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本の紹介 駒井稔・「光文社古典新訳文庫」編集部(編著)「文学こそ最高の教養である」光文社新書

本の紹介 駒井稔・「光文社古典新訳文庫」編集部(編著)「文学こそ最高の教養である」光文社新書

「光文社古典新訳文庫」といえば、日本や世界の古典文学の斬新な新訳を出しているシリーズとして有名なものです。

2006年9月に創刊され、今でも新作が出されています。

表紙のデザインは望月 通陽(もちづき みちあき)。印象的な線画が、ゆるやかに古典の世界へいざなってくれます。

日本の古典文学では、以下の作品が現段階で出版されています。(訳者)

歎異抄(川村湊・文芸評論家)

梁塵秘抄(川村湊・

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本の紹介 渡辺祐真(編)「みんなで読む源氏物語」

本の紹介 渡辺祐真(編)「みんなで読む源氏物語」

この本は、源氏物語について、さまざまなテーマで楽しむことができる本です。

源氏物語を読み味わうときに、どんな楽しみ方があるのか。有名なあの人は、源氏物語をどのように読んでいるのか。

そんなふうに、いろんな人の目を通して見えてくる源氏物語を楽しめる本です。

構成と概要は次の通りです。

第1章 『源氏』ってどんな物語?――あらすじと主要人物を一気に知る

書評家・文筆家で、この本の編者でもある

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本の紹介 馬場あき子「掌編 源氏物語」

本の紹介 馬場あき子「掌編 源氏物語」

馬場あき子「掌編 源氏物語」(2024)潮出版社「源氏物語を読みたいのですが、何から読めばいいですか?」と言われたら、今なら真っ先にこの本をあげるでしょう。

この本は、「掌編」とあるとおり、源氏物語の抜粋をまとめたものになっています。

54帖全てを収録この本の良さは、まず、54帖全てが収録されていることです。

源氏物語は、「帖(じょう)」という、まとまりに分かれています。概ね、この帖ごとに物

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本の紹介 伊勢谷武「アマテラスの暗号」

本の紹介 伊勢谷武「アマテラスの暗号」

伊勢谷武「アマテラスの暗号」(2024)宝島社この小説は、次の一文から始まります。

そう、この小説は単なるフィクションではなく、一面の真実をもとに描かれている物語なのです。

「アマテラス」とは、古事記(こじき)や日本書紀(にほんしょき)に出てくる神話の神の名前です。現在では三重県の伊勢神宮に祀られていることで知られています。

この「アマテラス」を取り巻く伝説や記述をもとに、主人公の父の殺害事

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本の紹介 上野誠「おもしろ古典教室」

本の紹介 上野誠「おもしろ古典教室」

上野誠「ちくまプリマ―新書033 おもしろ古典教室」(2006)筑摩書房上野誠(うえのまこと)さんは、奈良大学の教授で、万葉集研究で知られている方です。メディアにもたびたび出演する、親しみやすくわかりやすい解説で人気の研究者です。

この本は、その上野さんの自伝的なお話とともに、身近な話題から古典の世界に入っていきます。

まるで上野さんの講義を聴いているような、軽快で親しみのあり、余談も多く含ま

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本の紹介 海猫沢めろん(訳)「古事記」

本の紹介 海猫沢めろん(訳)「古事記」

海猫沢めろん(訳)「BL古典セレクション② 古事記」左右社「BL古典セレクション」とある通り、いわゆる古典作品をBL風にリメイクした作品なのですが、非常に興味深い作品になっています。

そもそも、古事記(こじき)に登場する神々には、性別が明示されていないことも多いのです。特に上巻の登場する神々の性別は、さまざまに解釈することができます。

この本の中では、一般的に女性として解釈されるイザナミ、アマ

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本の紹介 山崎ナオコーラ「ミライの源氏物語」

本の紹介 山崎ナオコーラ「ミライの源氏物語」

山崎ナオコーラ「ミライの源氏物語」(2023)淡交社この本は、源氏物語(げんじものがたり)を題にしていながらも、そのテーマは現代的な問題です。

取り上げているテーマは以下の通り。まさに現代の諸問題がテーマとして扱われています。

時に古典の世界で描かれることは、現代に置き換えれば問題とされることがあります。しかし、それは当時としては問題なかった、昔の話だから、と片付けられることも多いのです。それ

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