サイケデリック

ドラッグ中毒になる人とならない人ー権力への依存とは

ガボール・マテと言うカナダのお医者さんがTEDのスピーチでとても本質的なお話をしていました。それはアディクション(中毒・依存)のパワー(脅威)についてと、パワー(権力)へのアディクション(執着)という動画です。

The Power of Addiction and The Addiction of Power: Gabor Maté at TEDxRio+20
依存の力、力への依存

なぜ人々がドラッグに中毒になってしまうのか、そしてドラッグを使ったとしても中毒にならない人と中毒になってしまう人の違いは何かと言う内容で始まります。彼は医者として何人もの本当にひどい状態のドラックアビューズ(薬物依存)の方々を見てきたようです。そしてそこから分かった大切なことは、ドラックに中毒になったことを責めるのではなく、なぜドラッグ中毒になってしまうほどの精神状態だったかと言うことに注目すべきだと言っています。それは薬物依存になってしまう多くの人は、幼少期に親からの愛情を十分に受けられなかったりして欠乏感を埋められずに、不足感、愛着障害などに苦しんでいるからだといます。そしてドラッグにより、幸福感の元であるドーパミンを補足することで、その欠乏感や愛着不足を埋める経験をしているのです。

多かれ少なかれ皆が持っている依存

ガボールマテ曰く、そのような依存症はドラック中毒の人に限ったことではないそうです。彼自身も医者としての仕事中毒そして音楽CDの買い物依存症があったといいます。一見成功者と言われる人々の中でも、その不足感を埋めるためにエゴの力を強化してのし上がり、依存の最たるものがパワー(権力)への執着です。ですから薬物にはまっている人たちを責めるのではなく、すべての人たちが何らかのレベルで不足感を埋めるための執着や依存や中毒になっているということを認識すべきだと言っています。

私も食べ物への執着や人への依存がありました。

ガボール・マテ TEDx Talk:依存の力、力への依存

(↓同じ動画です。日本語字幕付き。)


このガボールマテのスピーチはとても大切な、誰もが陥る依存の原因について話しています。また、彼の著書「身体が「ノー」と言うときー抑圧された感情の代価」の中でも、幼少期の経験が及ぼす影響、何をしても治らない病気の原因について詳しく述べています。この本は、わたしが自分の病気を見つめ、自力で治したきっかけになりました。


ただしガボールマテは、解決策と言うよりも原因に多くフォーカスしています。段階としては、原因を知ることも大切です。しかし、原因にフォーカスしすぎると、「被害者のわたし」に固執してしまいます。事実として虐待やネグレクトがあったということを認識するのはいいのですが、「被害者のわたし」の状態に長く留まると、自分の外や他人ばかりを責め続けて自分の成長を止めてしまいます。実際に私自身、「被害者」になり親を責め、病気になった経験があります。病気になることで「見ろ!お前らのせいだ!」と訴えたかったのかもしれません。でも、「もう病気のせいにはしない」「自分で治す」と決めたら治りました。

毒矢のたとえ

「いまここ(The Power of Now)」の大切さを解く、エックハルト・トールが引用した禅の言葉に次のようなものがあります:

Suppose a man were pierced by a poisoned arrow, and his relatives and friends got together to call a surgeon to have the arrow pulled out and the wound treated.
If the wounded man objects, saying, "Wait a little. Before you pull it out, I want to know who are shot this arrow. Was it a man or woman? Was it someone of noble birth, or was it a peasant? What was the baw made of? What is an big baw, or a small baw, that shot the arrow? Was it made of wood or bamboo? What was the bowstring made of? Was it made of fiber, or of gut? Was the arrow made on rattan, or of reed? What feathers were used? Before you extract the arrow, I want to know all about the things." Then what will happen?
Before all this information can be secured, no doubt, the poison will have time to circulate all through the system and the man may die. The first duty is to remove the arrow, and prevent its poison from spreading. 

例えば、人が恐ろしい毒矢に射られたとする。親戚や友人が集まり、急いで医者を呼び毒矢を抜いて、毒の手当てをしようとする。

ところがその時、その人が、「しばらく矢を抜くのを待て。だれがこの矢を射たのか、それを知りたい。男か、女か、どんな家のものか、また弓は何であったか、大弓か小弓か、木の弓か、弦は何であったか、藤蔓か、筋か、矢は籐か葦か、羽根は何か、それらがすっかりわかるまで矢を抜くのは待て。」と言ったらどうであろうか。

いうまでもなく、それらのことがわかってしまわないうちに、毒は全身にまわって死んでしまうに違いない。この場合にまずしなければならないことは、まず矢を抜き、毒が全身に回らないように手当をすることである。
(参照:和英対照仏教聖典 / The Teaching of Buddha, p.296-299)


禅の教えやエックハルト・トールが言う「毒矢の原因をあれこれ探るよりもまずは毒矢を体から抜け」とは、「苦しみの原因をあれこれ思考するのではなく、まず思考から自由になり、本質の自分に気づくこと」。そうすることで、「本当の力が発揮できるようになる」と。

解決策は、大きな愛に気づくと言うことです。私たちの本質はもともとひとつ、宇宙とひとつであることを知ることが苦しみからの開放だとエックハルト・トールは言っています。

自分の内側にある力

ガボール・マテが上記の動画の後半で言及しているように、イエス・キリストやお釈迦様はパワー(権力)を持つことを拒否しました。なぜなら彼らは「自分自身の中に力を見出していた」からです。そして以下のように引用しています。


イエスはこう言いました:
The power and reality is not outside of yourself but inside.
(本当の)力や現実は外側ではなく自分の内側にある
The kingdom of God is within.
天国とは自分の内側にある
ブッダは死の間際にこう言いました:
Don't worship me. Find a lamp inside yourself, be a lamp unto yourselves, find a light within.
私を崇めるのはやめなさい。おのおの、自らを灯火とし、自分の内側に光を見出しなさい。


(禅の「自灯明」のことですね。)


ガボールマテは最後にこのように締めています。
権力者に世界を変えてもらおうと依存し期待するのではなく、わたしたちが自分自身の内側のパワーを思い出すことで変化をもたらすことができると。創造性(クリエイティビティ)を発揮して。

人間の本質とは、協力的で寛容で貢献的であり、世界をよくしようとする。自分にやさしくできたなら、自然環境にも親切にできる。と。


わたしも、以前は「自分は被害者で、自分以外はすべて敵で誰も信用してはならない」と固く信じていました。しかし、自分の本当の声に耳を傾け、思考のおしゃべりを無視し、見たくない自分にも向き合うことにより、深い深い怒りや悲しみのさらに奥に、愛とか光とか言葉で表現するとちょっとこっ恥ずかしいようなものがあることを発見しました。

トラウマがあったり、小さい頃に傷ついた経験から、自分を守るのに必死になり権力や仕事や学歴や有名になることや何者かになろうとすることで、傷ついたジブンを埋め合わせようとしたり、はたまた傷から目を背けるためにドラッグ中毒になったり依存するのは一見楽です。でも、本質的な部分を見つめないとなにも解決にはなりません。「わたしは何に依存しているのだろうか?」「小さい頃のアレが原因か。でも今はもう関係ないな」「じゃあ、今わたしは、どうしたいのだろう?」と自分の内側を探ってみるのもいいかもしれません。


(参照)エックハルト・トールの毒矢のたとえの動画(字幕なし):
「思考はどこから来ているのか?」
Where Do Our Thought Come From?


次回は、エックハルト・トールとダライ・ラマが語る「創造性(クリエイティビティ)についてシェア予定です。(たぶん)。

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