見出し画像

【医療コラム】【受験コラム】東大合格者100名の輩出校で劣等生が起こした奇跡 そして医師に

「うちの子のやる気スイッチはどこに?」
 児童精神科医をしている私のもとには、同僚の医師や看護師、そして診療をしている親御さんから、こんな相談を受けることがあります。

 「うちの子のやる気スイッチはどこにあるんでしょうか?」
 「どうしたら医師になれるぐらい成績が上がりますか?」

 嫌がる子どもに無理やり勉強机に向かわせることを好んでいる親なんて、ほとんどいません。だからこそ、勉強をしない子どもを見て心配をしているのです。そして、私たち医師というのは、勉強ができなければなれないということも身をもって知っているので、余計にこういった相談を私にしてくるのだと思います。

 私の周囲の先生にはかつて「勉強なんてみんな苦痛なんだ。勉強にハマるっていうのは、もともと出来がいいか発達障害なんだ。医師なんて発達障害みたいなもんだろ?」と口癖のように言っている方がいました。

 もちろん発達障害というのはかなり極論であり、お叱りを受けるだろう発言だと思います。ただこの発言を聞いて振り返ってみたのです。
 たしかに勉強ができ教授のようなポジションまで行き着く方は、落ち着きがあるというよりは、好奇心旺盛。そして、とことん探求したい気持ちが強い――私の知る限り、どこか子どもっぽくて、アイデアマンという感じの人が多いように思います。

■高校進学も危うかった劣等生だった私


 さてそのような天性の才能・素養などがなく、仮に勉強嫌いだったとしても、「やる気スイッチ」が入り劇的に変化する事例というのはあると思います。何を隠そう私自身が体現した経験があるのです。

 私は中学受験をして入学したのですが、見るも無残な劣等生でした。中学3年生の5月には親が学校から呼び出され面談が実施され、その際、高校への内部進学も危ういと言われたほどです。

 高校に内部進学できなければ授業は出る意味がないから、朝もしくは帰りの出席確認どちらかをすれば出席扱いにするので、図書室で自習していなさいと言われました。そして、他の子と一緒に勉強をしていれば、周りの生徒にも悪影響が出るとまで言われた記憶があります。

 私の住んでいた神奈川県では統一テストがあり、それを受けていない生徒は高校受験に不利になることがわかっていました。私は中高一貫校で、高校内部進学するつもりでしたので、統一テストは受けていません。

 そればかりか内部進学できないような成績ですから、内申点も悪いでしょう。このままでは高校に入学できません。私は途方にくれました。母親もショックで1週間ほど声が出なくなるありさまでした。

 実は私、小学校の頃は算数が苦手で完全なる文系人間でした。
 国語・算数・理科・社会のうち、算数が200点満点。あとは100点満点の理系の学校に、奇跡的に合格してしまったことがことの始まりです。また学校は能力別クラス分けがありましたので、数字は見るも無残。勉強の仕方もわからないし、自信を失い、勉強へのやる気も失いました。
 
 お前が、クラスの平均点下げてんだよ!! 竹刀どころか木刀で学年主任から頭を小突かれてました。

 宿題は答えを写し、定期テストは得意の暗記で乗り切っていました。そんな私が図書館に行っても、勉強などできるわけがありません。図書館で進学ガイドや中学◎◎年生なる雑誌の性体験の記事などを読んで、居眠りする日々でした。

■下位成績から大躍進の訳


奇跡の巻き返し
 どうすることもできないまま過ごしていましたが、5月末、私に奇跡的な出会いがありました。

 なんの気なしに読んだ教科書ガイドにハマったのです。なぜか?内容がとても分かりやすいのです。私の中学校では、教科書ガイドは禁止されていました。今思えば、なんのための禁止だったのでしょう。

 教科書ガイドを読んで問題を解くと、面白いように正解するのです。性格上、無理しても長続きしないだろうと考え、教科書ガイドを1日10ページ読んで、それに関する問題を解こうと計画しました。しかし、結局勉強が止まることはなく、次の日も次の日も、80ページとか分厚い教科書ガイドを読んでは、問題集を解いていったのです。

 そしてなんと、夏休み明けの実力テストでは550人中540番ほどだった成績が、100番へと順位を大幅に上げました。高等部では東大合格者が100人いた学校ですから見事な躍進です。

 爆発的に成績が上がった者に共通していることは、「わかった」という経験です。私自身「できた」という爽快感は最高でした。また、高校内部進学をできないと断言した担任と学年主任、周りの生徒を見返すことができたという自信も私を突き動かしました。

 勉強はもちろん嫌ですが、コツもわかり、やれば成果があることは、この頃に根づきましたので、当然、今もコツコツやっています。

参考文献:


1:Learning Styles: Concepts and Evidence.Pashler H, et al. Psychol Sci Public Interest. December 2008.Psychological Science in the Public Interest 9(3):105-119
2:鹿毛 雅治:「やる気」の心理学. Newton. ニュートンプレス出版,東京,2022. 34-43

https://membersmedia.m3.com/articles/5952#/

この記事が参加している募集

仕事について話そう

受験体験記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?