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#7  海

一人毛布にくるまって食べた涙の味は、
いつかの海の味がした。
しょっぱいね、って笑い合った
誰かの顔ももう思い出せない。
透明な波は
私の足の輪郭を曖昧にさせて、
波のさざめきは
私を知らない世界へ連れて行った。
あのときのように、
私は一人青く澄んだ世界にいる。
ここにいれば大丈夫、なんて
誰が言ったのだろう。
もう戻りたくない。
ガラクタだらけの世界に私はもう住みたくない。だけど、私の体は私の思いに従ってくれない。
目が覚める。
涙の味だけが、微かに舌に残っている。

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