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先日放送されたこちらの番組から考えてみます。

現役時代の門田博光選手がいかに凄かったか、私の世代では言うに及ばすです。
この番組では晩年の門田氏をあるジャーナリストが取材している点を軸に、彼に親しい関係者からの声をかなり集めて実像を浮き彫りにしていました。

‘求道’

最も現役時代の門田氏に感じられる姿勢のイメージです。
これを貫くに妥協はしない代わりに様々な影響が別の何処かに表れることになります。それが職場と家庭に他なりません。その緊張関係を維持するために一定の成績を上げ続けていかなくてはならないプレッシャーは尋常ではなかったでしょう。
チームという職場では誰の言葉も受け入れることなく、家庭でも憩いの時間を過ごすことは少なく、24時間自身の打撃向上のことだけを考え続ける日々だったという…まさに野球道を究めて行く求道に専心していたのです。
ファンはバッターボックスの門田氏にしか注目しないので、興味は打つか打たないかその結果のみに集中します。
20年以上、その視線と声援を浴び続けるに値する耐性と言う言葉を使いますが、プロフェッショナルに生きる人間の業を思わずにはおれなくなります。
この耐性を担うことこそ、カタルシスでありアイデンティティだったのだと。

晩年の透析を患いながら、恐らくノンプロ時代を過ごした場所に近い相生の山間部に居を構えて、独り過ごす日々に歴史上の剣豪である宮本武蔵と重なって映ります。端から見える華々しさからの孤独の余生、終着の心持ちです。

かねがね私は歴代ホームラン数、第3位の門田氏が引退後、何故指導者への声がかからなかったのか不思議でした。
ご自身が恐らく向いてない自覚がお有りだったのでは程度の推察をしていたのですが、このドキュメンタリーを観る限り逆に球界が門田氏を特異な存在として敬遠したと見ます。協調性や従順なタイプを組織人としての前提条件に置きたがる、リスクヘッジです。

亡くなる少し前くらいの肉声が興味深く、大リーグで活躍中の大谷翔平のバッティングパターンについて、
「流してスタンドに入ることを覚えたらアカンで。センターから右にまた入りだしたやろ、ホッとしている」
100%のスイングが型を作る。
楽をして成果を得られたら当然、型は崩れ調子まで落とすのだと諭す門田氏の哲学があります。

求道は職人気質から成り立っていくものかもしれません。楽して儲けたい、直ぐに好結果を出したいと思考する性格ではなかなか求道の方向はあり得ないかもしれません。

信じるものに全身で向き合う事、自分を偽らない。
門田博光氏から学びます。

【インフォメーション】
昨年12月に下関で先行上映を行ない、大盛況を博したグ スーヨン監督作品『幽霊はわがままな夢を見る』が今週末29日(土)より東京・渋谷ユーロスペースにて全国公開への先鞭をつけます。

全国公開版ポスター

詳細は公式ホームページ、専用SNSサイトにて御参照ください。

他続々全国上映館も確定しております。
下関ご出身の方には勿論、鬼才・グ スーヨン監督の待望の新作です。
ぜひ劇場に足をお運びいただけますようお願い申し上げます🙇


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