますのでぜひ見てみてください。


4. 解析

 ここでは、解析学に関する本を2冊紹介します。

4.1 「微分と積分(Newton別冊)」

 有名なNewtonの別冊本で、微分積分の知識を一から説明しているものです。ちょっとしめですけど、流れを追っていけば誰でも読めると思います。
 結局書いてあること自体は巷にある教科書や参考書と大して変わらないんですけど、図が多くてイメージがしやすいところがこの本が優れているところです。また「なぜ微分積分の考え方を発明する必要があったのか」という背景知識込みで説明をしてくれているので、動機付けまで理解できて楽しんで読むことが可能です。加えて、少し難しめですが、我々の実生活に微分積分がどのようにかかわっているのかなども最後の方には記載されていますので、この本を読めば「数学なんて役に立たない」という考えはなくなるんじゃないかと思います。
 残念ながら何度も楽しむことができる本ではないですが、確実に初見で読んだときは感動する本ですから、まだ読んだことない人はぜひ読んでみてください。
 余談ですが、私はこの本を友人に貸したまま2年程返ってきていません。

4.2 長沼伸一郎「経済数学の直感的方法 確率・統計 編」 ブルーバックス

 これを解析の分野に入れることは少し疑問がありますし、一般書としておいていいものなのかも少し疑問がありますが、とても面白い本なので紹介しておきます。
 これは、経済学の内容を数学でどのように解析するのか、などを非常に直感的に解説している本です。何が直感的かと言えば、極力数式を用いることを取り除いて、代わりにその数式がどのような状況を表しているかという図が使用されている点です。また、経済学と言う題材が非常に秀逸です。株価といえば、あのギザギザした株の図を皆さん見たことがあるはずです。そんな身近な株の特性を、どのように解析するのかをこの本では説明してくれます。
 Newton別冊と比較すると少し数式の量は減りますし、「解析!」って感じがするかと言えばそんなことはないですが、かなり面白い本なのでぜひ読んでみてください。

5. 幾何

 ここでは、幾何に関する書籍を紹介します。幾何は面白い本がたくさんあるのですが、すべて紹介していると長くなってしまうので、三冊に絞って紹介します。

5.1 ドナル・オシア「ポアンカレ予想」 新潮文庫←おすすめ

 一冊目は、ドナル・オシアさんの「ポアンカレ予想」です。個人的には、この本がこの記事で紹介した本の中で一番おすすめです。
 ポアンカレ予想の名前自体は非常に有名なので、聞いたことがある人は多いと思います。この本を読めば、幾何学の歴史を理解するとともに、なんとなくポアンカレ予想とは何なのかを理解することができます。また、この本も2.2で紹介した本と同様に、最古の幾何学であるユークリッドの幾何から解説して現代数学の話題まで進んでいくので、とても面白いです。位相幾何などの話を聞いたことがない人は、ユークリッド幾何の話題を離れたあたりを一度で理解することは少し難しいかもしれませんが、非ユークリッド幾何だったり位相幾何だったりの知識をWikipediaなどで入れてから、もう一度この本を読み直すと必ず感動する一冊だと思います。
 この本も2.2で紹介した本と同様、あまり書店の店頭で見ることはないですが、買って必ず損はない一冊だと思います。また、幾何学の面白さを知れる一冊です。ぜひ、読んでみてください。

5.2 中村幸四郎 他 「ユークリッド原論」 共立出版

 私たちが中学校で学んだ図形の分野を、一からすべて構築していく本です。原著は2000年以上読み続けられた数学の教科書です。
 無学で、日本語翻訳された「原論」をこの本しか知らないため、この本を挙げています。また、単に本を読んでいるだけではあまり面白くなく、この本を真に楽しむには、コンパスと定規があれば十分です。この二つを使って、この本に書かれている証明を逐一再現して作図していく。この作業がとても面白いです。今は、図形を解析する方法がたくさん発展していますが、この当時はこの本に載っている初等幾何的方法しかありませんでした。その当時の人々の気持ちを追う、これがこの本の真髄だと私は思います。
 誰でもみたことある定理などを証明できた時はとても楽しいと思います。また、予備知識はいりませんから、ぜひ読んでみてください。

5.3 上級編 D.ヒルベルト 「幾何学基礎論」 ちくま学術文庫

 現代数学の巨人、D. ヒルベルト先生の著作です。今まで紹介した本の中では最も難しい本だと思いますが、読む価値は確実にある本です。
 この本が真に何をしたいかと言うことを理解するには、5.1で紹介した本を読んだ方がいいです。この本はいわば「現代版ユークリッド『原論』」なのですが、その現代版原論をなぜヒルベルト先生が書く必要があったのか、などは、現代幾何学に至るまでの歴史を知らないと理解できません。ただ、これを知っていると「なるほど、こういうことがやりたかったからヒルベルト先生はこの本を書いたのか」と腑に落ちるところが多々あり、伏線回収のようなそう快感を味わうことができます。
 一般向けではあるが難しい本です。しかし、非常に面白い本ですから、ぜひ挑戦してみてください。
 英語が読める人は

https://math.berkeley.edu/~wodzicki/160/Hilbert.pdf

ここから無料で読むことができます。

6. さいごに

 この記事では、誰でも読める・楽しめる数学の本を紹介しました。すべて素晴らしい本ですから、ぜひ読んでみてください。きっと数学が好きになれます。

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