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文学作品

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高校生の頃に作ったものを手直ししています。あとは最近の作品です。
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#短編小説

迷子になった話

迷子になった話

それはボクが小学2年生の頃の話だ。
当時は結構ワイルドな時代だったから、小学低学年のこどもの遊びで探検ごっこが流行っていた。夜のテレビで何かしらの財宝を探しに行ったとかいう番組があると、しばらくは近所の山や谷に数人で冒険の旅に出かけるのだ。

何かしら宝物が見つかるわけではない。それよりも、どこまで遠くに行ったのか。どんな目にあったのかの方が重要視された。一言で言うならオレって勇気あるだろ、の自慢

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ヨミの国からこんにちは、の話

ヨミの国からこんにちは、の話

目覚めると、ボクは色のない世界にいた。

見回すと辺りは霧がかかったように霞んでいて、先が見渡せなかった。それに耳を澄ますと、音がない。ボクの足音すら聞こえない、そんな不思議な世界にボクはいた。

奇妙な感覚に馴染めず、手で顔を覆ってみた。微かに肌の感触があった。でもボクの指先は微かに透けていた。足元をみると、靴の先が消えてなくなって見えた。

不思議な世界だ。夢でも見てるのだろうか。頼りない世界

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熱帯夜

熱帯夜

激しい金切り声に目を覚ますと、辺りは一面の熱帯夜だった。

ひどく蒸し暑い夜だ。身体中が汗ばんでいた。襲ってきた重い頭痛に舌打ちして辺りを見わたすと、錆びた扇風機が唸りを上げて熱波を運んでいた。殺風景な天井をぼんやり見つめたが、頭では何も考えられない。現実世界がうまく認識できない。テーブルのタバコに手を伸ばすと、ガラスの小瓶が転がった。何かのクスリの瓶だ。見覚えはないが、そんな気がした。

手にと

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