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先日、新作長編の公開に向けて準備中の金子雅和監督と電話でいろいろと会話させていただきました。
金子監督とは均すと2ヶ月毎の頻度で意見交換を取り合う間柄と言っていいでしょうか。
今後の展望にみる作品づくり。メジャーの世界観に金子監督の独創性を活かしていく方法論…今回の会話のヤマはその点にスポットがあてられました。

メジャー映画に共通するのは何らかの完結する形の提示とそのシーンの抜けの良さが多分に想像できます。問題提起型での終わり方はどちらかと言えば避けるように思います。
いわゆる娯楽の考え方がわかり易さに努めるべきだとする点、これが総じて抜けの良さに繋がります。確かに往時の大作映画も案外、それは意識して観客からの評価に繋げた感も否めないと感じます。
しかしながら、カウンター文化、アンチテーゼとしての1950年代中頃から興ったフランスでのヌーヴェルバーグの潮流を受けての1960年代後半から1970年代にかけてのアメリカン・ニューシネマは大いに観客を惑わさせて已まなかったと思うのです。
代表的な作品に『ゴッドファーザー』と『イージーライダー』は欠かせません。
ドラマツルギーとしての構築方法は異なる2作ですが、共通するのはリアリズムです。人間の内面に強力に照射した構成は圧倒的な画力により、否が応でもそのテーマに惹き込まれていきます。
時代性も後押ししたとも言えますが、従来のハリウッドパターンとは明らかに異なるムーブメントがその時代のトレンドであり、アメリカ映画の幅を作っていったのです。

現在、アカデミー作品賞への共通項として社会派トーンを含んでいるものが概ね基本原則のようにも映ります。
「映画は社会を映す鏡」
この言葉は様々な映画監督からよく発せられます。
そうして考えると言わずもがなで、映画=娯楽の概念ももっと多様な考えを持ち合わせて良い筈なのです。

とは言えど、日本のメジャーシーンで製作される作品に登場する様々なアイテムからは、知名度からなる訴求性を軸に置くベースがあり、その知名度はテレビで有名になったタレントが映画製作における主要配役に起用される点、ベストセラー漫画に芥川賞、直木賞等の受賞作品、高視聴率テレビドラマの映画化である点、つまりは担保が必要なのです。

この現況下でメジャーの理解を得て、資金繰りを行うオリジナル作品で勝負するハードルの高さはなかなかなものがあるのも確かです。
さらに日本の映画興業はやはりカンヌよりもアカデミーという箔の感じ方があり、メジャーとミニシアターの立ち位置があまりにも鮮明であるのも、特異な市場と言わざるを得ません。

金子監督作品がメジャーでの興業で多くの映画ファンに観ていただきたいと願ってやまない1人として、多くの日本映画とは一線を画す画力の信頼性こそ、私は大きな突破口となるものと信じて疑いません。
道程は有るものの、私には目標や志をもってクリエイティブに邁進されている金子監督とお話しをしていると逆に元気をいただきます。

まずはぜひ公開準備中の新作をシネマポストで公開させていただきたいと思っております。

【漁港口の映画館 シネマポスト 次回上映作品のご紹介】

今週末4月6日(土)〜4月12日(金)迄上映!

『Here』
監督・脚本:バス・ドゥヴォス 
撮影:グリム・ヴァンデケルクホフ 
音楽:ブレヒト・アミール 
音響:ボリス・デバッケレ
出演:シュテファン・ゴタ、リヨ・ゴン、サーディア・ベンタイブ、テオドール・コルバン、セドリック・ルヴエゾ

2023/ベルギー/オランダ語・フランス語・ルーマニア語・中国語/83分/DCP(16mm撮影)/カラー/スタンダード(1.33:1)/G/日本語字幕:手束紀子/配給:サニーフィルム
©Quetzalcoatl

いま最も繊細で美しく、最も心震わせる映像を紡ぐベルギーの映画監督、バス・ドゥヴォス。今回シネマポストで上映される作品『Here』はベルリンが熱狂、最高傑作とされる作品が待望の日本公開となります!どうぞご期待ください。





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