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あたらしいキャリア論『ライフピボット』 の 「はじめに」 を全文公開!

「議論で新結合を生み出す」を活動ビジョンに新しい職業とコミュニティを生み出し続けている黒田悠介氏による「人生100年時代の転身術」。人生が長期化した反面、わたしたちのライフスタイルはむしろ短期化し、かつてのように1つや2つのゴールを目指すような未来は描けなくなりました。変化の早い激動の時代にあっては、いくつもライフスタイルを転換(ピボット)しながら生きることが当たり前になりました。本書では、そのような生き方を「ライフピボット」と命名。いつだって、いくつになっても自分らしい選択をし続けられるような考え方や行動指針を体系化しました。日々の行動は「三つの蓄積」「三つの行動原理」「六つのアクション」を足場とし、時に偶然を味方につけながら、いつでも何歳でも縦横無尽に未来を描く方法を解説します。「自分の将来が見えない」「選択肢が多くて決められない」「やりたいことがわからない」という人にはぜひ読んでほしい一冊です。


『ライフピボット』は、2000人以上のキャリア相談に乗った経験を詰め込んだ、自分らしいキャリアパスを描くための指南書です。転職/独立/起業/複業などを繰り返して人生100年時代を乗りこなす、コロナ禍でもキャリアを停滞させない転身術として、みなさんの役に立てたら嬉しいです。

今回、この本が出版されるにあたって自分自身のことを振り返ってみたのですが、どうやらわたしの経歴には一貫性がありません。転身の連続です。

3年間でベンチャー2社を経て起業。その後2年弱で代表を交代し、会社員としてキャリアコンサルタントに転職。また2年後にはフリーランスとして独立。それからまた2年後にはコミュニティをいくつか立ち上げ(いくつかは失敗し)、そこから3年経って今度は本を出版する。

いつまでもフラフラしてないで一本筋を通した生きかたをしたほうが良いんじゃなかと本気で悩んだこともあります。履歴書は汚いし、ジョブホッパーと揶揄されるタイプの生き方でもある。でも、好奇心が赴くほうへ進んでいくような、蛇行するキャリアの軌跡しか、わたしには描けませんでした。

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しかし、そんな生き方もアリなんじゃないかと、この『ライフピボット』では伝えたい。人生はそもそも転換(ピボット)の連続なんだととらえて、縦横無尽にキャリアの舵取りをする方法についてまとめました。

もしかしたら多くの人に受け入れられるかもしれないし、受け入れられないかもしれない。不安もあるけれど、ワクワクもしています。

どちらにせよ、この本をいろいろな人に読んでもらって、反応がほしいのです。だから、立ち読み感覚で読み始めてもらえるように、こうして「はじめに」を公開することにしました。

ぜひ、この「はじめに」だけでも読んでみてください。ではどうぞ。


キャリアを転換できる人とできない人

わたしは数年来、キャリアについて対話することを趣味としてきました。それで気づいたのは、同じような境遇にもかかわらず全く違うキャリア観の人たちがいることです。

どちらも同じ業界の大手企業の会社員であることは変わらないのに、ある人は次々に面白いプロジェクトに飛び込む一方、ある人は毎日同じことの繰り返しに鬱屈している。

また、どちらもフリーランスであることは変わらないのに、ある人は自分の肩書きを柔軟に変えながら進化し続ける一方、ある人は同じようなタスクをこなすだけの日々に行き詰まりを感じている。

両者の差は性格の違いでしょうか。たとえば外向的な人のほうがいろんなチャンスがやってきて、人生の場面がどんどん転換していくイメージがあります。でも、内向的な人にもそういった転換を繰り返すタイプの人はいるのです。むしろ、内向的なおかげで自己理解が深く、的確にキャリアを転換できている人もいました。あまり性格は関係なさそうです。

同じように、学歴、年齢、性別などもあまり関係がないようでした。

では一体、キャリアを転換できる人とできない人には、どんな差があるのでしょうか?わたしはそれがずっと気になり続けていました。

もしこのキャリアの転換に法則があり、それを整理して誰にでも実践できるアクションやマインドセットに落とし込めたら、いままでキャリアについて対話してきた人たちの役に立てるかもしれない。

それだけではなく、この変化の激しい人生100年時代を生きるあらゆる人にとって、自分自身の手でキャリアをデザインする指針にもなるんじゃないか。その想いが本書の執筆のキッカケでした。

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一人ひとりが自身の働き方を肯定できる新しいキャリア観

一言で言えば、本書は現代のキャリアにおける成功についての本です。しかし、「キャリアにおける成功」とは一体何を指しているのでしょうか。昇進すること、それともたくさん稼ぐことでしょうか。

かつてはそういった基準を持つ人もたくさんいました。仕事に人生を捧げるように働いていた「モーレツ社員」や「企業戦士」がその象徴です。戦後の復興と高度経済成長期を支えたのはこうしたサラリーマンの存在でした。当時は働けば働くほど収入が上がっていたそうです。

しかし、それも今は昔。かつて日本を支えた長時間労働は働き方改革とともに終息を迎えつつある。いまでは週休3、4日制を導入する企業もあるくらいです。その分給料は落ちますが、副業で稼ぐこともできる。加えて、フリーランスになって自分の好きなことを仕事にする人も増えています。

働き方は昭和から平成、令和にかけてガラッと変わりました。

働き方が多様化するにしたがって、年収と地位を高め「上へ上へ」と昇っていく上方向の矢印だけでは、キャリアの成功は測れなくなりました。では、現代のわたしたちはどのように自分や他人のキャリアの成功を判断しているのでしょうか?

一つ目の判断軸は「やりたいことをやっている」こと。それはつまり、自分のやりたいことをわかっていて、それを仕事にできているということです。自分の内面からの矢印が、やりたいことに向けて伸びている状態。

二つ目が「将来の見通しが立っている」ことです。将来実現させたいことを明確に持ち、その未来に向けたキャリアを歩んでいるかどうか。未来に向けた矢印が明確であれば、その人のキャリアは順調だというわけです。

こうした「内面からの矢印」も「未来への矢印」も、360度あらゆる方向に伸びる可能性があり、その向きは人によって異なります。矢印の向きがたった一つの上方向しかなかった「上へ上へ」の時代に比べて、キャリアの成功の基準となる矢印の向きは多様化したわけです。選択肢が増えたわけですから、これは喜ばしいことでしょう。

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しかし、このような多様な選択肢があることで、悩む人もいます。誰もがやりたいことを仕事にできているわけではないし、キャリアプランが明確な人ばかりではありませんから。

では、そういった「やりたいことができていない」「将来の見通しが立たない」という状態にあるときに、その人のキャリアは失敗なのでしょうか?

メディアに取り上げられる成功者たちを見ると、たしかにやりたいことをやっているようだし、将来の見通しが立っているようでもある。だからわたしたちのなかにも、彼らのように「やりたいことをやるべきだ」「将来の見通しが立っているべきだ」というべき論が横行するのもわかります。

でも、実際には多くの人がそうではない。わたし自身、本書執筆時の35 歳になってもやりたいことは明確ではないし、フリーランスという働き方ゆえに将来の見通しも立っているとは言い難い。

このように一部の成功者にしか当てはまらない判断軸は、大多数の人にとって意味がありません。だとしたら、自分自身のキャリアを多くの人が肯定できる新しいキャリア観が必要です。わたしは本書でその新しいキャリア観を提示し、仕事や人生と向き合う新しい方法もお伝えしたいのです。


通説に悩まされる必要はない

わたしは2013年から2年間、スローガン株式会社という企業でキャリアコンサルタントをしていました。担当していたのは大学生。毎日のように彼らの就活や進路の相談に乗ったり、会社選びや選考対策の講座を開催したりしていました。

その後、2015年にフリーランスとして独立してからの6年間は本業としてではなく、請われるカタチでキャリア相談に乗ってきました。お相手は様々で、会社員、フリーランス、経営者、中高生や大学生など。

2013年からの約8年間で、キャリアについて対話したのは延べ2000人以上。こうした対話のおかげでキャリア観についての個人差に関心を持ったことは先ほど述べた通りです。

それだけでなく、対話を通じて多くの人が先ほどの「キャリアにおける成功の判断軸」に囚われていることも知りました。

実際、キャリア相談によく出てくる悩みの一つが「やりたいことがわからない」というもの。この言葉の裏には「やりたいことを仕事にするのが理想的である」「やりたいことを早く見つけなければならない」という強迫観念に近いものがあるようです。進路に悩む中高生や就職活動中の大学生から定年退職間近の会社員まで、この通説にさいなまれているようでした。

同様に「将来の見通しが立たない」というのもキャリア相談における頻出ワードです。「いまの会社にいても同じ仕事の繰り返しで、転職したいができるかどうかわからない」「フリーランスでいつまでやっていけるだろう」と言うのです。また、就活生が会社を選ぶときにも、ある程度先のキャリアまで見越しておきたいようです。わたしたちは「将来の見通しが立っていなければならない」「キャリアの計画を立てて進んでいくのが理想的だ」と思い込んでいるのかもしれません。ここにもやはり不要なべき論が潜んでいる。

しかし、例外があることも、こうした対話のなかで気づきました。「やりたいことがわからない」「将来の見通しが立たない」という状況でも、一向に悩んでおらず、むしろ前向きに捉えて主体的に活動している人がたくさんいるのです。

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彼らの考え方にふれるなかで、わたしのなかでも認識が変わっていきました。「やりたいことがわからない」のは当たり前。やりたいことが明確にある人は実は少数派で、多くの人はやりたいことがハッキリしていない。だから、やりたいことがなくても焦る必要はありません。いろいろなことを体験するなかで、やりたいことが見つかることもあるでしょう。それが見つかったら、キャリアを転換していけばいいのです。「やりたいことがわからない」のではなく、「やりたいことを探している最中」なのです。

同様に「将来の見通しが立たない」のも気にする必要はありません。わたしだって、3年先で自分が何をしているかはわかりません。キャリアの先が見えないのは誰しも同じだと思います。世の中の変化も早いですし、自分自身も変化していくでしょう。だから、予測は成り立たないことが多い。未来の心配をするよりは、いまできることをやり、未来に備えておくのがよいでしょう。そして、未来の世の中や自分自身に適応するカタチで、キャリアを転換すればいいのです。「将来の見通しが立たない」のではなく、「将来の見通しが立たなくても構わない」のです。


経験による「蓄積」と「偶然」がキャリアの転換を実現する

どちらにしても重要なことは「キャリアの転換」です。いつでもキャリアの転換ができる準備をしておけば、やりたいことを見つけたときに選び取ることもできますし、将来の見通しが立たなくても常に状況に適応しながらキャリアを前進させることができます。

では、キャリアの転換に必要な準備とはなんでしょうか? わたしが仕事で出会ったクライアントや主宰するコミュニティのメンバーのなかには、何度もキャリアを転換して、多彩な経験をしてきた面白い人たちがいます。彼らのやり方がさらなるヒントを与えてくれました。

キャリアの転換に必要だったものを聞いてみると、最初は「たまたま」「運がよくて」という謙虚な発言が続きます。おそらく、「偶然」もキャリアの転換に重要な要素なのでしょう。

そこからさらに踏み込んで聞いてみると、彼らが様々な経験をしながら、様々なものを蓄積してきたことがわかってきました。「蓄積」と「偶然」。どちらも目に見えない曖昧なものですが、これこそがキャリアの転換に必要なものだと感じました。

では、わたしたちは、一体どんな経験をして、何を蓄積し、それをどう使ってキャリアを転換すればいいのでしょうか? 本書では、こうした一連の流れについて自身の経験や様々な人との対話、さらに心理学や社会学などの知見をもとに体系化した「ライフピボット」というコンセプトを提唱します。

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ライフピボットとは、過去の経験による蓄積を足場にして、着実に新しいキャリアへと一歩を踏み出す考え方です。いまのキャリアに不満がある人はそこから抜け出すために。特に不満がない人も、より望ましいキャリアへの転換のために、ライフピボットの考え方が使えるでしょう。

後述するように、わたしたちは仕事の経験を通じて「三つの蓄積」を貯めていく必要があります。そして、その蓄積には「六つのアクション」が有効です。いまのキャリアにほんの少しの工夫をすることで、誰でもいつからでも始められるアクションです。どんな状況からでも始められ、かつその後は連鎖的にいつでもキャリアの転換が可能になるでしょう。

本書をキッカケに自分でキャリアの舵取りをできるようになる人が増えれば、これ以上の喜びはありません。

本書ではまず第1章で現代にライフピボットの考え方が必要になった背景についてご説明します。人生というゲームのルールが変わり、事前に計画を立てるキャリアプランという考え方が成り立たない時代になったのです。第2章では、具体的にライフピボットを実践する流れをご説明します。経験によって何を得るべきか、それをどう使えばライフピボットできるのかを示します。第3章と第4章では、ライフピボットに備えるための具体的なアクションとそのマインドセットをご紹介し、第5章ではライフピボットを繰り返した先にある未来の働き方について示します。

わたしたちは100年生き、半世紀以上働く時代に突入しようとしています。地図は常に塗り替わり、コンパスが指し示す方角も定まりません。そんな時代にわたしたちが進み続けるために必要なのは、一歩ずつでも着実に踏み出すことができる「ライフピボット」の力です。

あなたにとって、本書がその第一歩となれば嬉しいです。

黒田悠介

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『ライフピボット』の「はじめに」は以上です。

もし興味を持っていただけたら、手にとっていただけたら嬉しいです。



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