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「大楠」目当てに寺社を巡る〈後編〉

前回はこちらです↓↓↓


後編に入る前に、楠木について少し語ります。

よく洋服の防虫剤として使われる「樟脳しょうのう」ですが、その成分を多分に含んでいるのが楠木です。

クスノキの葉や枝などのチップを水蒸気蒸留すると結晶として得ることができる

Wikipedia

クスノキの枝や葉を嗅いでみると、独特の匂いがあり、それこそが「樟脳」なのです。

この「樟脳」の匂いを嫌う方もおられますが、私は好きです。
なんとなく昔懐かしいような思いに駆られるからです。
昔、おばあちゃん子だった私は、祖母について衣替えのお手伝いをするたびに、嗅いだ香りであり、なんともいえない郷愁の思いが蘇るのです。

その名の語源も「クスリの木」だとも言われているクスノキは、その成分ゆえに自らを害虫から守る事で、思い存分、大きくなる事ができたのでしょう。

温暖な気候でしか生育しないため、日本では関東から南にしか見られないようです。
前編でも、それより以北にお住いの方々から楠は観た記憶がないとコメントもいただきました。

やはり「大楠」は大阪だからこそ見られるものなのかもしれません。


さて、この日は簡単なランチを済ませた後、駐車場まで「すみよっさん」の参道を抜けて、また大楠めぐりに出発しました。


すみよっさんの参道を西へ抜けると、
「住吉公園」が広がっていて、市民の憩いの場となっています。



杭全くまた神社

大楠の話に入る前に、この神社名をまともに読めた人は少ないのかもしれません。

「杭全」と書いて

くまた

と読みます。

「杭全(くまた)」は、平野川が西除川や東除川など複数の河川に分岐していた地形で、「川俣(かわまた)」が転訛して「くまた」になったとされている。

LIFUL HOME'S

諸説ありますが上記が一番の有力説のようです。

もしかしたら、すんなり読めるのは、この地名に慣れ親しんだ関西人だけかもしれません。

大阪の地名は難読なものが意外と多いので、後日また記事にしたいと思います。


さて、当記事のトップ画像は「杭全神社」の入り口であり、入ってすぐの左手に驚くほど立派な楠木がありました。

しっかり玉垣に囲まれて大切に扱われいるのが一目でわかります。

近くで見てみると、うねるようなコブが連なっていて、
ドッシリと根を張っている様子がわかります。


樹齢1000年
幹周10m
樹高30m

幹周はこの幹の位置によって変わってきますが、一番太いところなのでしょう。

それにしても幹の太さといい、枝ぶりといい、それまでに見た楠木とは段違いの迫力に二人そろって感嘆してしまいました。


拝殿前の参道はなぜ曲がっている?

ここだけではなく寺社の参道は角度がつけられていて、山門から見ると本堂(本殿)は真正面にはありません。

チコさんとそういう話題になり、その理由を何かで読んだような記憶があるのですが、当日は思い出せなかったので調べてみました。

これもまた確定できる理由はなく、大まかに次の3つが挙げられるようです。

1:神道と仏教の混同説
元々、神道では真正面は神様の通り道であり鎮座される位置なので、正面は避けられていました。
それを神仏習合の影響で寺院にも踏襲された。

2:後姿を神様(仏様)に向けない説
お参りして帰る際にどうしても背中(お尻)を向けてしまい失礼にあたるから。

3:防御を考えた説
歴史を見ると寺社は日本の文化や政治の発信地になる事が多く、僧侶などが政治に関与してきました。
それだけに重大な機密場所であり要人たちが集まるため、防御が必要だった。

チコさんはその場で即答したのはでした。
私は王道ののように思いますが、どうでしょうか?

神と仏を混同するなんて世界的に見たら邪道ですが、逆に日本らしい唯一無二の考え方として捉える事もできますね。


ここも牛頭天王

上記の拝殿の後ろに回ると本殿があります。
その第一本殿が「祇園社」で、祀られているのは素戔嗚尊スサノオノミコト、すなわち牛頭天王ごずてんのうなのです。

実はこの日最初に回った阿麻美許曾あまみこそ神社も、我が家の氏神様である布忍ぬのせ神社も同じ神様で、京都の八坂神社を大本社として全国に2300社もあるらしく、このあたりにもなかなかの幅を利かせています(笑)


①第一本殿 ②第二本殿 ③第三本殿 ④若一王子社 ⑤八王子社 ⑥天満宮 ⑦皇大神宮 ⑧稲荷社 ⑨鎮守社 ⑩十柱社 ⑪田村社 ⑫恵比須社 ⑬拝殿 ⑭絵馬堂 ⑮宝蔵 ⑯大門 ⑰社務所 ⑱連歌所 ⑲瑞鳳殿
出典:杭全神社


下手やなぁ💦



三島みつしま神社

この日の大トリに相応しい神社です。
「みしま」ではなく「みつしま」と読みます。
チコさんいわく、ここの大楠こそトリを飾るには相応しいと推されたのです。

樹齢:1000年
幹周:13m
幹高:30m

「ゲッ!すご!!なにこれ。」
思わず声に出るほどの大迫力で、その姿はまさしく「神」そのものです。

私たちがいる間にも数名の方々がこの木をさすり、もたれかけ、パワーを貰いに来られていました。

先ほどの大楠と高さは変わらないのですが、この幹の太さと大蛇のようにうねりながら迫りくる様子には圧倒されます。

大阪ではNO1の巨樹であり国の天然記念物に指定され「薫蓋樟くんがいしょう」と名付けられた別格の大楠なのです。
 
大人8人、イヤ9人ぐらいが手を繋いでやっと一周できるぐらいでしょうか?

その迫力に完全に気圧されてしまい、チコさんがこの木を最後に見せてくれた意味が十分にわかりました。

幕末に岩倉具視らとともに活躍した公家・千種有文ちぐさありふみによる歌碑がありました。

~村雨の雨やどりせし唐土もろこし
松におとらぬくすぞこのくす

「中国・秦の始皇帝が急な雨に降られて雨宿りした大きな松に爵位を授けた逸話があるが、それに劣らぬほどの楠である。」

この歌が名前の由来となりました。


もうちょっとヤル気出して欲しい

実はこれだけの大楠を御神木としながら、なんとも残念な神社でありました💦

〈ツッコミ1〉大楠の全容が観れない
上記の写真でもわかるように、門と拝殿の間の極端に狭いところに窮屈そうにそびえています。

全容を収めようと参道を入口のギリギリまで後退すると門が邪魔。
かといって門内に入ると上記のように幹の根本しか拝めない。

どないしたらええねん!

せっかくの大楠なのに、もっと効果的な見せ方をすれば、絶対にバズるはずです。

この大楠は御神体なので元々あり、社殿はや門は後から建てたはずなので、どうしてこうなったのか、超不思議です。

もっと広いスペースで延び延びとさせてあげたらどうか?

〈ツッコミ2〉なぜ張り紙?
燈篭の火袋のところを紙張りしてました💦

「御神燈」と、当たり前の事をわざわざ紙に書いて貼っているのは、何のため??

風にあおられてペコペコしてるやん!


〈ツッコミ3〉邪魔すぎる建物
最大の謎は駐車場。
チコさんとさんざん爆笑してしまいました。

入り口の真ん中にトイレがあり、さらに謎の物置小屋がこれまた中途半端な間で建っています。

奥の神社側にスペースがあるにもかかわらずです💦

Googlemapの航空写真で確認するとこんな感じです。

この2棟を奥の隅か塀際の端に並べるかしたら、駐車もしやすいし、あと3台は停められます。

何故だ??
不思議で仕方がありません。

まるで参拝者を拒むような駐車場に、なんとも複雑な思いがしました。


薫蓋樟くんがいしょう」という大阪一の大楠を御神木とし、素戔嗚尊すさのおのみことだけではなく天照大神あまてらすおおかみ大己貴命おおなむちのみこと(大国主命)という極めつけのスター揃いの御祭神を祀る神社です。

もっとまじめに見せる努力をすれば、必ず多くの方が「映え写真」を目当てに訪れるはずです。

そもそも社務所も閉まっているし、御社印さえいただく事も叶わず、根本的なところで謎だらけだったのです。

ヤル気ないんかい!
誰も来んでええんかい!

せめて「薫蓋樟くんがいしょう」からの並々ならぬパワーだけはしっかり頂いて帰路につきました。



「桜珈琲」で秋限定の「モンブラン・ミルフィーユ」を味わいながら、反省会と今後の計画に話の花が咲きました。
やはり甘いものは、一日の締めに最適です。



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【参考サイト】
パワスポ編集局
善照寺
古文の言葉
・郷土とお宮(三島神社 冊子)


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