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CIVILSESSION 17: SPIRITUAL

開催日:2018年9月29日
開催場所:東京・目黒ビーコン・コミュニケーションズ 11F Agency Forum

CIVILSESSIONはクリエイティブチームCIVILTOKYOのメンバーが様々な分野の方と行うアートセッションです。決められたキーワードを元に、発表者たちが一週間で作品を制作します。キーワード発表から一週間後にそれぞれの作品のプレゼンを行い、参加者の投票でグランプリを決定します。

第17回目のキーワードは「SPIRITUAL」。
CIVILTOKYOの3名とゲスト参加者4名の計7名で行いました。

池田早希(元人事)
・菅野秀(デザインエンジニア)
・近藤まり子(ストラテジスト/保育士)
栁澤貴彦(画家)

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グランプリは菅野秀に決定しました。

CIVILSESSION 17では、発表者がそれぞれの得意な手段を活用、もしくは転用し、慣れ親しんだ手法を発展させた作品づくりを行う方が多かったように見受けられます。特に、日頃ものを形作る職種ではない池田や近藤が、普段の仕事の知識やプロセスを取り入れつつ、それに作品としての形を与えてCIVILSESSIONでの発表作品にまで昇華する過程は、アートの新たな一面にも思えます。

菅野はプロダクトを作る職業柄、人の「個性」がものを作る側、使う側の難易度を上げる要素になりかねないと解説。その上で「人間の魂の質量が21g」という既存の説を上げ、個性が魂に宿るとの見方を元に、身体から21gの血を抜き取るプロダクトを考案、発表し、見事グランプリを獲得しました。

近藤はSpiritualという言葉を胡散臭いと感じている周囲の人々に、それをビジュアル表現してもらうとどうなるかという実験として水のラベル制作を依頼し、結果どういったラベルが仕上がったかの報告を発表としました。
伊藤はキーワードの持つ「怪しい/やばそう」というイメージからオウム真理教と紐付け、幼少期に見た尊師マーチの踊りで感じた恐怖の念を解説し、その体験をビジュアル化した写真集「尊師マーチ」を制作。
栁澤は一般的に人と共感し難い「精神性」を共有する方法として「相手の動きに合わせて動く」ことを考案し、スピリチュアル感を増すための被り物と共に、その場で指名した人と即興の動き(踊り)を段階を追いながら披露し観客を沸かせました。
池田はイタリア語でAMORE SPIRITUALE=PLATONIC LOVEであることに注目し、自身の恋愛体験談を交えながらのマシンガントークでSPIRITUALが意外と身近であることを解説、その上でPLATONIC LOVEの相手を選考形式で募集するというプレゼンテーションを行いました。
杉浦は自身がスピリチュアルに頼ったものの考え方をしないことから、スピリチュアルな思考方法を行う占い師に「CIVILSESSIONで何をすべきか」を相談し、そこで得たキーワードを元に楽器「チャクラ・ピアノ」を制作、演奏しました。
根子は「スピっている」という言葉は、偶然や気のせい、思い込みのことではないかとの観点をもとに、映像の小さな一部をぼかして拡大表示することによって、「意味があったもの」を「意味がないように見えるもの」に変換する装置を製作しました。



①近藤まり子(ストラテジスト/保育士)/SPIRITUAL WATER by UNSPIRITUAL PEOPLE

いわゆる「霊魂・宗教」などの世界を胡散臭い!と信じない6人(大多数の人はそうだと思う)に、もうひとつのSPIRITUALの解釈である「目に見えないし手でさわれないけれど大切なもの」を表現してもらうと、どうなるのか?という実験。表現の題材として、SPIRITUALな商品の代表格である「水」のラベルを選び、自身の専門領域である定性調査のニセ手法「ラベリング・テスト」を開発した。信じていないにも関わらず、できあがったものはかなり「霊魂・宗教」的に見え、SPIRITUALという言葉が持つ胡散臭い印象を取り除いた、人間にとってピュアに大切なものがあぶり出される結果となった。

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②伊藤佑一郎(写真家)/洗脳写真集「尊師マーチ」

今回のキーワードがSPIRITUALに決定した瞬間にまず頭をよぎったのが、言葉の意味うんぬんではなく「なんか怪しい」「なんかやばそう」という言葉の印象が先でした。それはおそらくこの言葉を悪用した数々の新興宗教団体の影響が強いからだと思います。その中でも真っ先に思い浮かんだのが、オウム真理教でした。歴史に残るような大事件を引き起こした集団であることは周知の事実であるとは思いますが、中心人物たちのやばい風貌とやばい発言、暴かれた集団生活の衝撃の内情。そしてテレビなどで放映された信者たちのその怪しさに気づかない思考停止状態の表情に胸がざわついた方々も多いのではないでしょうか。なかでも私が「ちょっとこれはやばいすぎだろ!」と思い、ずっと記憶にこびりついてしまっているのが、1990年麻原彰晃が第39回衆議院議員総選挙に出馬した際に、演説とともに音楽を流しながら多くの信者が踊っていた「尊師マーチ」です。これはもうスピって、完全に洗脳されていないと踊れない踊りではないだろうかと。当時5歳だったのですが、強烈な恐怖として覚えています。この感覚をアート作品にしました。写真集です。でもただの写真集ではありません。この紙には何もプリントされていません。写真集「尊師マーチ」を御覧ください。
※この男性は「尊師マーチ」を踊っています。

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③栁澤貴彦(画家)/精神性の共有

「spiritual」というワードに僕は「つかみどころのなさ、歯がゆさ」を感じました。身近に精神世界を体感できる人がいたのでが、僕にはそれがわからなかったからです。そういった精神性の存在は個々人では認識できるかもしれませんが、共感は難しいものです。
あなたには認識出来ても、わたしにはわからない。わたしに見えていても、あなたには見えない。そういった精神性を共有できたらと思い、今回は実験のような発表をしました。

はじめに、二人で向かい合って立ちます。鏡のように同じ動きをするようにします。

まずは『わたし』が『あなた』の動きに合わせようと努めます。『あなた』のリードで『わたし』は鏡のように同じ動きをします。

次は逆です。『あなた』が『わたし』の動きに合わせようと努めます。『わたし』のリードで『あなた』は鏡のように同じ動きをします。

では『あなた』と『わたし』がリードしながらも、同じ動きをするよう努めたらどうでしょうか。先ほどよりも集中してお互いの動きに合わせつつ、動くことになります。こうすることで二人が無我の状態へ近づき、自他の境を曖昧にして『なにか』が介在しているような、感覚をお互い感じたとき、精神性の共有ができると考えました。

結果としてはなかなか難しいところもありましたが、精神性の共有を図り、お互い実感することができれば、少なくとも『わたし』と『あなた』は掴みどのなかった『なにか』を二人で認識でき、歯がゆさの解消につながると思いました。

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④池田早希(元人事)PLATONIC LOVE

SPIRITUAL=精神的なとは一般OLにとって身近なのかどうかを検証してみました。
イタリア語でSPIRITUALはSPIRITUALE。そしてこんな言葉があります。
AMORE SPIRITUALE
要はPLATONIC LOVE(プラトニックラブ)。このPLATONICという言葉、SPIRITUALから霊的な・宗教的なみたいな意味を排除し、精神性に絞っています。私にとって好都合だったので、もうPLATONIC LOVEは身近なのかどうかで自分とSPIRITUALとの距離を測ることにしました。
参考にしたのは究極のプラトニックラブと言われている映画「her」。人工知能との恋愛を描いた「身体的な」交わりのない恋愛映画です。
でもこの主人公、ただ人工知能と会話をして満足するのではなく、一緒に食事をしたり、デートに行ったり、果てにはセックスをしたりするわけです。
確かに目の前に物体はなくとも、それを想像して頭の中に「身体」を形作り欲を満たす。
あらあら、プラトニックラブってそんな禁欲的で崇高なものでもないではないか。
自分の恋愛に置き換えた時も、そんなシーンってあるわけです。
例えば遠距離恋愛中の電話。スカイプをしながら一緒の映画を見たり、ご飯を食べたり、直接相手に触れられるわけではないがそれを想像して見えない何かで繋がろうとする。
PLATONIC LOVE、一般OLにもその価値観はあったようです。
・・・さてさて、あなたは一体なんのアートを生み出したのといいますと、
今回正直お題は特段関係なく、こんな話をしながら自分自身や恋愛観のプレゼンをし、最後に自分のPLATONIC LOVEのお相手を募集、選考過程を公開するという、昔人事としてやっていた「新卒採用会社説明会」を自分に置き換えたアートにさせていただきました。
だって普通のOL喋る以外、何も作れないもん(笑)
でもSPIRITUAL、だけでなくARTも意外と身近だと感じれるようになった良い機会でした。

※プレゼンテーション資料は以下リンクより
https://www.slideshare.net/secret/iah5eUA0eEHaDw

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⑤杉浦草介(デザイナー)/チャクラ・ピアノの演奏会

Spiritual(精神的)の対義語を調べたら、Physical(物質的)と出てきました。
自分は物事を筋道を立てて理性的に考える傾向にあって、あまり感情的には考えません。上の二語の対比でいうと、あくまで自分を客観視した上での一つの見方ですが、思考回路が物質的(物理的)な方だと思います。つまり自分がSpiritualをどんなに頑張って考えようとも、これはSpiritualを物質的に捉えた側面にしかならず、本当の意味でのSpiritualは見えない気がしました。

そこで理性によっての考え方に頼らない、占い師の方に「今回のプレゼンで何をしたら良いか」を尋ねに行きました。リサーチを行なった結果、統計学がベースになっている手相や星占術ではなく、霊感タロットや霊聴など、自分には到底計り知れないスピリチュアルな力によって占いを行っている渋谷のA先生にお願いすることに決めました。A先生のウェブサイト紹介文には「スピリチュアル〜」の記載がいっぱいです。

占い自体も初めてで、何をどう聞けば良いかもわからないため、ことの一部始終を全てお話ししたところ(自分自身はこれまで占いなどほとんど信じて来なかったこと、CIVILSESSIONという企画をやっていること、今回のキーワードがSpiritualだからここへ来たこと。)、「良いんじゃないかしら!」とご協力いただけることになりました。
実際の占いの際には幾度となく「草介さんがすでに候補として持っているアイディアの中でどれがベストか」を占ってくれようとしましたが、誠に失礼ながらそれは何度も拒否させていただき、「先生のスピリチュアルな力によって何が見えるか」を初回20分コースの中でしつこくお尋ねした結果、以下の5つが出て来ました。

・+と-(陰と陽や、正と負など)をベースにしたものを作ると良い
・劇をするのは良さそう
・音の要素も良い
・光の要素も良い
・様々なチャクラの色が光っているのが見える

この5つの要素を授かったのが発表のほぼ丸一日前で、そこからこの要素をどう形にするか悩み、至ったのが「チャクラ・ピアノの演奏会」という劇です。
チャクラには様々な色があり各色が光を放っています。調べたところ、それぞれの色は各音階ともリンクしていることがわかったため(ド=赤、レ=オレンジ、ミ=黄 など)、その色の光を押すと呼応した音が出る楽器、チャクラ・ピアノを作りました。このピアノの動力のベースは+と-の関係性によって力を発する乾電池を使用しています。
このピアノには1オクターブ分の光鍵盤しかないため、その中で演奏できる一番スピリチュアルなものはと考え、発表では賛美歌(神を讃える歌)である「アメージンググレース」を演奏しました。

A先生からいただいた5つのキーワードを「形にする作業」は自分の理性的な思考によるものですが、その根源となるキーワード自体はスピリチュアルな力で決められたため、ただ単語ひとつを元に何かを作るのとは違い、自分では想像がつかないくらいスピリチュアルな仕上がりになりました。

しつこく面倒臭い客からの無理なお願いを快く聞いてくださったA先生、本当にありがとうございました!

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⑥根子敬生(デザイナー)/意味のあるものを、一旦、意味のないものに変換する装置(「スピる」についてのインプットとアウトプット)

「スピってる」という言葉はいわゆるネット界隈の言葉なのか割と一般化してないことに驚いたりもしたのですが、この言葉には、例えば「風水」「パワースポット巡り」「オバケ見えちゃうの…」などの一般的に「霊的なもの」とされる意味・イメージ以外にも「あのコンビニの店員さん、いっつもわたしのコト見てるの…」やら「寂しい時に〇〇ちゃん(ペット)が慰めてくるの♡」やらの、当人以外が聞くと「そら自分の気のせいやろ」(←すません)と思うような、個人が何かの事象に対して、自分の思い込み・都合で意味を感じたり、勝手な解釈を付与するような感覚や雰囲気が、僕にはあるような気がしました。

正直、単純に道理が通らないような考えについては、個人的には苦手な方だし、合理性もなければそこに生産性もないと思うタチなのですが、実際の自分の感情は、特に理由もなく感動したり楽しいなーとか思ったりするもので、なんでもないコトに、自分が、勝手に、意味を感じたりする行為はとても重要で、面白いなあ、と思ったりしました(これは、いわゆる神道で万物に神を見出す思想などとも近い気がする)

そこで、どうにか特に意味のない「偶然」「気のせい」「空気」みたいなモノを作れないかと思い、LEDで5 x 10pxの計50個のドットで成り立つディスプレイを制作してみました。これは、例えば4Kであれば3814 x 2180 px の計8314520個のドットで成り立つ平面を、極端に簡略化し、障子を通して映像自体の輪郭を可能な限りボカすことによって、膨大な情報を持った「かつて意味のあったもの」を「よく分からんくて意味のないように見えるもの」に変換する装置です。

これは特に意味のないものなんで、単純に「キレ〜」とか思ってもいいし、これは新しい仏壇の形である!みたいにプロダクトとして定義しちゃってもいいんですが、意味がよくわからんものを、特に理由もつけず、よくわからんまま楽しむ、というのも、まあ良くある話だし、意味意味意味意味ガチガチになるよか、たまには楽しいかなーと思ったりしました。

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⑦菅野秀(デザインエンジニア)/Where is the 21g?

人間の魂の質量が21gだと解いた医師Duncan MacDougall。
彼は研究発表後、異端児として業界からのけ者にされ公の場から姿を消しました。

しかし、彼の研究には続きがありました。

なんと、彼は人間の魂の質量だけでなく、人間の魂のある場所まで特定していたのです。

今回のアイデアはそんな彼の研究を背景としています。

人間の身体的機能を模擬した人型ロボットと人間との差分が「魂」と定義するのであれば、
人間の魂は個性や価値観を個に与えている存在といえます。

さて、今私たちは多くのモノやデザインが溢れた非効率的な社会で生きていますが、
それをつくり出している原因こそが先に述べた個人が持つ個性や価値観のばらつきです。

したがって、この社会的課題を解決するために、私は人間が持つ個性という21gの魂を抜き取り、
世界中の人々を均一化するためのプロダクトの設計しました。

この製品が社会に普及することによって、多様性を考慮した無駄なものづくりがなくなり、
人類はより健全に地球と共存することができます。

といっても、そんな危なっかしいことを誰がやるんだと思われる人も多いと想像したので、
まずは自分自身が被験者となり、21グラムの魂を抜き取ったうえで発表の場に立ちました。

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