![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/56916000/rectangle_large_type_2_e7fcf441277c9735105fe3104a1c9a8e.jpg?width=1200)
読書人間📚 『こびとか打ち上げた小さなボール』チョ・セヒ
『こびとか打ち上げた小さなボール』난장이가 쏘아 올린 작은 공
著者/ チョ・セヒ 趙世熙(Cho Se Hui)
訳 / 斉藤真理子
1978年の発表から130万部を重ねるロングセラーとなり読み続けられている本です。そもそもは1975〜78年にわたり出版物の厳しい検閲を逃れる為、バラバラに独立して発表された作品を一つにまとめた連作短編集。斉藤真理子さんの日本語訳により2016年に出版されました。
著者は、独裁が続いたからこそ、この作品が生まれ、いつか読まれなくなる事を願っていると言います。
目次
▶︎メビウスの帯
▶︎やいば
▶︎宇宙旅行
▶︎こびとか打ち上げた小さなボール
▶︎陸橋の上で
▶︎軌道回転
▶︎機会都市
▶︎ウンガン労働者家族の生計費
▶︎過ちは神にもある
▶︎クラインのびん
▶︎トゲウオが僕の網にやってくる
▶︎エピローグ
70年代、ソウルの都市労働者たちと"こびと"。
低賃金、不当解雇、貧困、格差 . . . 経済的な拷問。
生活費では無く生存費を稼ぐ日々。今の日本と何か違いがあるか?
理想を持つと苦しむ。人間的な待遇を求める。抑圧されたその先に人は何を考えるのか?
人々を苦しめる人々。苦しめる人々は、人の情け心など持ち合わせていなく、低階級とされる人々を虫けらとして扱う。そして虫は殺される。
虫扱いされ蹴散らされた人々は何を考えたか? 解決策は殺し、もしくは自死。
持つ者、持たざる者の視点、その違いの描写があまりにも残酷に描かれており、恐怖を感じます。
そして、どこの場所もいつの時代も、力の無い女達は性暴力の対象でしかないのかと読み進めるに鬱々とした疲労を感じます。
▶︎トゲウオが僕の網にやってくる
この章でとどめを刺されます。その"薬"とは。
著者は言います。
「皆、はっきりとは言わなかったけれども、そのときわが国は、人類が貴重な価値観と認めているものをすべて否定するような状況であった。」
昨今、私たちが想像もしない事を、"人々を苦しめる人々"は考えていたりすると感じます。想像もつかない事を"陰謀論"として遠ざけているのかもしれません。事実はわかりません。わからないからこそ怖く、そんなまさかと私たちは今を生きています。
(今の日本の状況にストレスを感じ記録した創作🔻紫黒色の空)
また、本書は、当時の音楽、歌の歌詞にも触れられており興味深く感じます。
その当時、歌詞が不健全として放送禁止となった歌、風刺曲、ヒット曲、ボブ・ディランの「風に吹かれて」など労働者達が生活の中で口ずさんだ歌、詩です。
上る朝日はわれらの動脈
夜明けの鐘が地軸を回す
休まず生産する永遠の建設者
ああ われらの労働者
私が飢えて苦しむとき あなたはいたか
食べものを求めていたとき そこにいたか
私が渇きに苦しむとき あなたはいたか
水を求めていたとき あなたはいたか
私が病み臥していたとき あなたはいたか
助けを求めていたとき そこにいたか
ともに分け合う喜び、悲しみ
ともに味わう希望と恐怖
うちの会長は
優しい人よ、
釣り銭集めて
はい、月給。
私は以前、著/森達也さんの『放送禁止歌』と言う本を題材に音楽LIVEを二度に分けて開催しました。部落差別、反戦や、分断された中で生まれた歌たちを解説を交え紹介しています(こちらの本も追ってご紹介します)。
📍2019.5.18【「放送禁止歌」〜タブーとされた歌たち〜】
📍2019.7.25【「放送禁止歌」〜タブーとされた歌たち〜vol.②】
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57083057/picture_pc_5e3d62af0c3bcd0f67c66a1e83754d6c.png?width=1200)
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57083058/picture_pc_c77fca9cf5f48c0dd518fa8f08e378fa.png?width=1200)
抑圧されてきた歌たちを、今更掘り起こすな触れるなと言う意見があります。けれど嘆きの歌も励ましの歌も、歌に罪は無く、歌の素晴らしさ、旋律の美しさ、悲しみを忘れない為歌い継ぐと言う考えがあります。
本書もまた読まれなくなる事を願う作品であると同時に、読み継ぐ人達が世界にいます。寓話の様な神秘性、文学としての誠実さ、この韓国の小説は日本で今、読まれるべき作品であると私は感じました。
解説 / 四方田犬彦
写真 / 池谷友秀
装幀 / 木庭貴信
河出書房新社
写真家の池谷 友秀氏は水を使った作品で著名なアーティストです。装幀の水中で窒息しそうになりながらもがいてる人達は小説と深く共鳴している様に感じます。
私は彼の作品のファンであり、また表現者として作品をご一緒させて頂きますが、彼がこの様な作品に携わった事を誇りに思います。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/56916081/picture_pc_26f81042ceaa4925374f8295d0bc6942.jpg?width=1200)
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57088262/picture_pc_3e1103898d084a4f591c7c27baee3b53.png?width=1200)
最後にこちら、1981年に映画化された表題の『こびとが打ち上げたボール』です。よろしければどうぞ。
『A Small Ball Shot by a Midget』1981.
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57088226/picture_pc_19cc85f95fd3f21aa5ad358763cb5794.png?width=1200)
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57088228/picture_pc_7fb914d66dfbbe863bc7cd56d69ba159.png?width=1200)
#みんなのおすすめ本 に選んで頂きました☺️
🌝声、発声、機能を考える
ボイス・ボーカルレッスン/東京都
音楽療法(医療行為は行わない)の観点からオーラルフレイル、口腔機能、老化防止を意識した呼吸法、発声のレッスンも行います。
ここから先は
¥ 250
いつもありがとうございます☺️。 あなたの気持ちに支えられています♡ ▶︎ https://www.instagram.com/chisa_murata/ ▶︎ https://www.instagram.com/chisa_favorite/?hl=ja