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小説

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#小説

掌編小説 TOO NEGATIVE

きったねー部屋だと、おまえん家に初めてあがった時思った。
ゴミが溢れてるとかでなくて、物が多すぎる逆ミニマリストっつーかなんつーか。洋服が異様に多かったり、本が床に積まれてたりやっぱり物が多すぎる。
女子って綺麗な部屋に住んでんじゃないのか。
ピンク、白、ベージュが基本でさ。俺がステレオタイプすぎるのかも知れん。
ベッドはないから布団で寝てんのかな思ったら、寝袋で寝てるという。なんでって聞いたら登

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掌編小説 岐阜とベルちゃん

何回も失敗し、やっと召喚した悪魔ベルゼブブは薄黄色の体に真っ赤な複眼を持っていた。

晶子は想像していたのとは違うタイプの悪魔が現れたことに少し驚いたが、悪魔界にも都合があるのかもしれないと折角召喚したベルゼブブもどきを肯定的に見ようとした。

(これはアルビノ種なのかもしれない、悪魔のアルビノっているのかな。)

じっと体を見つめられていることに気付いたベルゼブブは「何見とんのじゃ。そこの女子。

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掌編小説 ばかたれ

パソコンにかじりついて作業をしてる君。
わたしはバケットをかじりながら鼻歌歌う。
「うるせー。」
「いいっしょ、大声じゃあるまいし。」
「俺はな、今名作を書いているところだ。」
「自分で言うかね、早く読ませてくり。」
「いや、恥ずかしい。」
「なんで。いつも読ませてくれるのに。」
「これは恋愛小説なんだ」
「だから何?」
「過去の俺の恋愛を全てぶっこんだ集大成だ。」
「ふむ、ますます読みたいな。」

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掌編小説 短歌

今ねめちゃくちゃなりに短歌を詠んでいるんだ
恥ずかしいから言ってこなかったんだけど
自分でノートに書いてるだけで誰も知らない
あなた以外は
じゃあ自信作だしちゃおうかね

夏だしさキッチン立つのは汗が出る
ロイホで何かおごってほしい

何笑ってんの?ほれ、ロイホ行こ

掌編小説 ハリボーゴールドベア

昨日さ、ハリボーの熊のグミが98円(税抜)で売ってたからさ買って帰ったの
とことこ大勢で歩いてくるからさ
参ったなと思って、だってうち狭いから
あいつら食っちゃろって思ったけど朝起きたら一匹もいないのよ、逃げ出してたわけよ
だからハリボーの熊をみかけましたらお気をつけくださいって回覧板まわしたよ

小説 カフェインpart12

小説 カフェインpart12

木下の話をきいて頭の中にパッと浮かんだのはそんな短い物語だった。つまんねぇー、こんなくそくだらないありふれた話、何の賞にもひっかかんないぜ。カフェインそうだろ?もっとへんてこで奇妙な話を読者は望んでいる。あんたとしても納得しないだろう。
カフェイン、小説書くのって難しいんだね。面白いものさらさら書けるもんだと誤解してた。わたしってば平凡な脳味噌しか持っていないよ。
五年前すでにカフェインは病気を発

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小説 松戸のゲバラ

彼女がゲバラの顔を知ったのは、対して好きでもない男の部屋を訪れた夜だった。
酔った上のすったもんだで部屋に上がったわけだが、心はとうにゲバラに奪われてしまった。
部屋に貼られたポスターの中のゲバラはまごうことなくハンサムでワイルドでどこか懐かしさを感じた。
「この人、誰?」
「ゲバラだよ、ゲバラ、革命家。ウィキで調べれば?」
男は果てたあと寝た。
いつもだったら不機嫌になるところだが、今回は好都合

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小説 革命家はアディダスを着る

キューバの革命家、前議長カストロ氏が九十歳で逝ったのを知る直前、僕はミカとマックでだべっていた。
ジーンズのポケットの中で震える赤いスマートフォンに気をとられ、持っていたコーヒーの紙コップを落としそうになる。
ニュースの写真のカストロ氏の痩せた顔と鮮やかなスカイブルーのアディダス社の三本線ジャージが対照的だった。
僕が数あるスポーツメーカーの中でもアディダスだけを信じていることは友人の間では有名だ

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小説 働かなきゃいけない日本で勤まる職業はないと思ったひとのためのバイエル

勤労は日本人の義務であるらしい。
不思議だ。
なぜ働かなきゃいけないのだろう。
お金、生き甲斐、さまざま理由はあるけれど働けない人種はいる、と思う。
大きな声では言えないが、僕もその一員だ。すべてが怖い、住んでいる団地の排水溝が老朽化したコンセントが。
仏壇の線香の炎が我が家のごみに引火し、隣家の山田さん宅まで燃やし尽くしてしまうのではないかと怖い。
不安で家から出られない。よって働きに出られない

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