鴻池 和彦/㈱cinepos代表取締役/⁠漁港口の映画館 シネマポスト支配人

円谷プロダクション入社に始まり11年間は映像製作者として。そこから11年間は下関で実家…

鴻池 和彦/㈱cinepos代表取締役/⁠漁港口の映画館 シネマポスト支配人

円谷プロダクション入社に始まり11年間は映像製作者として。そこから11年間は下関で実家の特定郵便局長を務めた。3度目の人生リスタート、2016年に㈱cineposを起業して今日。 ‘感情移入’をキーワードに映像製作を基盤としながらも映画配給上映等、様々な展開を画策し続けている。

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クリエイティブの原点

私は映像製作を生業にしているのですが、その根底には様々な媒体から影響を受けたものがベースにあります。 概ね10代から20代前半までの多感で、情報収集に敏感、直情的になんらかの刺激を受けたものによる媒体群からがすべてかもしれません。 例えば、日本史。 日本史への興味は尽きなく、実際小学3年生から学校の図書館に頻繁に出入りした記憶があり、習熟別にあった日本史の百科辞典を良く読んでいました。 興味をもったきっかけはNHKの大河ドラマだったのです。作品は『草燃える』。源氏の栄枯盛衰

    • 証を残す

      『漁港口の映画館 シネマポスト』ではポーランド映画、ミハウ・クフィェチンスキ監督作品『フィリップ』を26日(金)まで上映しております。 作家のレオポルド・ティルマンドが1961年にポーランドで発刊した小説『フィリップ』を映画化したとされます。 映画化されるに通常、脚色要素や演出は形にしていく上で施されるものと考えると、ティルマンドによる原作は半自伝的とも謳われているので、事実と小説化との接合を様々工夫を凝らしていても不思議ではありません。 また、当時のポーランドがソビエト影

      • 様々な嗜好性

        13年くらい前でしょうか。シネマポストの由来となった以前の職場において、一般的な映画ファンを自称される同僚のお二方を、地元の映画祭でプログラムにあったある映画の鑑賞にお誘いした事があります。 ホウ・シャオシェン監督の『珈琲時光』です。小津安二郎監督の生誕100年を記念し『東京物語』のオマージュという形で日本で製作された映画です。製作と配給は松竹になります。 『珈琲時光』は2000年代初頭、東京で仕事をしていた時分、ユーロスペースに映画を観にいった際に予告編で最初に観た時、琴線

        • 映画『幽霊はわがままな夢を見る』東京公開初日、2日目配給宣伝レポート

          グ スーヨン監督最新作、映画『幽霊はわがままな夢を見る』令和6年6月29日土曜日、遂に東京公開です。 ミニシアターの聖地とも言える渋谷ユーロスペースでの上映がスタートいたしました。 昨年の12月2日から8日まで下関での大盛況を博した先行上映を経て、念願の東京公開に漕ぎ着けました。 この間、様々な方々による御尽力の賜物と厚く御礼を申し上げる次第です。ユーロスペース北條支配人さまには心より感謝申し上げます。 グ監督、主要出演者による舞台挨拶、トークイベントを初日と2日目にセッ

          求道の人

          先日放送されたこちらの番組から考えてみます。 現役時代の門田博光選手がいかに凄かったか、私の世代では言うに及ばすです。 この番組では晩年の門田氏をあるジャーナリストが取材している点を軸に、彼に親しい関係者からの声をかなり集めて実像を浮き彫りにしていました。 ‘求道’ 最も現役時代の門田氏に感じられる姿勢のイメージです。 これを貫くに妥協はしない代わりに様々な影響が別の何処かに表れることになります。それが職場と家庭に他なりません。その緊張関係を維持するために一定の成績を上

          非日常性を楽しむ

          『漁港口の映画館 シネマポスト』では現在上映中『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』が6月21日まで公開となります。 上映決定に至るプロセスとして、事前にスクリーナーで確認させていただくケースがあります。いわゆるパソコン画面です。そこでは音の良し悪しは分かりません。あくまでも内容重視になります。しかる後に上映用原盤が届き、劇場での通し試写を行います。 映像の良さは当然の如く際立ち、加えて音。通常5.1chに音響設定されているケースが殆どなので、違いは各作品のミック

          自分のための時間

          こちらの記事から考えてみます。https://toyokeizai.net/articles/-/759412 真剣に取り組めるものに出会えるか否か、その後の仕事に繋がる上で興味の無いものに人はなかなか集中する難しさがあります。 仕事と呼ばれる多種他媒体の中から何らかの縁で繋がっていくにしても、概ねは生活の為にが殆どにして、結果を出すために義務的に‘覚える’と‘こなす’にまずは辿り着く必要に迫られます。 この時点で脱落してしまう人も大いにいるでしょう。これは生きる事が目的な

          一つの感情で人は生きていない

          『漁港口の映画館 シネマポスト』 現在上映作品はドイツ、フランス合作映画のアンドレアス・ドレーゼン監督作品『ミセス・クルナスvsジョージ・W・ブッシュ』 今週7日(金)までの公開となります。 謂れなき罪を着せられアメリカの重要犯罪人が収監されるというグアンタナモ収容所に送られてしまった息子を取り戻すために奮闘するトルコ系ドイツ人の母親の5年に及ぶ実話に基づくストーリーです。 この映画の面白さ、妙をこれからご覧になる方に向けて、詳細を語らずに軸だけお伝えするならば、もちろん

          小説題材に思う

          小説題材について、考えてみます。 物語を現代において構築するに、身近な人たちとの関係性や主人公の生活感、そこに何らかの仕事についてと、非常に狭いコミュニティで登場人物たちが描かれるケースが間々多いような感覚があります。 こうした私小説的な趣きは当然、現実主義を克明に描き切る経験則が活かされる利点はあります。後は構成の振り幅に書き手の裁量が図られるのです。願望=ファンタジーの度合い、その見方です。 現代系ドラマを作る一連の普遍性として、友情、信頼、孤独、刹那、それらが織りなす解

          映画作品と舞台挨拶

          『漁港口の映画館 シネマポスト』では現在公開中、小林且弥監督作品『水平線』が24日(金)まで上映となります。 公開初日と2日目には小林監督の舞台挨拶が行われました。 2日間で計3回、各20分位の舞台挨拶でしたが、全回満席、お越しいただいたお客様の真剣さ集中度合いが伝わります。小林監督も望郷の思いや本映画完成までのプロセス、作品の軸になる考え方、加えてミニシアターの大切さと、私自身も非常に熱く胸を打つお話しをしていただきました。 小林監督は下関出身です。 約20年ぶりの故郷へ

          映画系譜にある映画

          『漁港口の映画館 シネマポスト』では先日10日の金曜日迄、濱口竜介監督最新作『悪は存在しない』を上映しました。これまでの最多動員記録を更新し、多くのお客様にご鑑賞いただきました。 まずは心より感謝申し上げます。 改めて作品の訴求力を解析するに、様々な理由が幾つも挙がりますが、私はこの点のみに注目したいと思います。 原初的な方法論で世界観を構築していることです。 ・森・自然を題材に置きながらもドローンを使っていない。 ・寓話的側面を垣間見せるにCGを使っていない。 ・テレビ

          『漁港口の映画館 シネマポスト』ラインナップ紹介(令和6年5月時点)

          地方で単館系ミニシアターを営んでいると、シンプルなお訊ねをいただきます。 「上映している映画を選ぶ基準は何ですか」 「こちらで上映されている映画は知らない映画ばかりですが、何故ですか」 お訊ねの背景を端的に捉えると、普段の情報摂取の仕方がテレビと新聞が主だと考えられます。合わせて、趣向の幅が限定的な方がそれなりの数と読みます。 文化的とされる範疇には、相互認識のカテゴリーの種類とその歴史認識の度合いに対するパイ(人口)の比重に依るものが大きいと私は考えます。 東京に人が

          『漁港口の映画館 シネマポスト』ラインナップ紹介(令和6年5月時点)

          企画の現在

          現在、『漁港口の映画館 シネマポスト』では4月20日から26日迄、韓国映画『ビニールハウス』を公開しています。 主演を務めた韓国のスター女優のキム・ソヒョンはインディペンデント作品ながら出演を決めた理由として、脚本の素晴らしさを挙げていました。 脚本が良かったというのは演者側にとっては演じてみたいキャラクターと作品世界観の構築が魅力的だったと推察されます。 2次元から3次元への展開の期待です。 これは一般企業の商品開発における企画書と設計図が優れていることと同意です。結果

          映画『幽霊はわがままな夢を見る』東京公開について

          弊社cineposが配給宣伝を担っております作品について情報解禁となりました。 昨年12 月2日から8日迄、1週間限定での先行上映と銘打ってシネマサンシャイン下関で1000人を超える動員を達成した地元下関出身のグ スーヨン監督最新作『幽霊はわがままな夢を見る』の全国展開に向けた要諦と言うべき東京での公開が発表となりました。 さらに本作品は第2回横浜国際映画祭の招待作品にノミネートされました。 東京・渋谷ユーロスペースでの公開が6月29日(土)決定となり、4月と5月でどれ

          映画『幽霊はわがままな夢を見る』東京公開について

          彷徨いながら、気づく。

          『漁港口の映画館 シネマポスト』では現在、4月12日までの上映でベルギーの映画、バス・ドゥヴォス監督作品『Here』が公開されています。 アンビエント映画と呼称したくなるサウンドデザイン、その精緻でどこか内面に沁み入るような機微の風景であり静物からの生命力に触れているかのような、音から想起される‘ありのまま’に没入されていきます。 これはある種の思想への共感ではないかと感じるのです。 生と死の境界線を何処に置いているか、何気に考えたことはないでしょうか。 決して諦観ではな

          画力の信頼性

          先日、新作長編の公開に向けて準備中の金子雅和監督と電話でいろいろと会話させていただきました。 金子監督とは均すと2ヶ月毎の頻度で意見交換を取り合う間柄と言っていいでしょうか。 今後の展望にみる作品づくり。メジャーの世界観に金子監督の独創性を活かしていく方法論…今回の会話のヤマはその点にスポットがあてられました。 メジャー映画に共通するのは何らかの完結する形の提示とそのシーンの抜けの良さが多分に想像できます。問題提起型での終わり方はどちらかと言えば避けるように思います。 いわ