見出し画像

【医師コラム】 発達障害の彼女は他人に厳しすぎる。

 発達障害と診断されている彼女は、クラスに担任がいない自習の時間でも、1人で真面目に黙々と自習している。それなのに、周りが騒がしくしていると、その状態が許せず大声で注意をする性格だ。そういう性格もあって、周りは彼女のことを嫌煙し、距離を取っていた。「なんだよ、また、あいつだよ」という具合に。けれど、自習時間であっても事業中というのには変わらないので、正しいのは彼女の方なのだが、クラスメイトは理解していなかった。
 クラスメイトを怒りはするものの、彼女はすごく敏感な性格でもある。だから、相手がどう思っているのか、ということは表情を見るだけで悟ることができた。
「この人は嘘をついている」
「この人は、私のことが嫌いなんだ」
 マイナスな感情を抱かれることで、傷つき、悩み、やがて人を見ることが怖くなって、学校に行くことができなくなった。小学校中学校は不登校。高校は通信制高校。
 それでも彼女は、親に頼って生きていくのではなく、自立の道を選んだ。人間関係で躓くことは目に見えていても。
 そんな彼女が選んだ就職先は介護職。介護職は負担が多くて大変なもの。担い手が少ないのも特徴だ。しかし彼女は、この仕事ならできると思っていた。実際彼女は裏表のない認知症の方に優しく接することもできるし、家族の思いを汲み込むことも得意だった。職場のスタッフも、彼女のことを認めている。
 スタッフへの指摘がきついときもあるが、受け入れてもらえている。主治医として彼女のことを15年以上診療してきたが、彼女がみんなに必要とされ、様々なストレスから解放され、満たされた愛顔は喜ばしいものだ。
「この仕事が楽しいです」
 彼女の愛顔は、家族も周囲も愛顔にさせてくれている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?