私は映像製作を生業にしているのですが、その根底には様々な媒体から影響を受けたものがベースにあります。 概ね10代から20代前半までの多感で、情報収集に敏感、直情的になんらかの刺激を受けたものによる媒体群からがすべてかもしれません。 例えば、日本史。 日本史への興味は尽きなく、実際小学3年生から学校の図書館に頻繁に出入りした記憶があり、習熟別にあった日本史の百科辞典を良く読んでいました。 興味をもったきっかけはNHKの大河ドラマだったのです。作品は『草燃える』。源氏の栄枯盛衰
『漁港口の映画館 シネマポスト』は第1週と第3週の土曜日から1週間限定で上映するというスタイルを採っているので、年間で第5週が土曜日の月が4回あります。つまり2週間準備期間が設けられることになります。この2週間を有効に活かして勿論、次回公開作の準備も含めて、活動できる貴重な時間でもあるのです。 今回、念願の鳥取の松崎地区にある廃校施設を再生して独特の運営スタイルで全国から映画ファンや関係者が訪れるという、かねてより注目していた jig theater(ジグシアター)にスタッ
『漁港口の映画館 シネマポスト』では先日までマルグレート・オリン監督作品『ソング・オブ・アース』が公開されていました。 おかげさまで歴代第3位の動員数でした。やはりノルウェー山脈にある大渓谷を映したダイナミズムの映像美とそこにシンクロした精緻なサウンドスケープと熟考されたサウンドトラックといった迫力の音響はかなりのインパクトを与えるものだったと思われます。 大自然、老夫婦、製作総指揮にヴィム・ヴェンダースが名を連ねている3点のキーワードがポスターデザインからよく伝わっていた
グリム童話の『ハーメルンの笛吹き男』を小学生の頃、本やアニメーションで知るにつけ、私にはやはり不気味な感覚が優先して違和感が拭えずに感じたものでした。 物語概要は以下です。 何処から現れたか不明な男により、その町を悩ませていた蔓延るネズミについて、駆除できたあかつきには金貨の褒賞を受け取る契約を町と結ぶます。不思議な笛の音色に導かれた大量のネズミは男によって無事駆除されますが、町との約束は履行されませんでした。失望した男は笛の音色を奏でながら町を練り歩き、音色に引き寄せられ
『漁港口の映画館 シネマポスト』を開設して2年目に入りました。 スピードに追われながらも次第にリズムを掴み出している現在と言ったところでしょうか。 ラインナップがある程度先まで確定していれば多少の安心感が持てます。 店舗ビジネスをされておられる方には、媒体は違えども概ねの共通点はあるかと思ういくつかを考えてみます。 一つ目は季節に応じた気温変化への対応です。日本には四季があったはずですが、もはや5月中旬から10月いっぱいまでは夏と言って過言ではありません。 11月は中旬まで
『漁港口の映画館 シネマポスト』ではレア・フェネール監督作品『助産師たちの夜が明ける』が11月8日(金)まで上映となっております。 タイトルに助産師とありますので、いわゆる社会派的側面の強い映画であることは予め想像できると思います。 そこで社会派映画とはどこまでの範疇、範囲を社会派とみなすのか…私の考えを申し上げますと、まずは以下の前提が基本にあります。 ・個から多である ・多の中で共通する問題事案がある ・法律や行政に触れている事案 若干硬い言い回しですが、例えば松本
「Asian Film Joint 2024 プレイベント 1」 ユネスコが制定する「世界視聴覚遺産の日(10/27)」を記念して、福岡市総合図書館フィルムアーカイヴとAsian Film Jointが共同で企画した特別プログラムが開催されました。午後のプログラムでは『GIFT』の公演が福岡市総合図書館映像ホール・シネラで『GIFT』(2023/日本/74分) の上映、演奏に音楽家・石橋英子さんのパフォーマンスが催されました。 今年の5月に『漁港口の映画館 シネマポスト』で
日本は現在、世界中で最も訪れたい国、観光ランキングで1位である事はご存知でしょうか。 砕けて言えば、ロケーション、食事、宿泊、接客が極めて優秀だとされているのです。 日本に住んでいて当たり前に感じる事が海外の方にはある種の感動を与えているのです。 そこで逆行するかのように、相対的にサービスし過ぎだったので、労働対価に換算して赤字が出るため止めますという業種カテゴリーも昨今あるかと思われます。 かつて勤めていた郵便局は象徴的です。 この10月からかなりの郵便料金の値上げに踏
大貫妙子のディスコグラフィから名盤として名高い坂本龍一プロデュースの3作品『SUNSHOWER』『ROMANTIQUE』『LUCY』を聴き比べてみます。 『SUNSHOWER』は1977年発表。ソウルフィーリング、フュージョンテイストと抑制された大貫さんのクールボーカルが相まってアレンジの聴き心地を堪能できます。演奏者もティン・パン・アレー関連から様々と申し分ないグルーヴ感に溢れたこれぞ70年代を象徴した洋楽フレーブな逸品です。この時代にこれだけのハイセンス且つハイクオリテ
『漁港口の映画館 シネマポスト』では黒沢清監督待望の新作『Chime』が10月11日迄公開となります。 作品から派生して不可解について考えてみます。 奪うことが目的による詐欺、暴力や殺人といった謂わば欲望に起因した自分本位の犯罪行為は明確な罪と罰が付帯します。 一方で世の中には不可解な事件が横行しています。起こした側が神経衰弱で括られる理不尽な顛末です。 刑法39条には「心神喪失者の行為は罰しない」そして「心神耗弱者の行為は刑を減軽する」というこの2つは任意ではなく、義務で
バランス主義はややもすると妥協しやすい状況に総じて陥りやすい傾向があります。 日本という国は地政学的に北にロシア、日本海を挟んで朝鮮半島、さらに沖縄県内から10キロ先に台湾、そしてすぐ先に中国大陸があります。 第二次大戦後のアジアの動乱に台湾建国、朝鮮戦争、ベトナム戦争が勃発し、その当時から推移して現在に至る重要なポイントはやはり中国の動向です。 こと東アジアにおける経済のリーダーシップが日本から中国にシフトチェンジしてしまった点は非常に大きいと考えます。1990年代初頭は
新作が公開、一線で活躍し続けている脚本家、映画監督の三谷幸喜氏。 彼の多くのライブラリーから最も好きな作品を選ぶとしたら、私は『合い言葉は勇気』になります。1990年代半ばの連続テレビドラマです。素晴らしい作品ですので、未見の方にはオススメしたくなります。 どのような作品かはこの稿では割愛します。 当時番組終了後、数年以内に『合い言葉は勇気』の脚本が文庫本で発刊されました。勿論購入し読了するのですが、私はその折で初めて三谷氏の脚本を目にしました。 そこで、まず衝撃を受けます。
私は何冊かを並行して読む習慣があります。今日はこの本という具合です。 このところ昭和を代表する女優の一人、高峰秀子著『台所のオーケストラ』を就寝前、何章か読んで眠りにつきます。 様々な食材を題材に100種類以上の項目(章立て)から構成されたエッセイです。 戦前より活躍、主演作品で不朽の名作『浮雲』を始めとして巨匠・成瀬巳喜男監督の一連の作品での出演、『カルメン故郷に帰る』『二十四の瞳』の主演にして木下惠介監督作品一連等、多くの巨匠・名匠に愛された大女優の高峰秀子のもう一つの
ちょっとしたことにイラつきを覚えることがあります。 本当にちょっとしたことなのです。 そこにのめり込んで粘着質になってしまえば、恐らく取返しのつかない所まで行ってしまう可能性はあります。 ‘流す余裕’コレをオススメします。 数時間後、大抵の事は忘れてしまう事ばかりです。何故なら、ちょっとしたことのレベルに他ならないからです。しかしながら主観の相違で他人から見れば大した事ではないと思えし事象が本人にとっては存在意義に直結する事象もあり、ちょっとした事は各人の捉え方でもありますが
映画ジャンルの中で様々クロスオーバーできるアイテム、テーマになりやすい方法論として‘サスペンス’を描くがあります。 簡単に言えば謎解きとも言い換えられます。ドラマツルギーという構成や展開において謎解きを含ませていくことで、ストーリーに多面性をもたせられるだけでなく、視聴側を引き付ける訴求力を生み出しやすくなります。 そこで、サスペンスというアイテムをどのように使用するか、空気感をどのように演出するかは、これぞプロデュースワークと作家性が浮き彫りになり、差別化が図れるポイントな
『漁港口の映画館 シネマポスト』の8月公開作品は往時を知る誰しもの記憶に残り続けるであろう二人の音楽家、加藤和彦とジョン・レノンのドキュメンタリー映画でした。 2作品に共通するのは鑑賞後の余韻を引き摺る点です。それは彼らがエヴァグリーンな存在として、音楽動機からの展開と躍動に惹きつけられた時代の空気感も含めて、どうしても人の生涯であるにも関わらず、光と影のコントラストを運命論で収めざるを得ない寂寥感から逃れられないからです。 2人が遺した音楽とその寂寥感が不思議とシンクロしま