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みみをすますように

美術館が好きです。

シンと静かな空間に 作品が整然とならびます。
ひとつひとつの作品を じっと見つめて耳を澄ますと、なにか想いが伝わってきそうです。
作者の眼差しや手の動き、息遣いを思ってみます。
物語や歴史、確かな生命や意思がそこにはあって、その熱は人から人へと伝わっていきます。


絵画展や写真展など、美術館には ちょくちょく出かけます。
ひと通り見終えるまでにとても時間がかかるので、一人で行くことが多いです。

個性溢れる作品に触れると、何かしら自分の気持ちが動いたり 発見があったりして、帰り道は豊かで大らかな気持ちになっています。
いろんなものがゆるみ、ほどけるようで
ついついケーキを買って帰りたくなる。
そんな感じ。


美術の専門的なことは全くわからなくて、
好きだなぁとか、きれいだなぁとか、楽しいなぁとか、不思議だなぁとか、そんな ただぼんやりとした感覚だけです。

絵を描くのも 写真を撮るのも 好きではあるけれど、まず 人の手によって創られた作品を見るということが好きなのです。
ひたむきなものには こちらもまっすぐ感動します。

作り手の方の一途な思いが伝わってくる、あらゆる “手作り” のものに対する尊敬や憧れはとても大きいです。
モノや料理、音楽や文学なんかも同じ。

個性溢れるみなさんのnoteも 同じような感覚で拝見しています。

***


夏休みの海
には いつもは電車で出かけるのだけど、今年は初めてレンタカーで行きました。

いつもは、海を眺めたら 鎌倉あたりを散歩するのがせいぜいだけど、せっかくなので 湘南から三浦半島をなぞるように ぐるりとドライブしてみることに。
初めて横須賀という街に立ち寄りました。


そこで訪れた 横須賀美術館は、周りを豊かな緑と広い空と海に囲まれています。
自然と調和したガラス張りの建築が ひときわ映える さわやかな佇まいの美術館でした。 

ここで 大好きな絵本作家の酒井駒子さんの個展『みみをすますように』が開催されています。


以前  “本は苦手なのだけど 絵本は好きで毎日触れる” というお話をしました。
酒井さんの絵本も大好きです。


酒井駒子さんは絵本をはじめ、挿絵なども多く手掛けていらっしゃるので、知らぬ間にどこかで目にされている方も多いかもしれません。

静謐 ということばがしっくりと馴染む、静かで穏やかな時間が 酒井さんの絵には流れています。

夢と現実のあわいのような、リアリティがありながらお伽噺のような… 幻想的な不思議な魅力に引き込まれます。
一枚の絵だけを見ていても 物語が広がっていくように心にジーンと染み渡るのです。

今回 たくさんの原画に触れることができて 本当に嬉しかったです。
近くで開催されたら もう一度行きたい。
展示図録は 画集として大切な宝物の一冊になりました。


そして、美術館から海を眺めながら少し歩いてみると、灯台のある公園に辿り着きました。
灯台は高台に立っていて下からはうまく見えません。
内覧は残念ながらしばらく休止のようでしたが、近くまでは行けるとのこと。
その姿が見たかったので、くの字くの字と かね折れ式に続く長い階段を 頑張って上りました。

現れたのは ちいさなかわいい灯台でした。
この 観音埼灯台は 日本初の洋式灯台だそうです。
今度来た時には 灯台の中から海を眺めてみたいなぁ。


横須賀は行ったことがなくても、その名はとても有名な歴史ある港町ですね。

教科書で習った1853年 黒船、ペリー来航の浦賀港も横須賀です。
米軍横須賀基地があり、ネイビーバーガーや、よこすか海軍カレー のグルメも有名です。
全国でも珍しい “ドルが使える街” だそうです。

文学的にも 映画や小説、詩や歌の舞台となっていたり、
ファッションでは スカジャンのスカは ヨコスカのスカ。
専門のお店もいくつか見かけました。
ピカピカの光沢生地、背中には虎や龍といったインパクトある大きな和柄刺繍…
私は一度も着たことがないけれど、少し前に若者の間で再ブレイクしていましたね。


思いがけず楽しいものがぎゅっと詰まった場所に出会えました。
定番のお出かけも、たまにはちょっと趣向を変えてみるのもいいですね。

電車で出かけるのと違って 暑い中荷物を抱え汗だくになって長時間歩かずにすむし、フットワークが軽くなって 限られた時間が有意義に過ごせました。

なんでいままで おもいつかんかったん。

落ち着いた時には また是非のんびりと他のスポットも巡ってみたいです。




どうぞよい一日を、よい一週間を。



#33.『 ミュージアム 』

⭐︎これだけじゃないよと悪戯な顔で 謎めくような︎螺旋階段

⭐︎ひそやかに「︎無題」につけるタイトルで記憶に残す ソール・ライター

       ー ちる ー

ソール・ライター 作品「無題」


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