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空想のお話

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#10 過去の味

#10 過去の味

よく噛んでお食べなさい
そしてよく味わいなさい
その後悔の味を。

真夏の横断歩道
太陽光を浴びる自分
影は華麗にステップを踏む?
滴る汗はしょっぱい
あの味に似ている

ほろ苦い珈琲
過去を噛みしめてる
素敵なジャズも
雰囲気には合ってるけど
私の心を乱すだけ

快晴の清掃
綺麗になった私の心
相変わらず汚い部屋
逆になることだってある
人間誰しもそういうもんでしょ

癒えない傷と薄れる記憶

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#9 夜雨

#9 夜雨

誰かの願いは
夜空に届くことなく
雨と共に流れ
この地に眠る
ため息をつく少年少女
それを見る子供心を失った
さすらいの旅人
自分の中にも願いがあると知らないで

なにもその日に限ったことではない
誰しも心の中に
願いをそっとしまってある
開けっぱなしにしている人は眩しい
最後まで大事に閉めておく人は
内に秘めたる葛藤を持ち合わせている

口にするかしないか
文字にするかしないか
なんて関係ないと

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#8 音楽

#8 音楽

あなたが書いた歌は
誰かへの愛で溢れていた
あなたが話す物語は
甘酸っぱい恋の匂いがした

私にはなくてあなたにはある
そんなもの数えきれないほどある
いや 実際は 数えようなど
思っていない

私には知らないことがある
あなたが考えていることも
想いを寄せている人物も
何もかも知らないよ

知りたいだなんて
思ってはいけない?
私は
あなたの音楽が
あなたの小説が
あなたの世界が
こんなにも大好

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#7  海

#7  海

一人毛布にくるまって食べた涙の味は、
いつかの海の味がした。
しょっぱいね、って笑い合った
誰かの顔ももう思い出せない。
透明な波は
私の足の輪郭を曖昧にさせて、
波のさざめきは
私を知らない世界へ連れて行った。
あのときのように、
私は一人青く澄んだ世界にいる。
ここにいれば大丈夫、なんて
誰が言ったのだろう。
もう戻りたくない。
ガラクタだらけの世界に私はもう住みたくない。だけど、私の体は私の

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#6 祈り

#6 祈り

両手をぎゅっと握って
静かに祈りを捧げる夜
誰への、何への祈りなのか
もうわからない
私たちが知らないところで
私たちが見ていないところで
誰かが運命の歯車を回している
そんな気がするだけ

言葉にしないと。
行動に移さないと。
何回も言われてきた
この世界の人たちは形にすることを好む
実態を持たない何かを信じる私たちは
変な人? 生きていては駄目な人?

あなただけが頼りだ
いつだって私の隣にい

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#5 夜中

#5 夜中

窓の向こうの明かりをみつめる
一つ、また一つと消えていく
誰かが夢の世界へ出発する合図
早く寝なさい、と
世界から急かされている気分
そうだね、寝ないと、わかってるよ
でもどうしても思考が渦巻くんだ
夜は自分が曖昧になる
僕は誰なのか、何者なのか
ふかふかのベッドに身を沈める
このまま消えてしまうのではないか
という恐怖とともに
僕は空想世界行きの列車に乗る
黒色の機体は夜に溶け込む
車窓から眺め

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#4 邂逅

#4 邂逅

あなたになりたいわけじゃない
だけどあなたが好きだと言ったから
いつも読まない本にも挑戦したり
聴かない音楽に浸ったり
星空を眺めたりしている
どこに住んでいるのか
何歳なのか
どんな見た目なのか
何も知らないけれど
確かにわかるのは
私はあなたの声が好きだということ

あなたの思想に助けられ
あなたの価値観に惹かれた時から
私は確かに変わることができた
自分を好きになることができた
感謝の気持ち

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#3 雨音

傘の上で雨粒が踊る
ちょっとうるさいね、って笑う君
透明なビニール越しにみる世界は
どんよりと灰色に染まっている
私はうれしい
あなたが雨を「音」として感じているから
ポツポツ ザアザア
色んな音があるけれど
すべて私たちの体で響いている
聞こうとしない人たちは
雨をどう感じているのだろう
そもそも感じようとしているのだろうか
水溜まりをひょいと、とびこえる君
紺色のスカートが揺れる
栗色の髪が少

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#2 瞳

星が美しいとあなたは言うけれど

私にはただ輝いているようにしか見えない。

花が美しいとあなたは言うけれど

私にはただ咲いているようにしか見えない。

海が美しいとあなたは言うけれど

私にはただ波打っているようにしか見えない。

そんな私だけど、何かを美しいと思える

あなたの心は美しいと思った。

 

 

 

 

 

私はあなたの瞳が好き。

どこまでも広がる宇宙を

ぎゅっと閉

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#1 宙

#1 宙

 半球の空の下で
 僕らは点滅する光を見つめている
 何光年もの旅路の間
 この星は何か変わっただろうか
 
 僕らの瞳が映す煌めきは
 今はもうないかもしれない
 いつかの輝き
 燃え尽きて 欠片となって
 この星に降り注ぐ
 僕らはそれを望んでいる
  
 太陽は昇る
 白くて明るい光は
 僕らの体を満たしていく
 朝日はちゃんと浴びなさい
 小さい頃に言われた言葉
 大きくなってようやくわか

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