見出し画像

#5 夜中

窓の向こうの明かりをみつめる
一つ、また一つと消えていく
誰かが夢の世界へ出発する合図
早く寝なさい、と
世界から急かされている気分
そうだね、寝ないと、わかってるよ
でもどうしても思考が渦巻くんだ
夜は自分が曖昧になる
僕は誰なのか、何者なのか
ふかふかのベッドに身を沈める
このまま消えてしまうのではないか
という恐怖とともに
僕は空想世界行きの列車に乗る
黒色の機体は夜に溶け込む
車窓から眺める天空は
煌めく記憶の欠片
同じような景色をみたという人に
どこかで会ったような気がする
それもまた空想世界の話なのか
それとも僕が存在する世界の話なのか
知りたい、けど知らなくていい
たぶん世界はそういうもので溢れている
「知らない」は怖いが
すべてを知る必要のある人なんていない

夜は僕の輪郭が曖昧になる
朝日が昇るその時まで
僕はその曖昧な輪郭で
別世界へ旅に出る


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?